Fumy’s eye 別府史之が見た世界 étape06
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Bonjour!
ラベンダー畑が広がる大地を、思いっ切り駆け巡りました!チームトレーニングキャンプのために、6月8日から1週間、南フランスに行ってきたんですよ。アルプ=ド=オート=プロヴァンス県っていう、マルセイユよりほんの少し北ですね。満開時期はあと10日くらい先らしいんですけど、あちこちから漂ってくるラベンダーのいい香りを、走りながらたっぷり堪能できました。
すごく嬉しくて、懐かしい気持ちでした。だってチームというのは、僕らにとっては、まさにファミリーのようなものですから。チームメイトはもちろん、メカやマッサー、スタッフたちと久しぶりに会えて。互いの無事を喜びあいました。
New Normalでの選手生活
今回集まった選手は全部で17人。フランス在住組を中心に、あとはイタリア、スペイン、ポルトガルに住んでいる選手やスタッフが集結しました。一応は国境が閉鎖されていたので、外国組はチームが発行した入国証明書をみんな持ってきたのに……特になんの問題もなく国境を通過できたみたいです。当然ですが僕らフランス組も、みんな公共交通の使用は避けて、自動車に乗り合って合宿へ向かいました。
再会時は、このご時世なので、握手もビズ(頬を合わせる挨拶)もなし。マルセイユでは男性同士でも普通にビズしますけど……今回は代わりにヒジや靴をくっつけました(笑)。
とりあえず合宿中は消毒やソーシャルディスタンスに気を配らなきゃならなかったですが、それでも、みんなと一緒に過ごせる機会というのは貴重でした。特に合宿中の夕食後って、レース時とはまた違った、なんとなくゆったりとした時間が流れるんです。厳しい外出制限がしかれた後だったからなおさら、心がリフレッシュされました。
それに、やっぱり、1人で孤独に走るより断然いい! 気分よく走れるし、なにより「楽」です。合宿の中日には235km走ったんですけど、みんなと一緒だとまるで苦にならない。フランスは10人までの集団トレーニングが認められているので、たいていはクライマーチームとルーラーチームに分かれて練習しました。僕はルーラーチームの一員としてスプリント練習もやったんですけど、1人でもがくより、他の選手たちと競い合ったほうがやはりより高いパワーの最大値も出ますよね。
まあ、レースが再開するのはまだ1ヶ月半近くも先だから、トップシェイプにもっていくための合宿ではなかったんです。基本的にはエンデュランスを鍛えて、むしろメインは今後に向けてのプランニングと顔合わせ。
というのもチームのマネージャーが交代しましたし、この中断時期にジョゼ・アゼベドが正式に監督になって、さらには栄養士とコーチがチームに新たに合流したんです。しかもコーチの1人は、ショーン・イエーツ。アゼベドの知り合いということで入ったそうです。僕にとっては「マジ!? 知り合いばっかりじゃん」って嬉しい驚きです(監督のジョゼ・アゼベドは2005・2006年にチームメート、ショーン・イェーツは2005〜2007年に所属チームの監督だった)。
心強いチーム体制
とにかく、選手がパフォーマンスを最大限に発揮できるようなシステムを、チームは整えつつあります。たとえば栄養士が今回の合宿用にメニューを組み立てて、カロリーや炭水化物摂取のタイミングをきちんと調節してくれたおかげで、食事がものすごく良かった。あとはメンタルコーチのようなものもついたし。アゼベドの人脈で新しいレース招待も増えてきているみたいです。
まあ、そもそもが、長い年月をかけて基盤をしっかり築き上げたチームですからね。選手やスタッフには本来優秀な人材が揃っているからこそ、こうして新しい仲間が加わっても、すぐにチームワークができあがる。だから、前向きなシーズン再開が切れるんじゃないかな、って思います。
もちろん他のチームも、再開後最初のレースに、絶対に調子を合わせてくる。だから僕らもその覚悟で臨まなきゃならない。
僕自身の調子はいいですね。体が徐々に研ぎ澄まされている。そんな感じです。実は昨年末の合宿で落車して、そこから体が仕上がっていないままレースに突入したせいか、シーズン序盤は少しボロボロだったんです。でも今は自分のリズムでしっかりと練習が出来ている。改めてパワーもコンディションも上がってきています。確かな実感を得られています。
