グラベル専用設計の軽量SPDシューズ「シマノ・RX8」の実力をチェック!
目次
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ロードからMTBまで、幅広いジャンルのシューズをラインナップするシマノから、“グラベルロード”の走行を目的とした新たなSPD対応ビンディングシューズ「RX8」が発売された。舗装路と未舗装路という、まったく異なるライド環境を両立するために作り込まれたこのシューズの実力を、実際の使用感とともに紹介していこう。
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シマノ・RX8(ブラック) 価格/2万7500円(税抜)
あらゆる路面状況で快適に走り続けるためのビンディングシューズ
現在日本で盛り上がってきた、オンロードとオフロードを走ることができるグラベルロードバイク。そんなバイクでいざ走ろうと思ったときに、シューズ選びはなかなか悩ましいものだ。
というのも、オンロードを快適に速く走るための“ロードバイク向け”シューズと、ダートや未舗装路で耐久性や安定感を重視する“MTB向け”シューズでは、それぞれ目的としているライド環境が大きくことなる。そのため、舗装路を走りつつも少し脇道にそれて砂利の中を走るようなグラベルロードバイクにおいては、どちらのシューズを選んだとしてもダートでの激しい着脱や足つき、あるいは重めの重量によるペダリングのストレスなどを感じてしまうものだ。
そんな中でシマノが発表した「RX8」は、まさに“グラベルレーシングシューズ”という新たなカテゴリーのもとに設計された一足だ。
その最も大きな特徴は、グラベル走行に向け新たに採用されたアウトソールだ。このソールの骨格となるのが、ロードバイク向けシューズで採用されている軽量さと高い剛性を備えたカーボンコンポジットソールである。それに加わる形で、あらゆる路面における高いグリップ力や広い踏み面を与えるパッド部を、ソール中央部やかかと部分に配置している。
これによって、例えば高出力なペダリング時はカーボンコンポジットソールのメリットを、あるいはラフなセクションを確実にコントロールしていく際はパッド部のメリットを享受することができる。まさにハイブリッドなSPDタイプのシューズなのである。
スムーズなペダリングに直結するフィット感。それを最も担うアッパー部は、シマノシューズの上位モデルに多く採用されている、縫い目のない一枚の合皮で足全体を包み込む「サラウンドラップアッパー」だ。そこにBOA(IP1)ダイヤルが一つ、先端部にベルクロ一枚がクロージャーシステムとなり構成されている。
このホールド方法によって、シューズと足の隙間を減らしつつ足に掛かる圧力がアッパーで均等に分散するため、包み込まれるようなフィット感を得ることができる。
無段階調整が可能なBOAシステムは、ライド中でも片手で締め付け調整が可能。路面状況が頻繁に変わり、その時々で締め付けを微調整させたいグラベルライドにはこのシステムは最適だ。
またシマノシューズは、ラスト(足型)についても世界中の幅広いジャンルのライダーからのフィードバックの基に研究を重ねており、あらゆるライダーにフィットするように設計されている。その中で、このRX8はプロライダーのフィードバックを基に「シマノダイナラスト」を採用する。トウスプリング(爪先部分の立ち具合)を最適な高さにすることで、長時間の競技志向のライドでも脚力伝達の効率を下げることなく走り続けることができるのである。また、38〜48という幅広いサイズ展開であることも、多くのライダーに高いフィット感を提供することに一役を買っているのだ。
また、天候変化だけでなく路面からの泥や砂などの跳ね返りの多いグラベルでは、アッパーの通気性と耐久性の両立も重要だ。RX8では、爪先部分にスリットのようにしてメッシュを、前部分には大小の通気孔(パンチングホール)を取り入れている。縫い目が少なく大きな開口部がアッパーにないことによって、水や汚れの進入を気にせず、それでいて内側が蒸れにくい。ハードなグラベルを長時間走り続けるには重要なポイントだろう。
このサラウンドアッパーに一つのBOAシステムを配するというシンプルな構成は、ライド後に泥や汚れを洗い流しやすく、メンテナンス性に優れるという点でも高く評価できる。
グラベルSPDシューズに求められる資質
グラベルライドと一概に言っても、ツーリング気分でオンロードをゆったりと走る日があるかと思うと、大雨の中で泥だらけになりながら高い出力でバイクを進ませる、というシーンとなることもある。グラベルロードバイクは、そんな状況に一台で全て対応してくれるからこそ面白いものだが、最もペダリングや歩行に影響するシューズ選びの点では、前述のとおりどっちつかずになることが多かった。しかしそんな選択の悩みは、このRX8で解決することとなる。
