CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2018年10大ニュース・プロダクツ編

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CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2018年10大ニュース・プロダクツ編

https://www.cyclesports.jptext 浅野真則、江里口恭平
2018年に発表・発売された製品から1年を振り返る10大ニュース・プロダクト編。ディスクブレーキロードやEバイクの台頭、ロードチューブレス・TLRシステムの勢力拡大、コンポーネントの進化など、スポーツバイクの新しいスタンダードを作るような製品のニュースが目白押しの1年だった。

エアロロード戦国時代に突入

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サーヴェロ・S5

2018年に発表された各社のトップモデルはエアロロードの当たり年だった。スペシャライズドからはヴェンジトレックからはマドンキャノンデールからはシステムシックスサーヴェロからはS5フォーカスはイザルコマックスをエアロロード化BMCのタイムマシーンもそうだ。名だたるメーカーがエアロロードのニューモデルを発表した。

フレーム形状の変更による空力性能の追求はもちろん、油圧ディスクブレーキを搭載し、ワイヤ類をフレームにフル内蔵している。また、ディスクブレーキ仕様のみのモデルがほとんど(マドンはリムブレーキ仕様がある)だ。2018年7月のツール・ド・フランス開幕と同時にUCIがロードレースでのディスクブレーキ使用を解禁しており、今後平坦基調の高速ステージでは空力性能に優れ、コンディションにかかわらず安定した制動力が得られるディスクブレーキ仕様のエアロロードを選ぶ選手がことが予想される。

一方、日本ブランドのヨネックスは、この夏、初のエアロロード・エアロフライトを発表した。こちらは現在のところリムブレーキ専用モデルで、優れた空力性能に加え、フレーム重量830gというエアロロードではトップクラスの軽さを武器にしており、上れるエアロロードとして個性を放っている。

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スペシャライズド・ヴェンジ

カンパニョーロの上位グレードが12スピード化

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イタリアのコンポーネントメーカーカンパニョーロが、ロードバイク用コンポーネントの最上位モデルであるスーパーレコードと上位モデルのレコードをフルモデルチェンジし、リヤ12スピード化を実現した

カンパニョーロの12スピードコンポーネントは、フリーボディの規格やフレームのエンド幅が11スピード世代と共通しており、従来のフレームやホイールという資産を生かしたまま多段化できるのが特徴。もちろんリムブレーキ仕様だけでなく、ディスクブレーキ仕様も用意されている。

ロードバイク用コンポーネントでは、ライバルのシマノやスラムも未だ11スピードのままで、多段化という点ではライバルから一歩抜きんでた形になる。スラムはすでにリヤ12スピードのプロトタイプを走らせているし、カンパニョーロ、シマノ、スラムという3大コンポーネントメーカーの三つどもえの戦いはまだまだ続きそうだ。

シマノのロード用コンポーネント・105がモデルチェンジ

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105の手の小さな人向けデュアルコントロールレバー

シマノは2018年、ロード用コンポーネントの中堅モデル・105のフルモデルチェンジを敢行し、R7000シリーズに進化。上位モデルであるデュラエースR9100シリーズやアルテグラR8000シリーズのデザインや機能を踏襲している。

R7000シリーズ最大のトピックスは、105シリーズ初の油圧式ディスクブレーキをラインナップしたこと。グラベルロードだけでなく、エアロロードや軽量レーシングモデルにもディスクブレーキ化の波が波及しており、市場やユーザーにはシマノのロード系コンポーネントのボリュームゾーンである105の油圧式ディスクブレーキを歓迎する声は多い。

また、最大34Tのスプロケットに対応したり、手の小さな人向けのデュアルコントロールレバーや160mm長のクランクもラインナップするなど、あらゆるサイクリストにとって使いやすいコンポーネントに生まれ変わっている点も見逃せない。

個性派コンポーネントが続々登場

2018年は3大コンポーネントメーカー以外の個性的なコンポーネントが登場したことも記憶に新しい。

ローターは世界初の油圧変速コンポーネント・ウノを2017年に発表したばかりだが、ユーロバイクではリヤ13スピードコンポーネントを初お披露目。フロントシングル仕様で、ロードバイク向けの仕様、グラベルロード向けの仕様、MTB向けの仕様が用意されている。

また、FSAのセミワイヤレス変速コンポーネントK-フォースWEもいよいよ国内発売開始となった。K-フォースWEはコントロールレバーとフロントディレーラーに搭載された受信部がANT+ワイヤレス通信、フロントディレーラーとリヤディレーラー、バッテリーは有線接続という独自の方式を採用するのが特徴だ。

メカニカル変速コンポーネントに取り付けるだけでワイヤレス電動変速に変更できるXシフターも注目に値する。現在はリヤディレーラー用が販売されているが、フロントディレーラー用の製品も近日中に発表予定という。

異彩を放っていたのがユーロバイク2018でお披露目されたセラミックスピードのドリブン。フロントシングルのチェーンリングと13スピードのスプロケットをカーボン製のドライブシャフトでつないで駆動し、スプロケットとかみ合うベアリングの位置をシャフトに内蔵するモーターで前後に動かして変速する新発想のドライブトレインだ。従来のチェーン駆動方式と比較すると49%抵抗を減らすことができるという。