それに妙な話ですが……レースのない3か月間は、僕にとっては大切な時間になりました。自分自身と対話をする時間が持てたんですよ。今までだったら契約して、合宿して、1月に入って、すぐにシーズンが始まって……ただただせわしなく時が過ぎていっちゃうだけ。こういう「自分を見つめ直す時間」っていうのはなかった。でも今回は家族ともゆっくり過ごせて、自分は今後どうしていきたいのかをとことん自分の中で考えて。そりゃあ4月に走りたかったレースが延期になってしまったし、世界中では災難が起こっているし、決してポジティブな時間だったとは言えません。それでも自分にとっては、こういう時間を持てたというのは、すごく大きな意味がありましたね。
目標は変わらずワンデーレース。再開後にステージレースを1つ走って、そこからワンデー転戦に入るのが理想的かな。フランスカップ(フランスのワンデーシリーズ)とベルギーのクラシック系レースを走りたい。残りシーズンは3ヶ月と短期間だから、集中して走り切れるでしょう。ただし全部を無我夢中で走るのではなく、しっかり的を絞って、狙いを定めて走りたいと思ってます。
まあ、なんだかんだ、うわーーーっていう感じでみんな走ると思うんです。だって、ただでさえシーズンが短くなって、レース数が少なくなって、しかも来年の契約やスポンサーがどうなるか分からない選手やチームがたくさんいる状況ですもんね。焦って突進する選手も多いはずです。だからこそ、僕は、できる限りスマートに、冷静に立ち回るべきだと思ってます。そしてポイントよりも、「着」を狙いたい。可能性はあるし、自信はあります。
そうそう、修道院を改装して作られたというホテルは、とっても居心地が良かったですよ。ホテルの下にはプロヴァンス陶芸のアトリエもあったので、オリーヴオイルを入れる瓶と、小皿を買っちゃいました。家にお客さんが来た時には、これでアペリティフを出そうかな。
ちなみに嫌いな人がいるかもしれないと思って言わなかったんですが、実はラベンダーだけじゃなくて、コリアンダーの畑もたくさんあったんです。なんでもジンを作るのに使われるそうです。だからあちこちからは強烈なパクチーの匂いも(笑)。
質問コーナー 質問や応援メッセージ、ありがとうございます!
フミさんは眼鏡をかけていることがあると思うのですが、
瞳に何もつけない状態でいる方が好きです。だから普段からコンタクトは使いません。眼鏡と度付きのアイウエアという選択です。
実は昔、オリカ・グリーンエッジ時代には、コンタクトを使ってみたこともあるんです。でもツアー・オブ・カタールのレース中に……風で吹っ飛んじゃった!ソフトのコンタクトでした。ものすごい爆風に煽られて、それこそ、うわぁぁぁって状態でした。その後に眼鏡さえ飛んでいったくらいすごい風だったんですけどね。
でも、それがきっかけで、「これはダメだ、危険過ぎる」と悟って、完全に眼鏡派になりました。おかげで、花粉の時期に目が痒くなってこすってコンタクトとれちゃう、なんていうトラブルもない。目にゴミが入っても水で洗えますし。それが眼鏡の最大の利点です。
そこまで視力が悪いわけじゃないんです。だから雨が降ったら、時には外すこともあります。でもたいてい普段から度付きのアイウエアをして走ってます。小石や穴を咄嗟に回避するためはもちろん、レース中はたとえば誰が飛び出したのかを瞬時に確認するためにも、やっぱり眼鏡は必要です。仕事をするために一番必要な情報ですから。
ちょっとした動きを目でとらえられなかったりすると、大きな事故につながる危険性もある。自分の身を守るためにも、チームメイトやプロトン内の仲間を守るためにも、自分の視力にあったアイウエアを使うのは非常に大切なことだと考えてます。レースの時は、チームカーに予備の眼鏡を預けておいて、壊れたり落としたときに対応できるようにしてます。
色々なブランドで度付きのアイウエアを作ってもらいましたが、どれもみんな使いやすいですよ。プロトン内にも視力が悪い選手は結構多いので、他の選手の度付きアイウエアをちょっと試させてもらったりすることもあります。
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フランスの外出制限が解かれてから、この1ヶ月あまり、
ただ、今からは、
次回はそのトレーニングキャンプの前後に、近況をお届けします。
別府史之
※質問やメッセージはinfo@cyclesports.jpま