シマノ・XT、SLXが12速へ進化し、今求められる性能を徹底的に具現化した
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昨年発表されたシマノ・12速XTRの最新機能が、走りを愛するMTBライダーの元へと、XT、SLXとなって降りてきた。
リアが12速になったアップデートに着目されがちなのはもちろんだが、その実、充実したのは、今、実際に求められているトレンド、性能ばかりであった。
MTB用コンポーネント「DEORE XT」「SLX」がモデルチェンジ
シマノのMTB用コンポーネント、XTとSLXがモデルチェンジした。XTはM8100シリーズとして、SLXはM7100シリーズに品番を変え、シマノの最高級オフロードレーシングコンポーネントであるXTRに搭載された最先端の機能性を、MTBライディングを愛するライダーたちにも幅広く広めていく。
まずはXTとSLXとの立ち位置を簡単に確認しておこう。XTはシマノ1980年代に初めてリリースしたマウンテンバイク・コントにつけられた名前だ。オフロードで激しく使っても裏切らない性能のコンポの代名詞として、MTB愛好家スタンダード・グレードとして長く存在し、その誇りある名前はホコリにまみれ走り続けてきた。
そしてSLXは、XTよりも低い価格帯でラインアップする、手の届きやすい本格オフロード・コンポだ。実際に使ったときの細かな感覚、それこそ肌触りなどはXTに劣り、重量も少し重くなるが、その機能性は質実剛健。機能性とコスト感を重視するライダーにファンも多い。なおこの新型XTとSLXを同等のスペックで組み上げた時、その重量差はSLXが148g重くなる程度だという。
さて新型XT、SLXに共通するアップグレードはリヤの12段変速である。ともに1×12、2×12の構成を備える。その核となるカセットスプロケットとチェーンには最新理論と技術で再デザインした新型ドライブトレイン『HYPERGLIDE+』(ハイパーグライドプラス)を採用、スペック上では変速の時間がこれまでの1/3、変速時のガチャッとした衝撃も減り、滑らかで信頼できる変速性能を確保している。
気になる歯数は10-45T、10-51Tというとても広いギア幅だ。《マイクロスプライン》というアルミ製で細かなかみ合わせを持つフリーボディーを採用したことで可能になった10Tというトップギアと最大51Tという歯数で、特に、荒れたトレールでの急な登り返しで、斜面とトルクに合わせた直感的で小気味良い変速ができるだろう。
この最大51Tというリヤのローギアを可能にするのが、新デザインのリアディレーラーだ。13Tのプーリーを装備しさらに滑らかな回転となった。1X12用と2X12用の2種が用意される。また2X用のフロントディレーラーも新デザインで用意されている。
変速を操るシフターもIPSEC-EVとして進化。ブレーキレバーにボルト1本で装着できるシンプルでクリーンな見た目に加え、好みに合わせた角度調整も可能だ。レバーの指が触れる部分にはラバー素材を配備(XTのみ)、より心地よい変速が可能となっている。
現在、中級グレード以上のMTBでは当然となってきたフロントシングル、いわゆる1x(ワンバイ)であるが、これを実現する「チェーンが落ちない」チェーンリングがさらに進化。再設計のチェーンとチェーンリングによる『DYNAMIC CHAIN ENGAGEMENT+(ダイナミックチェーンエンゲージメントプラス)』を採用し、さらに噛み合うフロントシングルを実現。摩耗も減らし耐久性も高められているとのこと。さらにスクエア状に再デザインされたクランクとチェーンリングはアームを使わないダイレクトマウントで結合、見た目もシンプルになっている。
変速に負けない新たな変革はブレーキ周りである。ディスクブレーキのキャリパーのピストンに、エンデューロ/DH用の4ポッドまたはXC向きの2ポッドの2種が増えた。より強力な制動力で操作性も高いとされる4ポッドは、XTRからのデザインを踏襲している。ブレーキレバーには無段階のストローク調整ノブが装備され、指先感覚の好みに合わせ設定できる。
また現代の仕様に合わせた特徴的な進化が、完組ホイールのリム幅だ。トレールバージョンのホイールでは内幅30mmまで広げられ、最大タイヤ幅は2.6まで、今どきのエアボリュームを大切にする空気圧セッティングも可能になった。
そしてペダルも新作3種が登場している。正当進化のXC用SPD、外枠ケージの形状をリファインしシューズの噛み合うダイレクト感を大事にしたトレール用XC、そして、人気の高かった昨年モデルからさらに形状を見直し発売されたフラットベダルだ。特に昨今、MTBライダーの使用率が上がってきているフラットペダルは、昨年から1年という短いスパンでのモデルチェンジだ。もちろん2サイズが用意されている。こういった配慮にも、MTBでのトレンドを確実に捉えた構成であるのがよく分かる。
レーサーのための最高級品であるXTRに比べて、より万人のものとなるべく開発された、高級志向XTと機能性重視のSLX。リヤ12速への進化というのが目に付きがちではあるが、その実、実際に走りを愛するMTBライダーたちが、今求めている性能を着実に具現化したコンポーネントであるのだ。
DEORE XT
1982年に発売されたMTBコンポーネンツ「DEORE XT」は、マウンテンバイクライダーのニーズや冒険への探求心を満たすために、性能と耐久性を向上させながら、進化を続けてきた歴史のあるシリーズ。
その「DEORE XT」へ、マウンテンバイクコンポーネンツの最高峰「XTR」M9100シリーズの最新技術を投入。更なる進化を遂げ、多様化するマウンテンバイクシーンを強力にサポートする。
