ロードバイクで平地を楽に速く長時間巡航する方法
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“ロードバイクで、1時間を超える長時間、平地を速い速度で楽に巡航し続けることができる”。それは上級者への入り口と言える。しかし、「短時間なら良いけど長時間は……」「そもそも平地が苦手」という人も多いだろう。そこで、今回は平地を楽に速く、そして長い時間巡航するためのポイントを特集しよう。
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取り組むべきは4つのポイント
今回指南役として話を聞いたのは、元プロロード選手で、現在はシクロパビリオン所属のインストラクターとして活躍する、相川 将(あいかわ しょう)さんだ。
平地を楽に速く、長時間巡航するためのポイントとは?
「それは、4つあります。1つ目はペダルにうまく体重を乗せること、2つ目は適切なケイデンスを保つこと、3つ目は慣性を生かすこと、4つ目は持続可能な範囲でエアロフォームを取ることです」と相川さん。
早速、それぞれについて詳しく教えてもらおう。
ペダルにうまく体重を乗せる
はじめに、“ペダルにうまく体重を乗せる”とは?
「平地を走るときは特に、脚の筋力だけに頼るのではなくて脚の重さ、上半身の重さをうまく活用して、それをペダルを踏む力に上乗せすることが大事です。すると楽にペダルを回し続けられることにつながります。
ペダルにうまく体重を乗せるこつは、“バイクの中心に乗ることです。どっかりとサドルに腰を降ろして後ろ荷重になっていると、ペダルに体重が乗りづらくなります。逆に、腕を突っ張り棒のようにしてハンドルに寄りかかる姿勢をしていてもハンドル荷重になり、ペダルに体重が乗りづらくなります。すると、筋力に頼りがちな、疲れやすいペダリングになります」。
「バイクの中心に乗ることができると、自然とペダルに体重が乗せられ、楽に大きな力を出すことができます」。
では、どうやったらバイクの中心に乗る感覚を身につけられるのか?
「意識付けの方法があります。バイクが惰性で進んでいる状態で、まず手脚をピンと伸ばし、クランクを水平にしてバイクの上に立ち上がってください」。
「その状態から、サドル側に体を移動させてみてください。すると、自然と後ろ側の脚に荷重が掛かるのが分かるはずです。これがサドル荷重状態です」。
「次に、体を前に移動させ、ハンドルに体重を預けてみてください。すると、体は前に行っているのに、前側の脚には荷重が掛かりにくくなるのが感覚として分かるはずです」。
「この2つを確かめてみたら、最後にその中間となる、前側の脚のペダルに体重が掛かる感覚が分かる所に体を移動させてください。ここが“バイクの中心”です」。
「その前後位置が見つかったら、そのまままっすぐ下に、自然に腰を降ろします。すると、その位置がバイクの中心に乗ってシッティングしている状態となり、ペダルにうまく体重が乗る位置です」。
なるほど、非常に分かりやすい。この意識付け法をやるタイミングや頻度とは?
「タイミングとしては、ライドに出かけて体がある程度あったまってきた頃、時間で言うとライド開始から10分〜15分後くらいに取り入れるといいでしょう。また、途中で休憩を入れて再スタートしたときとか、ペダルにうまく体重を乗せる感覚が失われてきたと感じたときなどに、こまめに確認のために取り入れてください。
頻度としては、ライドに出るたびに、毎回やるのが望ましいです」。
適切なケイデンスを保つ
2つ目のポイントについては?
「楽で速く走れるケイデンスを自分なりに見つけてください。気をつけてほしいのは、よく言われる“90回転をキープ”という言葉にとらわれて、動きが崩れて疲れやすいペダリングになってしまわないようにすることです」。
え!? 平地を速く走るのなら、90回転以上はキープすべきなのではないだろうか?
「90回転というと、プロかそれに近いレベルの人がキープできる回転数です。もちろんそれでキープして効率良く走れる人ならいいのですが、一般のサイクリストのほとんどには高すぎることが多いと思います。
90回転を無理に維持しようとして、腰がはねてしまったり先ほど言ったようにペダリング動作が崩れてしまっては元も子もありません。効率の悪い走りになってしまいます。それは最もさけるべきです」。
「一般のサイクリストなら、80回転台が適切だと思います。腰が跳ねたりせず、ペダリング動作をきちんと意識できてそれが崩れないようにするには、少しゆっくり目のケイデンスにすることが大事です」。
「逆に、70回転かそれ以下とか、ケイデンスが低すぎても筋肉に負担が掛かって疲れやすくなります」。
慣性を生かす
次に3つ目のポイントについてだ。これはどういうことかいまいちピンと来ないが?
