ヒルクライムを楽に・速く走るためのロードバイクテクニック

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ヒルクライムはロードバイクの醍醐味の一つだ。しかし、苦手な人も多いのではないだろうか。ヒルクライムを楽に・速く走るためのテクニックはあるのだろうか。そこで今回は、日頃のロングライドで長い上りをこなしたりするときに使え、ヒルクライムレースでもすぐに応用できる基本的なテクニックについて紹介しよう。アドバイザーはおなじみ、UCIコーチの小笠原崇裕さんだ。

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すぐ実践可能! 気をつけるべきは4つのポイント

できるだけヒルクライムを楽に・速く走るためのポイントとは、何なんだろうか。

ADVISER/小笠原崇裕さん

今回のアドバイザーはUCIコーチで自身もプロサイクリストである小笠原 崇裕さん

「気をつけるべきポイントは4つあります。

POINT① ペース配分
POINT② 力んでハンドルを強く握らないこと
POINT③ 重心の位置
POINT④ 水分の取り方

です」と小笠原さん。

ぱっと聞いて、かなりシンプルだ。

「あまり難しいとうまく実践できなかったり練習もしなくなりがちなので、シンプルな項目を挙げました。でも、シンプルとはいえ非常に重要で、できていない人が多いと思います」。

なるほど。では、それぞれのポイントについて詳しく見ていこう。

POINT① ペース配分

まず、最初のポイントについて。ヒルクライムにおけるペース配分とは?

「よくやりがちなミスですが、例えばロングライドで長い上りが始まったとき、序盤から飛ばしてしまう人が多いです。仲間と一緒に走っている場合は、仲間のペースに気を取られて無理についていこうとしてしまうことも多いでしょう。

またヒルクライムレースの場合は、やはりスタートした直後の区間でまわりのペースに引きずられてしまい、自分の限界を超えた力で走ってしまうミスをする人が多いです。

すると中盤〜終盤にかけて疲れてペースが大きくダウンしてしまい、結局タイムが遅くなってしまうのです。ですから、まず気をつけるべきなのは、ロングライドなら上り始めで、ヒルクライムレースならスタートした直後にダッシュしないことです」。

ペース配分に気をつけよう

よくやりがちなミスの一つは、上り始めからダッシュしてしまうこと

うーん、耳が痛いという人が多いのではないだろうか。他に気をつけるべきことは?

「もう一つは、巡航するペースに気をつけることです。ロングライドで上りを上るときなら、頂上まで無理なく持つように力を出す配分に気をつけることですね。また長距離を走るときなら、長い上りが何本もあることもあるでしょう。そんなときは1つ目の上りを全て上り切ることだけでなく、2つ目3つ目の上りもきちんとこなせるように考えて走らないといけません。ヒルクライムレースでも同じです。最後まで持つペースで走ることが、良いタイムに結びつきます。

ということで、“最後まで持つ一定ペースで走り続けること”。これも大切です」。

最後まで持つペースで

最後まで持つ、一定ペースで走ることも大切

しかし、ついついオーバーペースになることが多いものだ。どうやったら自分なりに最後まで持つ一定のペースを判断できるのだろうか?

「1つは、パワーメーターか心拍計を使い、数値として最後まで持つ自分のペースを把握することです。

とはいえ、それらを手に入れるのは難しい人もいらっしゃるでしょう。そこで、誰でも実践できる方法としては、自分の呼吸の荒さを基準にすることです。目安としてほしいのは、“しゃべる余裕がある程度の呼吸の荒さ”です。しゃべる余裕がなくなるほど呼吸が荒くなっていれば、それはもはやオーバーペースの証拠。すぐにペースを落とすべきです」。

呼吸の荒さを判断基準に

しゃべる余裕がないほど呼吸が荒いのはオーバーペースの目安に

POINT② 力んでハンドルを強く握らないこと

続いて、2つ目のポイントだ。ヒルクライムではぐっとハンドルを握って力を込めた方が速く走れそうな気がするのだが、それは違うのだろうか?

「そうなんです。自転車において大切なのは、ペダルを踏んで自転車を前に進ませることです。一方、力んでハンドルを強く握り込むと、それを引く動作が生まれてしまいがちです。すると、ペダルを踏んで自転車が前に進む推進力をハンドルを引く動作によって相殺してしまい、減速につながってしまうのです。頑張っているのに自転車が前に動かない状態になってしまいます。ヒルクライムではそれが顕著に出やすいんです。

力んでハンドルを強く握ると、先ほど言ったハンドルを無駄に引きつけるような動作が出たり、それにつられて肩まわりががちっとロックしてしまう動きが出たり、ペダルを踏み台昇降運動のように真下に踏みつける動きも出がちです。そうなると、うまく自転車を前に進ませられなくなります」。

ハンドルを強く握り力まないようにしよう

ハンドルを強く握り力まないようにしよう

「ですから、たとえ上りできつくても、常にハンドルは強く握り込まないようにしましょう。すると力みが出にくくなり、結果として楽に・速く上れるようになります」。

ハンドルを握り込まないようにすれば自転車は前に進んでくれる

力んでハンドルを握り込まないようにすれば、自転車は前に進んでくれる

POINT③ 重心の位置

次なるポイント・重心の位置とは?

