ロードバイク×車で、しまなみ海道を再発見1
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サイクルスポーツの読者諸氏なら「しまなみ海道」の名前を聞いたことがあるだろう。なんなら走ったことがある人も多くいると思う。本州と四国を結ぶルートのひとつで、唯一自転車が走行できるルートでもある。多島海の風景を眼前に見ながら走ることができるのは、世界的に見ても貴重だ。昨年、ナショナルサイクルルートにも決定し、一層注目度が上がっている。
推奨ルートには、道路にブルーラインがひかれていて、それをたどって走れば迷うこともない。ルートのことを考えないで走ることができるというのはとても楽だし、サイクリストに親切な設計である。
今回の取材以前に、筆者もしまなみ海道を走ったことがある。そこで思ったことがあるのだが、ブルーラインだけではしまなみ海道の魅力を逃しているという点である。尾道から今治まで走破するという目的のためならブルーラインは充分だ。でもせっかく瀬戸内の島々をめぐるのに、ビューンと駆け抜けてしまうのはもったいない。それぞれの島をゆっくりとめぐると、非日常というか、自分が住んでいるところとはまるで違う日常を感じることができる。
今回はしまなみ海道のなかでも因島と、生口島、大三島、大島を1泊2日でめぐるプランを紹介する。各島をしっかり走る時間を作るために、移動基地として車(地元企業であるマツダ・CX-30)も用意した。島内の海水浴場には無料の駐車場があるので、そこに車を止めて、着替えなどの走行中に必要ない荷物は車に放り込んでおいて、身軽に走る。島をぐるりと走ってきたら駐車場にもどり、隣の島までは車や船で移動するというプランだ。
このちょっと変わったしまなみ海道サイクリングを、ファッションモデルでサイクリストの石垣美帆さんと編集長中島が走った。石垣さんはモデルといえども各地のヒルクライムレースや、ロングライドイベントにゲストライダーとして呼ばれるほどの実力の持ち主である。
1日目は因島で八十八ケ所札所巡り
お遍路で有名、四国八十八か所巡りは高い知名度を誇るが、この因島内だけをめぐる八十八か所巡りがあるのをご存じだろうか。面積39.76㎢の島に八十八か所のお寺が点在しているのだ。
その言われは、島に伝わる伝説にある。その昔、尾道に住む漁師が四国へと漁に出たその帰りに、一人の旅僧に出会い「どこでもいい、近くの島まで乗せていってくれないか」と頼まれた。漁師は快諾し、因島まで僧を乗せた。そして浜に僧を降ろしてふたたび船を出した漁師。ふと浜を振り返ると、その僧はどんどんと人数を増やし88人になって島の中へと消えていったという。これはかの弘法大師であった。という言い伝え。
その弘法大師をまつる小さなお寺が島内各地にあり、その札所をめぐるのが八十八ケ所札所巡りである。その総距離は約84㎞になる。御朱印がもらえるわけではないのだが、上のリンクから地図とともにチェックシートをダウンロードすることができる。
この八十八か所、実際にめぐるとわかるのだが、とんでもなく狭い路地を抜けたり、激坂の上にあったりと、距離以上に見つけてたどり着くのが難しく、さながら宝探しのようで楽しい。
そんな寺をめぐるので、もちろん車で移動するのは小回りが効かなくて向いていない。自転車の機動力がばっちりとはまるわけだ。今回はその一部を回ることにする。
一番札所 霊山寺(りょうぜんじ)
しまなみビーチの駐車場に車を止め、いざ八十八か所巡りをスタート。霊山寺は、因島大橋のたもとにある小さな砂浜に面している。この浜に漁師は弘法大師を降ろしたのだと、感慨深い。島に住むの家族だろうか、浜で子供たちと遊んでいる光景を目にした。そんな素朴なロケーションなのだ。この浜へ下りてくる坂の入口には「はっさく屋」がある。因島の名産品であるはっさくを包んだ大福が名物。
二番札所極楽寺
霊山寺でお参りした後は、そのまま島の外周道路を通って二番札所の極楽寺へ。地元ナンバーの車が行き交い、地域の人たちが散歩するような道をゆく。霊山寺からはたった1.2km。小さな島にある八十八か所なので、それぞれの札所間の距離も近い。極楽寺は、道から数十メートル奥まったところに建っている。それと意識して通らなければ、見逃してしまいそうな素朴な建物だ。中には小さな弘法大師像がまつられている。
三番札所金泉寺、四番札所大日寺
そして四番札所の大日寺はちょっと難しい。地図で見ると金泉寺と同じように住宅街の中にあるのだが、この敷地へアプローチする最後の道が見つからない……。しかも近くにはそれらしきお寺がほかにもあるのだ。