これらの個性派コンポーネントが3大ブランドのコンポーネントの中でどのように存在感を示し、愛好者を増やしていくか、注目だ。

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FSA・K-フォース WE

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ローター・1×13

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セラミックスピード製コンポーネントのプロトタイプ

トライアスロン専用バイクも大豊作

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シーポ・シャドーR

2018年はトライアスロン専用バイクも当たり年だった。このカテゴリーでは、シーポのシャドーRスペシャライズドのシヴピナレロのボリデTR+フェルトのIAディスクなど、個性はバイクが続々登場した。

トライアスロンバイクは、ロードレースのタイムトライアルで使われるTTバイクとは似て非なるものだ。ロードレースのUCI規定にあるフレームなどの断面の長辺と短辺の比が3:1を越えてはならないとする「3:1ルール」の制約を受けないため、TTバイクよりデザインの自由度が高く、より空力性能を追求したバイクを作ることが可能だ。

実際にシーポ・シャドーRでは、ホイールを覆うカウル形状のフロントフォークを採用し、シートステーをなくして前輪からフレーム、後輪までフレームデザインに一体感を持たせて整流効果を高めているし、他のモデルもトライアスロンに必要な大容量ストレージを搭載している。ロードレース用のTTバイクとは全く違う進化を遂げていくことが予想されるだけに、今後の新製品にも要注目だ。

ロード用チューブレス、チューブレスレディが勢力拡大

MTBではすでにタイヤ・ホイールのチューブレス化が進んでいるが、近年ロードバイクでもチューブレス化が進んでいる。2018年はタイヤメーカー、ホイールメーカーから多くのチューブレスホイール、チューブレスレディホイールが登場し、タイヤメーカーからもチューブレスタイヤ、チューブレスレディのニューモデルが登場し、選択肢が大幅に増えた。
 
ロードチューブレスを一気に普及させたのはマヴィックのUSTシステムの功績が大きい。チューブがなくなることによる転がり抵抗の少なさや、空気を低圧にしても乗れることによる乗り心地の良さなどのメリットは以前からも知られていたが、タイヤのはめにくさ、ビードのあげにくさというチューブレスシステムのネガティブな部分を解消し、実際に運用しやすいホイールシステムが登場したことで、チューブレス導入を検討するユーザーが増えたかたちだ。
 
チューブレスレディ(TLR)は専用のリムテープとシーラントを使うことでチューブレスで使える規格で、こちらも勢力を拡大している。ボントレガーやロヴァールはいち早くTLR対応を果たしたブランドであり、DTスイスもディスクブレーキ・リムブレーキの両仕様ともクリンチャーホイールの全モデルがTLR対応になっている。
 
チューブレスやTLRは、対応するタイヤも増えている。コンチネンタルが発表したグランプリ5000にはTLRモデルも追加され、ハッチンソン・フュージョン5、マキシス・ハイロードなど、ニューモデルも各ブランドから続々登場している。今後ホイールとともにタイヤの選択肢がさらに増えるのは確実で、ますますチューブレスとTLRが勢力を拡大しそうだ。

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ボントレガー・アイオロスXXXシリーズ

パワーメーターがさらに普及。パワーメーター付きの完成車も

今や競技志向のサイクリストの間で常識になったパワートレーニングの必需品、パワーメーター。走行中の運動強度を正確に測れるため、特定の強度を一定の時間持続したりリピートすることで狙い通りのトレーニング効果を得られるだけでなく、消費エネルギーを正確に計測できるため、今やフィットネス目線でも注目のアイテムとして定着しつつある。

パワーメーターそのものも以前より低価格が進み、データが正確な直接計測式のひずみゲージを使うタイプのパワーメーターでもシンプルにパワーだけ測れるタイプのものなら5万円もあれば手に入れられるようになった。また、ここへ来て各ブランドからパワーメーターをあらかじめ装着した完成車もリリースされている。

ジャイアントは、今年モデルチェンジしたエンデュランスロードのディファイと、パフォーマンスロードTCRシリーズにジャイアント製のオリジナルパワーメーターを搭載。TCRアドバンスド1SEは28万円(税抜)という戦略的な価格を実現した。キャノンデールも軽量レーシングロード・スーパーシックスエボのラインナップのひとつとしてパワーメーターを標準装備したアルテグラレースという完成車をラインナップしているほか、エアロロード・スーパーシックスハイモッドの完成車にもパワーメーターを標準装備している。さらにスペシャライズドでもターマックやヴェンジ、ルーベ、シヴのSワークス仕様のほとんどのモデルにパワーメーターを標準装備する完成車がラインナップされている。

今後ますますパワートレーニングやパワーメーターが身近なものになるのは間違いない。

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ジャイアント・TCRアドバンスド1SE

スマートライトやモジュール式のライトシステムなどライトも多様化

ナイトライドの必須アイテムであり、自転車への装着が義務づけられている保安部品・ライト。2018年は単に照らすだけのライトではなく、テールライトと連携したり走行速度や周囲の明るさによって点灯モードが自動的に変わったりするスマートライトや、ライトとバッテリーを自由に組み合わせて使えるモジュール式ライトなど、次世代ライトと呼べる“進化形モデル”が多数登場した。