「ヒルクライムでは、勾配がきつくなったときにサドルに座る位置を前にずらしてあげると効果的です。重心が前にずれることでケイデンスをキープしやすくなり、きつい勾配でも効率的に走ることが可能になります。10%を超えるような激坂になったときは、積極的に座る位置を前にずらしましょう。さらに勾配がきついなら、合わせて上半身を深く倒してあげるとより重心を前にすることができます」。

勾配がきつくなったら重心を前へ

勾配がきつい区間ではサドルに座る位置を前へ

 

より勾配がきついときは上半身を深く倒す

より勾配がきついときは上半身を深く倒す

逆に、10%を超えるような勾配のきついところで、サドル位置を変えないと悪いことがあるのだろうか?

「そうした勾配のきついところでサドルに座る位置を変えずにいると、重心位置が後ろに残ったままになり、ペダルを前に蹴り出すような効率の悪いペダリングになってしまいがちです。また、そうなると腿の前側、つまり四頭筋ばかりに負担が掛かりやすくもなります」。

勾配のきついところで重心が後ろになると効率が悪い

勾配のきついところでサドル位置を変えないと重心が後ろに残ったままになり、効率の悪い走りになる

POINT④ 水分の取り方

最後のポイントだ。水分を取るときのやり方でヒルクライムが楽になるものなのか?

「実は地味に効いてくるポイントで、ぜひとも気をつけたいことです。注意するのは2点で、1つは飲むタイミング、もう1つは姿勢です。

まずタイミングについてですが、勾配のきついところでボトルを取って水分を取るのは避ける、ということです。できるだけ勾配の緩い所で飲むようにしましょう。というのも、勾配のきつい所ではどうしても飲みにくいので、それによってむせてしまったり余計に呼吸が苦しくなってしまい、飲んだ後に疲労が残ってしまいがちです。

もう1つの姿勢については、できるだけ飲むときは上半身を起こしてあげてから飲むようにしましょう。どうしても頑張っていると前傾が深くなりがちですが、そのまま飲もうとすると気道が狭いので効率良く飲むことができず、やはりむせてしまったり飲んでから余計に息が苦しくなって疲れてしまうのです」。

水分の取り方のポイント

水分の取り方で気をつけること

良くない水分の取り方

良くない水分の取り方

ヒルクライムに効くエクササイズを紹介!

ここまでで4つのポイントについて教えてもらった。さて、この他にヒルクライムに挑む前にやっておくと効果のある、すぐに取り組めるエクササイズといったものはないのだろうか。

「そうですね。肩まわり・肩甲骨まわりを動かして呼吸がしやすくなるエクササイズを3つ紹介しましょう。ロングライドでいくつもの上りをこなすような場合なら途中の休憩ポイントで、ヒルクライムレースならスタートラインに並んだときにやると効果的です」。

エクササイズ1
地面に向かって肩を落としていく動作のエクササイズ。肩・肩甲骨をほぐす。

ヒルクライムに効くエクササイズ1

サドルとステムのクランプ部に手を置く。そのあと、肘をかくっと曲げて肩を地面に向かって入れていく。右側の写真のように、横から見て腰を曲げたようになる

エクササイズ2
サドルに両手を置いて上半身を下に落としていくエクササイズ。脇の外側をほぐす。

ヒルクライムに効くエクササイズ2

まっすぐ腕を伸ばしてサドルに両手を置き、頭を肩より下に降ろし、上半身を落としていく。横から見てお尻が後ろに突き出るようにする

エクササイズ3
肩を内側に入れ込むエクササイズ。胸まわりを伸ばしてほぐす。

上りに効くエクササイズ3

片方の手でサドル、もう片方の手でブラケットを持つ。腰から上半身を倒しつつ、肩を体の内側にぐっと入れ込む。これを左右の腕で行う

「それぞれのエクササイズにつき、伸ばして止まっている状態で10秒〜20秒行うのが目安です。エクササイズ3は左右でそれぞれ10秒〜20秒ずつ行いましょう。じわっと伸ばしてあげるくらいの力加減でOKです」。

これなら誰でも簡単にできそうだ。ぜひやってみてほしい。

 

いかがだっただろうか。全てそれほど難しいことではないと思う。心掛け次第でできることばかりだ。次のライドで上りに行くとときから実践してみて、より効率良くヒルクライムをこなせるようになろう。

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