片側で278g(サイズ42、実測)と、“フェザーライト”と言われるほどの軽量さを実現したRX8は、オンロードでの上り区間や、フラットなグラベルでガシガシと高出力を維持して踏みながら、ハイスピードでバイクを走らせるようなライドに非常にマッチする。
ハイエンドロードバイク用シューズに求められるような剛性感でペダリングができるので、「もっと速く、気持ち良くグラベルを走り抜けよう」と、そんな気分にさせてくれる。結果、グラベル体験の密度がワンランク向上するのだ。
それでいて、アウトソールには前側に3つ、かかと側に2つのラバーグリップが備わる。最低限のように見えるが、TPU素材によってグリップは十分だ。ぬかるんだ泥や滑りやすい濡れたガレ場で歩行をしてみたが、この深めの溝が路面をかっちりホールドしてくれた。また、パッドが土踏まず付近まで設けられており、
世界中で盛り上がりを見せ昨年より日本でも開催され始めた「グラベルロードレース」は、グラベルの一定の区間においてタイム計測を行い順位を競いつつ、それ以外の区間では仲間とともに景色やエイドステーションのグルメを楽しむという形式がメジャーである。RX8はシマノシューズのハイエンドの系譜に位置するからこそ、こうしたグラベルレースに求められるパフォーマンスと一方でのファンライド的なリラックスしたシーンへの適応力と、その両面の要素を一つの形へと結実し、唯一無二な個性を手に入れた。
うっすらとしたカモフラージュ柄は、大自然の中はもちろん、オンロードツーリング中の一幕にも違和感なく溶け込んでくれ、それでいてハイエンド感もさりげなく醸し出す。
今、グラベルを楽しみ尽くしたい自分にとって、最適解となるグラベルシューズがRX8だ。
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カーボンコンポジット素材のソールが軽量性を確保しつつ、先端から中央部、そしてかかと部のブロックパターンが歩行を担う
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グラベルでの歩行用として最小限の隆起で構成されるパッドの先端部。爪先にはトウプロテクターも設けられ、ライド中の障害物などへのヒットから足を守ってくれる
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ロード用シューズのハイエンドモデル「RC9」にも採用されている、一枚で足全体を包み込む「サラウンドラップアッパー」
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インナーソールは取り外し式の「アーチパッド」が付属。土踏まず部分の厚さを調整でき、よりライダーのフィット感を高める
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BOAの中でも最上位のBOA IP1ダイヤルは締めつけだけでなく、逆回しで緩める操作も可能
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ソール側の踏み面は、確実なペダルキャッチにつながる。システムとして設計されたシマノSPDペダルとの相性も抜群だ
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歩行用ヒールパッドは、最小限ながら高さがあるためグリップも良好。歩行時にソールはしなりは少ないが、高いホールド感もあり歩きやすい
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一枚のアッパーで構成されるシンプルさゆえ、高い耐水耐塵性を発揮する
シマノ・RX8
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シルバー
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パープル×グリーン(限定品)
RX8
価格/2万7500円(税抜)
サイズ/38〜48(限定カラーは39〜44)
クリートタイプ/SPD
クロージャー/BOA、ストラップ
アッパー素材/合成皮革+メッシュ
アウトソール/カーボンファイバーコンポジット
実測重量/278g(サイズ42、片側)
カラー/パープル×グリーン(限定品)、ブラック、シルバー
シマノ・PD-M8120
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シマノ・PD-M8120
ペダルとシューズの接触部をワイド化し、抜群の安定感のトレイル用およびエンデューロ用ペダル。ケージを組み込むことで、接合部を衝撃から保護するだけでなく、クリートを固定していないときの安定感とコントロール性を高める。これによってハードなグラベルライドや、ストップアンドゴーの多いオンロードツーリングでも踏み外しを減らすことが可能だ。
シマノ・PD-M8120
価格/1万1177円(税抜)
重量/438g