スマートライトでは、ガーミンのヴァリアシリーズやボントレガーのイオン/フレアーRTシリーズに注目。特にヴァリアシリーズは、サイクルコンピューター・エッジシリーズと連携して周囲の明るさやスピードによって点灯モードが切り替わるほか、サイクルコンピューターからも点灯モードの切り替えなどの操作ができる点が画期的だ。また、サイクルコンピューターとの連携はできないが、フロントライトとテールライト、ウェアラブルライトを最大7つまでリンクさせられてひとつのスイッチで操作可能なキャットアイのシンクシリーズも魅力的だ。

モジュール式ライトでは、ノグのPWR(パワー)シリーズ、ユーロバイクで発表されたトピークのCUBICUBI(キュビキュビ)シリーズが登場。特にノグのパワーシリーズは、明るさが異なる3種類のライトヘッドと、容量が異なる3種類のパワーバンク(バッテリー)を自由に組み合わせて使え、ライトの明るさや持続時間を組み合わせ次第で自在にアレンジできる。さらにパワーバンクはモバイルバッテリーとしても活用でき、別売のスピーカーやLEDランプの電源、スマートフォンなどのモバイルギア用の外部バッテリーとして使うこともできる点が画期的だ。

ライトがこれからどのような進化を見せるのか、2019年も目が離せない。

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ノグのPWR(パワー)シリーズ

クラッシュ感知やセーフティービーコンの機能を持つヘルメット搭載型センサーANGi

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ヘルメット搭載型のセンサーANGi(アンジー)

スペシャライズドが開発したヘルメット搭載型のセンサーANGi(アンジー)は、加速度センサーとジャイロスコープを内蔵し、リアルタイムの位置情報発信、クラッシュ感知&セーフティービーコンの機能を備えた画期的なアイテムだ。

スペシャライズドが提供するRideアプリをインストールしたスマートフォンとペアリングすることで、あらかじめ登録しておいた緊急連絡先にライドに出発したことを知らせたり、位置情報を共有することでライドをリアルタイムで追跡することができる。さらに、ライド中に転倒するなどして大きな衝撃を感知すると、緊急連絡先にテキストアラートとともに位置情報を送信するセーフティービーコンとして機能する。

一人でふらっとライドに出かけても、まるで仲間と走っているような安心感が得られるのだ。ヘルメットもついにここまで進化した。

搭載モデルはSワークス・イヴェード、Sワークス・プリヴェイルII、Sワークス・ディシデント、プロペロIIIの4種類。今後ラインナップがますます拡大することも期待される。

”eバイク元年“の手ごたえ

ボッシュ・アクティブラインプラスシマノ・ステップス。それらドライブユニットを核としたeバイクが各社から一斉に発売されたのが2018年。そしてその年の末の状況は、それまでヤマハをはじめとした国内メーカーによる電動アシスト一般車の普及という礎をもととした上で、大きく変化したと言えるだろう。

国内外の有名スポーツバイクブランドから次々とeバイクが発表されたことは、これまでのスポーツバイクを趣味としてきた人にとって何かしら気にかかる存在となったかもしれない。
しかし興味を持ち、どれほどウエブや雑誌で情報を収集したところで、実際に乗ってみないとその楽しさが伝わらないのがeバイクの特徴である。これまでの電動ママチャリともスポーツバイクとも異なるこの乗り物は、一度走ってライドに出かけてみると全く新しい景色や体験を与えてくれるのだ。
そのこともあって各ブランドが発売開始とともに力を入れたのが、試乗会イベントだ。ショップ単位だけでなくeバイクオンリーの試乗会イベント、そしてサイクルモードといったビッグイベントまで、ユーザーがeバイクを体験し、ブランド担当者から直接話を聞くといったイベントが、この一年のうち日本各所でスタートした。

そういった草の根的な状況もあってか、日本生まれの電動自転車が海外の大流行を受けた“逆輸入”として展開が始まったというeバイクの流れは、併サイトのような専門メディアだけでないさまざまな媒体で注目されることとなった。それはすなわち、これまでスポーツバイクライドに興味がなかった人にとってもそれを触れる機会が増えていくということだ。

eバイクを追いかけ多くのユーザーと会う機会の多い筆者が驚くのは、すでに国内の感度の高いユーザーはすでにeバイクを手に入れ、日常の足として以上の楽しみを見つけ始めているということだ。
健康寿命、EV化、サイクルツーリズムなどeバイクを取り巻く環境として、それが受け入れられるキーワードを挙げ出すと、2018年はまさに枚挙に暇がなかった。つまりは、より多くのユーザーへ浸透していく新年は、想像よりも早くやってくるのかもしれない。

CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2018年10大ニュース・プロダクツ編

自動車耐久レース×eバイクの新コラボのように、既存のスポーツバイクマーケットとは一線を画する動きができるのもeバイクならでは