ヨネックス・エアロフライト 日本製超軽量エアロロード アサノ試乗します!その30
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超軽量レーシングロード・カーボネックスでおなじみのヨネックスから登場したニューモデル・エアロフライト。フレーム重量830gという軽さと高い空力性能を兼ね備えたというこのバイクは、海外ブランドの強豪ひしめくエアロロードカテゴリーで通用するのか? その実力をチェックする。
空力だけでなく、フレーム単体重量830gの軽さも魅力
ヨネックスが2019年モデルで発表した初のエアロロード「エアロフライト」。軽量レーシングロードとして今なお存在感を示すカーボネックスで培ったカーボンフレーム製造のノウハウを生かしながら、空力性能向上を実現するために何種類ものフレームを試作し、現在の形にたどり着いたという。
フレーム各部に翼断面の後端を切り取ったようなカムテール形状を採用し、空力性能を向上https://www.cyclesports.jp。ヘッドチューブはカーボネックスと同じテーパード形状を採用しながらチューブ途中の横への張り出しを抑えて前面投影面積を削減。フロントフォークやシートステーもカーボネックスのように直線的ではなく、エンド部に向けて途中まで極力横への張り出しを抑えるなど、剛性を犠牲にすることなく前面投影面積を徹底して削減している。ブレーキはリムブレーキ仕様でノーマルマウント仕様。
エアロロードの弱点とされる縦方向の突き上げの改善にも余念がない。その核となるのがNamd(エヌアムド)とバイブスレイヤーカーボンだ。
エヌアムドは、カーボン繊維にカーボンナノチューブを結合させて樹脂との界面密着を飛躍的に向上させる技術で、弾性力を高めることができる。この技術を採用した素材をフロントフォークのコラム部分とフォークブレードの前後に使い、路面からの大きな衝撃や突き上げがあったときにも高い復元力を発揮し、快適な乗り心地を実現している。
バイブスレイヤーカーボンは、極薄の衝撃吸収材をカーボンとサンドイッチするように何層も積層させる技術で、反発性と衝撃吸収性の高い次元での両立を可能にする。この素材をトップチューブやシートチューブ、シートステーに使用し、サドルに伝わる振動を和らげている。
チェーンステーの断面形状を楕円化して高い振動吸収性と路面追従性、横剛性を高次元で融合するオーバルプレスシャフト理論、ゴムのような弾性と精密な復元性を備えたチタン合金・ゴムメタル、高密度コアなど、カーボネックスで培ったテクノロジーや素材も採用している。
さらにフレーム重量も830g(Sサイズ、未塗装時)と、このカテゴリーのバイクとしては驚きの軽さを実現している。
エアロフライトも、設計から製造まで新潟県長岡市の同社新潟生産本部で一貫して行われている。正真正銘のメイド・イン・ジャパンのエアロフレームだ。
フレームカラーはヨネックスのコーポレートカラーのブルー/グリーンと、超軽量塗装フェザーライトコーテッド仕様のグラファイトの2色。フレームサイズはXSからLまでの4サイズを展開する。
軽さが際立つ“上れるエアロロード”
ロードバイクのカテゴリーの細分化が進み、同じロードバイクでありながら個性際立つバイクが増えている。そして空力性能を強化したエアロロードも、すでに1ジャンルとして定着したと言える。ヨネックスと言えば、これまで軽量レーシングロードのカーボネックスシリーズのみだったが、2019年モデルでは新たにエアロロードがラインナップに加わった。
ヨネックス初のエアロロードバイクとなるこのモデルは、エアロロードでありながら830gというフレーム単体重量を実現。このクラスのバイクとしてはかなり軽量に仕上がっているのが最大の特徴だ。もちろんエアロバイクとして空力の追求にも余念がなく、フレーム形状のモックを何種類も試作&風洞実験を行った上で、細部のディテールを決定しているという。
試乗して真っ先に感じたのは、意外にも軽さだった。低速域からの加速時にはカーボネックスほどの鋭さは感じないが、並の軽量レーシングロードを食うほどの軽快さを備えている。真骨頂はスピードが乗ってからの加速で、中速域以降の伸びやかな加速は、まさしくエアロロードのそれだ。特に下りでいわゆるスフィンクスポーズをとっていると、ぐんぐん加速していき、それが際限なく続くのではないかと思わせる。
上りでは軽さが生きる。エアロロードは、短い勾配や緩斜面では平地や下りの巡航速度を生かして何とかこなせる——というレベルの登坂性能であることが多いが、このバイクは上りをそれほど苦にしない。ここまで上れるエアロロードは、個人的にはスコットのフォイル以来だと思う。
ブレーキ性能に関しては、カッチリとしたブレーキフィールを堪能できる。ヘッドチューブは中ほどまで細いシェイプだが、規格は下ワン1-1/2インチのテーパード仕様でカーボネックスと同じ。スピードが乗りやすい下りコーナーでもハードブレーキング時でも挙動が安定している。一部のエアロロードに見られる変なクセがなく、ハンドリングもいたって素直だ。
エアロロードのデメリットとしてよく語られる乗り心地の硬さや路面からの突き上げをダイレクトに伝えやすいという点も、エアロフライトは比較的上手く消化していると思う。カーボンと衝撃吸収剤をミルフィーユのように積層するエヌアムドや、カーボネックスにも採用されている楕円断面のチェーンステーによるところが大きそうだ。しかし、カーボネックスに比べると、乗り味はやや硬めで、快適性もやや劣る印象を受けた。とはいえ、レース機材としては十分及第点だ。
さて、皆さんが興味があるのは、エアロロードが大豊作だった2019年モデルで、エアロフライトはどの程度の実力を持つか、ではないか。今年話題になったスペシャライズドのSワークスヴェンジや、キャノンデール・システムシックス、トレック・マドンあたりと比べてみよう。
登坂性能は確実にエアロフライトが一段上、クセのない乗り味や快適性に関しては、エアロフライトはエアロロードとしてはトップレベルだ。しかし、悪天候時も含めたコントロール性能や下りの安定感ではディスクブレーキ仕様のエアロロード勢に分があると個人的には思う。総合力ではこれらのバイクと十分伍して戦えるポテンシャルがある。
群雄割拠のエアロロード、何を選ぶかは人それぞれだと思うが、下りが得意で上りを軽快に走りたいならエアロフライトは魅力的な選択肢だ。
いずれエアロフライトにもディスクブレーキバージョンが登場するだろうが、上りでの軽快さが損なわれなければ、下りやコーナーでのコントロール製がさらに向上し、リムブレーキモデル以上に総合力が高いバイクが出来上がるのではないか——。今から期待させられる。
spec.
フレームセット価格/70万円(税抜)
フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
コンポーネント/シマノ・デュラエースR9100
ホイール/シマノ・デュラエースR9100 C40
タイヤ/コンチネンタル・グランプリ400S2 700×25C
カラー/ブルー×グリーン、グラファイト
サイズ/XS、S、M、L
試乗車重量/6.84kg(Sサイズ、ペダルなし)
■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、最近はTTに精力的に取り組んでいる。海外のグランフォンドにも参加経験がある。ロード系の愛車は、キャノンデール・スーパーシックスエボとキャード10、スコット・アディクトの3台。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。