「自転車は、発進してある程度速度に乗せるまでは力を出さないといけないですが、一度速度が乗ってくると慣性が効いてくるので、後は少ない力でその速度をキープできます。自動車などの乗り物も同じですね。
ですから、常に頑張って踏み続ける必要はなくて、スピードに乗せたら後は推進力に換わりやすいポイントだけ“当てていく”ように踏むイメージで、最小限の力で慣性を生かしてペダリングし続けると楽なのです」。
具体的にそれはどうやればいいのか?
「よく言われていることですが、踏んだ力が推進力に替わりやすい、0時くらいのクランクが高い位置から3時くらいの位置まで踏み、後は力を入れすぎないようにしましょう」。
「逆に力を入れても推進力に換わりづらいのは、4時過ぎから6時の位置です。ここで力を入れすぎてしまったり、6時の位置で真下に踏み抜くようなペダリングをしても、うまく推進力に変わりにくく疲れてしまいます。これではうまく慣性が生かせません」。
頭では理解できても、なかなかこれができるようにするのは難しいものだ。何か誰でも取り組みやすい意識付けの方法はないのか?
「ありますよ。脚を高い位置から踏み始める意識付けの方法で、やり方は簡単です。ペダリング中に頭の中でリズムを取ってもらいます。膝が上がるタイミング(ポイント)で、左右の脚でイチ、ニ、イチ、ニ、イチ、ニとリズムを取ります。すると、自然とクランクが高い位置から踏み始める動きにつながっていきます」。
「逆に、多くの人はペダルが真下(6時の位置)に来たときに、イチ、ニ、イチ、ニとリズムを取ってしまいがちです。すると、自然と3時以降も力を入れすぎてしまうペダリングにつながってしまうのです」。
非常に取り組みやすい方法だ。これはやるタイミングや頻度はあるのか?
「ライド中、常に頭の中で唱え続けてください。ただし、交通量が多い所では安全のためにやめましょう。ペダリングに集中できる、交通量が少ない安全なフィールドで行ってくださいね」。
持続可能な範囲でのエアロフォーム
最後のポイントだ。エアロフォームと言うと維持するのが難しいイメージがある。
「プロ選手のような深い前傾姿勢を取る必要はありません。それが維持できず走りが破綻してしまうと本末転倒です。とはいえ、少しでも体の前面で風を受ける面積を減らすと、かなりスピードは違ってきます。
そこで、自分なりに維持できる前傾度合いで、できる範囲でいいのでエアロフォームを取ってみてください。それだけでも、違いが体感できるはずです。
ポイントは、肘を曲げ肩を落とすことです。あくまで自分なりにできる範囲でいいので、肩1つ分、頭1つ分を下げることを目安にしてみてください。
注意点は、頭は下げすぎないようにし、目線はしっかりと前方を見ることです。前傾姿勢を深めようとするあまり、目線が下がってしまうと視界が悪化し、安全な走行に悪影響を及ぼします」。
「もう一つ気をつけてほしいことがあります。正面から見たとき、肘が外側にできるだけ張り出さないようにすることです」。
「よくやりがちなのは、肘が外側に張り出してしまうことです。こうなると、風を受ける面積が増えてしまう原因となり、またハンドルにしがみつくようなフォームになりがちで、ハンドリングがおぼつかなくなる可能性があるのでお勧めできません」。
“頑張って走るイコール速く走れる”ではない
ここまで、4つのポイントについて教えてもらった。冒頭の動画の中で、お手本として相川さんに平地を楽に長時間そこそこのペースで巡航するイメージで走ってもらった映像がある。それを見ると分かるが、とても一般人では出せないような速度を維持しているのに、大して頑張っている雰囲気がない。頑張って走ることが必ずしも速く走ることにつながるわけじゃない、ということが言えるだろう。
「そうですね。皆さん速く走ろうと気持ちが焦るあまり、頑張りすぎてしまって動きが崩れ、結果として速く走れないばかりか疲れやすい状態になっていることが多いと思います。今回ご紹介したポイントは全て基本的なことばかりですが、じっくりと取り組んでみて、走りを改善してみてほしいと思います」。