うーん困った、と自転車を下りて歩いてみると、薄汚れた木の札に「大日寺」の文字を発見! 徒歩でしか行けないような細い道、階段を経てたどり着いた高台にある。
敷地内には二つのお寺があって、本堂のように見える大きなお寺とは別、その左奥に大日寺がある。
五番札所地蔵寺
地蔵寺は集落の郵便局の裏手にあり、民家の駐車場の入り口に面している。ここまでまわってきて気づくのだが、因島八十八か所のお寺はどれも、とても素朴な造りであるということだ。それに気づいた時、自分の気持ちが少しだけ島に溶けた気がした。
六番札所安楽寺
安楽寺は、その手前にある、大きな見性寺を目指していくとすぐにたどり着ける。やっぱり質素な造りだ。お参りを終えてあたりを見渡すと、面白いものを見つけることができる。石垣のひとつがひょうたんになっている土蔵があるのだ。探してみよう。
七番札所十楽寺
つづいて七番札所の十楽寺を目指すのだが、これがかなりの難関だ。
まず15%以上はあろうかという、超級勾配を上る。そこを上りきると舗装が途切れるのだ……。本当にこの先に札所があるのだろうか、そんな不安を抱きながらもペダルをこぎ進める。すると竹やぶの中へと延びる、人が通る程度のコンクリート舗装が現れる。かすかな希望のように見えるその道へと進み入っていくと、竹藪がふっと開けたところに十楽寺はひっそりと佇んでいた。
風に揺れる竹の葉の触れ合う音に包まれた空間は、しまなみ海道にあってなお、より一層の非日常体験となる。石垣さんもその雰囲気に圧倒されているようだった。
無事にお参りを終えて海岸沿いの道へと戻る途中、自転車に乗って進んでいくとパンクした……。弘法大師様、なかなか難しい札所を見つけたのですが、その程度で満足するなということでしょうか。精進します。
石垣さんに空気入れを借りつつ、しっかりとパンク修理をした後、次の目的地へと走りだす。ここまでは札所の順番通りに走ってきたが、いいとこ取りということで一気に三十八番札所まで飛ばしていく。島の外周道路の県道366号線は細かいアップダウンと海風でなかなかの難コースだ。心して走りたい。島の中心部を抜けていくルートならトンネルを抜けて。アップダウンも少ない。
三十八番札所金剛福寺
三十八番札所は、因島の東へと突き出す地蔵鼻という名所がある。その岸壁の上にある金剛福寺がそれだ。そのすぐ横には美可崎城跡がある。ここからは瀬戸内海を航行する船が一望できるとあって、かつては水軍が関所としての役割を持たせていた。と、そんな歴史とは裏腹に、抜群の眺望とかんきつ畑に囲まれたロケーションである。
札所ではないけれど、自転車神社の大山神社へ
金剛楽寺にお参りした後は、八十八か所とは別だが、因島といえばサイクリスト的には外すことができない大山神社へと参拝。自転車お守りや、愛車のお祓いといった、サイクリストのツボを押さえた神事を執り行ってくれる。神主さんもサイクリストなのだ。
ツーリングの基地、マツダ・CX-30へ戻る
ここまで来たら、一度車をおいてあるしまなみビーチへと戻る。バイクをCX-30のルーフラックに積み込んで、宿がある隣の生口島へとドライブだ。車で最短ルートを走ると高速道路でビューンと生口島へ渡るのが早いのだが、ここはしまなみを満喫する目的で、あえて高速道路ではなくて渡船を利用する。
しまなみ海道の開通によって尾道と今治はとても便利につながったが、それまで活躍していた渡船は多くの航路が廃れてしまった。何か所か残っている、車も乗れる渡船のひとつが因島と生口島を結ぶ「金山-赤崎」航路である。ほんの数分で対岸へとたどり着くが、車ごと乗れる渡船は非日常感200%。平日のみの運行なので留意されたし。自転車で走ってきた距離をCX-30で走ると、本当にあっという間だ。
生口島に上陸したら、島のほぼ反対側である瀬戸田へと車を走らせる。今日の宿は住之江旅館という、瀬戸田でも歴史ある名旅館だ。瀬戸田の豪商であった堀内家の別荘を旅館としている。その荘厳な佇まいにあって、玄関にはサイクルラックがあるというアンバランス! さすがしまなみ海道である。おもてなしは一級で、旅の疲れをいやしてくれる。
明日は、生口島の耕三寺に参拝して、大三島と大島を走るルートだ。
移動基地マツダ・CX-30スペック
グレード:20S L パッケージ
ボディカラー:ソウルレッドクリスタルメタリック
エンジン:スカイアクティブ-G 2.0
トランスミッション:スカイアクティブドライブ(6EC-AT)
駆動方式:4WD
価格:300万8982円(税抜)
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