IRCから新型のフォーミュラプロチューブレスが登場
目次
国産チューブレスタイヤの雄、
IRCチューブレス、第5世代へ
ロードバイクはエアロのディスクが当たり前。コンポはもうすぐ本格的な12速の時代。タイヤは当然チューブレス。ハイエンドカテゴリーに限って言えば、昨今のロードバイクシーンはそういうことになっている。いろいろ思うところがなくはないが、ことタイヤに関してはおおかた異論はない。もちろん脱着性や各メーカーの寸法精度やシーラントのあれこれなど弱点もあるが、性能面でのチューブレスの優位性は明白だ。CycleSports本誌3月号のタイヤテストでもそれを実感した。
実は入荷時期の関係でタイヤテストに入れられなかった新作がいくつかある。その1つがIRCの新型フォーミュラプロチューブレス。初代フォーミュラプロチューブレスが出てはや13年、新作は5代目となる。前々回のタイヤテストでは、4代目フォーミュラプロチューブレスに最高評価を与え、自分でも何本も買った。そんなお気に入りがモデルチェンジするのだから、期待半分、不安半分である。
前作からの変更点は大きく分けて4つ。
①チューブレスレディの追加
従来はチューブレスのみのラインナップだったが、時流を鑑みた結果、「S-ライト(スーパーライト)」というチューブレスレディを加えた。チューブレス対応リムよりチューブレスレディ対応リムのほうが圧倒的に多い現状を考えると、妥当な判断だろう。既存のチューブレスタイヤのように空気保持をシーラントに丸投げするのではなく、タイヤ内面にナイロンメッシュを追加して空気保持の安定性を向上させるなどの工夫もしているという。チューブレスモデルに比べて50gほど軽く仕上がっているが、IRCのテストによると、意外なことにチューブレスレディよりチューブレスのほうが転がり抵抗がわずかに低いらしい。「推測ですが、タイヤ内部でシーラントが動いていることが原因かもしれません。軽さが効くヒルクライムではS-ライトのほうが有利でしょう」とのこと。
②コンパウンドが新設計に
新型のRBCCは、従来のRBCC比で転がり抵抗5%、グリップが15%、耐摩耗性が280%、耐候性も230%向上している。耐摩耗性が大幅に上がったことは、トレッドを薄くできるという副次効果も産んだ。旧シリーズでは、ライトにはRBCCを採用していなかったが(転がり抵抗を極限まで下げるため)、新型では全モデルに新RBCCを採用している。IRCの自信がうかがえる。
③新しいトレッドパターンの採用
路面のフィーリングを感じ取りやすくするため、前作からサイドを杉目としていたが、新型はそこに進行方向の溝を加えている。縦溝を入れることで走行面が変形しやすくなるため、しなやかに路面を捉えることができるようになり、グリップが上がるという。路面追従性が上ったことで衝撃吸収性も上がっており、高圧にして転がり抵抗を下げるセッティングにしても快適性が損なわれないというメリットもあるという。
④ビードの変更
設計を見直し、ビードの周辺までメッシュの補強材を入れたことで、安全性と空気保持性が高まったという。また、新しい製法を採用したことで寸法精度が向上、組み付け性がよくなり、ビードが上がりやすくなっている。
「よくユーザーの方から『クルマやオートバイはチューブレスなのに空気は漏れないじゃないか。なぜロードバイクのチューブレスタイヤはこんなにエア漏れするのか』と質問をいただくんです」とIRC担当者。「しかしロードバイク用タイヤは非常に条件が厳しい製品なんです。まずかなりの高圧で使われます。そしてクルマなどに比べてビードが長いので、コンマ数%の伸びでも何mmも変わってしまいます。さらに肉厚が非常に薄い。それで7~8気圧を留めなければいけない。条件が非常に厳しいんですね」。
その点、新型のビードは非常によくできている。組み付け性もエア漏れも問題ないレベルだ。もちろんホイールとの相性も大きいが。
総じて、タイヤを構成する各要素を着実に進化させたという印象だが、とはいえタイヤはコンパウンドやトレッドパターンやビードで走るわけではない。フレームやホイール同様、重要なのはバランスだ。
IRCチューブレスタイヤの歴史
ロードバイク用のチューブレスタイヤが出てきたのは2004年頃。コンチネンタル、ミシュラン、ハッチンソンなどがプロトタイプをサイクルショーで展示し、レースでも走らせていた。IRCは2005年からロードチューブレスの開発をスタート。オートバイやMTBの分野でチューブレスの経験があり、技術は確立されていたという。初代フォーミュラプロチューブレスが完成したのは2008年。グリップ重視の『ソフト』と耐久性重視の『ハード』という2モデルのラインナップだった。当時は安全性を重視していたためビードがかなりタイトで、組み付けが難しかった。2009年、2代目となるトップシークレットがデビュー。ケーシングの設計からコンパウンドまで転がり抵抗に特化させたモデルだった。12年の3代目から180TPIケーシングを全モデルに採用し、組み付け性を改善。このとき、今も続くRBCC(グリップ重視)、ライト(軽さ重視)、クロスガード(耐パンク性重視)というラインナップになる。2016年に4代目を発表。スリックからパターン付きに変え、コントロール性を向上させた。
前作の美点を維持しつつ、上質な走行感に
試乗したのはRBCCの25C。私物のカンパニョーロ・シャマルウルトラ2ウェイフィットにシーラント無しで装着して試乗した。担当者に「新品の状態では本来の性能が発揮できません。50~60km走るとゴムの分子が安定し、転がり抵抗が10%ほど減ります。評価は50~60km走ってからにしてください」と言われていたのだが、走り始めからいきなり走りが軽いので驚いた。計100kmほど走ったが、前作同様、転がり抵抗の低さは一級だ。走りの方向性としては旧RBCCと同じだが、全体的に走行感が上質になった気がする。衝撃を吸収する能力はわずかに高まっているのに、IRCらしい芯のあるアルデンテな走行感は健在。欧米メーカーのように「とにかくフワフワにしてしまう」のではなく、しっとりとした路面当たりと、高い減衰性を両立させている。「前の方がよかったなぁ」なんてことが珍しくないタイヤのモデルチェンジだが、これなら喜んで新型に移行できる。
ラインナップ
モデル | 価格 | サイズ | 重量 |
フォーミュラプロ チューブレス RBCC |
7600円(税抜) | 700×25C | 270g |
700×28C | 315g | ||
700×30C | 330g | ||
フォーミュラプロ チューブレス Xガード |
7600円(税抜) | 700×25C | 300g |
700×28C | 345g | ||
700×30C | 370g | ||
フォーミュラプロ チューブレスレディ Sライト |
7600円(税抜) | 700×23C | 205g |
700×25C | 220g | ||
700×28C | 250g | ||
700×30C | 275g |