<発売時期:2019年6月14日>
SLX
「SLX」は、より多くのライダー、より幅広いマウンテンバイクのライディングスタイルに対応するグループセットとして展開している。
<発売予定時期:2019年7月>
「DEORE XT」M8100シリーズ、「SLX」M7100シリーズ共通の特長
1.チェーンリングの専用形状によりチェーン保持力がアップした「DYNAMIC CHAIN ENGAGEMENT+(ダイナミックチェーンエンゲージメントプラス)」
フロントシングルにおいても、様々なライディングスタイルに対応するために開発された特殊な歯先のチェーンリング。荒れた地形でも、チェーンが外れ難くスムーズなペダリングが可能となり、どのギアであってもチェーンがしっかり噛み合うことによって、摩耗を低減し耐久性を高めている。
■DEORE XT フロントチェーンホイール
FC-M8100
歯数構成:28,30,32,34,36T
価格:1万5285円(税抜)
FC-M8100-2
歯数構成:36X26T
価格:2万1786円(税抜)
FC-M8120
歯数構成:28,30,32,34,36T
価格:1万5285円(税抜)
FC-M8120-B2
歯数構成:36X26T
価格:2万1786円(税抜)
FC-M8130
歯数構成:28,30,32,34,36T
価格:1万5285円(税抜)
■SLX フロントチェーンホイール
FC-M7100
歯数構成:30,32,34T
価格:1万367円(税抜)
FC-M7100-2
歯数構成:36X26T
価格:1万3185円(税抜)
FC-M7120
歯数構成:30,32,34T
価格:1万367円(税抜)
FC-M7120-B2
歯数構成:36X26T
価格:1万3185円(税抜)
FC-M7130
歯数構成:30,32,34T
価格:1万367円(税抜)
2.変速時の衝撃を抑え、変速時間を短縮するドライブトレイン「HYPERGRIDE+(ハイパーグライドプラス)」
どのようなフィールドにおいてもスピード、シフト効率、滑らかさを追及してドライブトレインをデザイン。カセットスプロケットとチェーンに施されたその最新のテクノロジーは、変速にかかる時間をこれまでの約1/3に短縮し、変速時の衝撃も抑制。あらゆる地形でもスムーズなライディングが可能。
DEORE XT「CS-M8100-12」カセットスプロケット
歯数構成:
10・12・14・16・18・21・24・28・32・36・40・45
10・12・14・16・18・21・24・28・33・39・45・51
価格:1万5590円(税抜)
SLX「CS-M7100-12」カセットスプロケット
歯数構成:
10・12・14・16・18・21・24・28・32・36・40・45
10・12・14・16・18・21・24・28・33・39・45・51
価格:9934円(税抜)
3.レバーの取付位置をあらゆるライダーに合わせて最適化できる「I-spec EV(アイスペック イーブイ)」
幅広いサイクリストにフィットすると共に、高い操作性を提供するためにシフトレバーとブレーキの形状を徹底的に見直し。取付位置の調整範囲が広く、一体感のあるスッキリとしたハンドル周りを実現。
DEORE XT「SL-M8100-IR」シフトレバー
SL-M8100-I
2 X 12(MTB)1万1830円(税抜)
リア:12(MTB)5969円(税抜)
フロント:2 5858円(税抜)
SL-M8100
2 X 12(MTB) 1万1830円(税抜)
リア:12(MTB) 5969円(税抜)
フロント:2 5858円(税抜)
DEORE XT「BL-M8100」ブレーキレバー
ハイドローリック、2フィンガー(アルミ)、アルミニウム製シリンダー
左右セット、ホース・オイル付属 1万3700円(税抜)
右レバーのみ、左レバーのみ 4812円(税抜)
SLX「BL-M7100」ブレーキレバー
ハイドローリック、2フィンガー(アルミ)、アルミニウム製シリンダー
左右セット、ホース・オイル付属 1万1649円(税抜)
右レバーのみ、左レバーのみ 3767円(税抜)
4.フロントシングル用のリヤディレイラーは最大51Tまで対応
フロントシングル用のSGSタイプはリア10-51Tのカセットスプロケットに対応。フロントダブル用としてリア10-45Tに対応するリヤディレイラーもラインナップ。ギアレンジがより広くなることによって、路面状況に合わせて最適なギアが選択できる。
DEORE XT「RD-M8100-SGS」リヤディレイラー
RD-M7100-SGS(10 / 10T、45 / 51T)
RD-M7120-SGS(10 / 10T、45 / 45T)
シマノ・シャドーRD+、直付
価格:7405円(税抜)
LX「RD-M7100-SGS」リヤディレイラー
RD-M8100-SGS(10 / 10T、45 / 51T)
RD-M8120-SGS(10 / 10T、45 / 45T)
シマノ・シャドーRD+、直付
価格:1万1140円(税抜)
5.フリーハブボディには軽くコンパクトな新規格MICRO SPLINE(マイクロスプライン)を採用
重量を軽減するために軽量なアルミ製のフリーハブボディを採用、小型化にも成功し10Tのトップギアに対応した。より小型でよりきめ細かいスプラインは、カセットスプロケットによるアルミ製フリーハブボディへの影響を軽減している。
DEORE XTシリーズではトータルで自転車をデザインできるようフリーハブだけでなく、チューブレスホイール(WH-M8100-TL/WH-M8120-TL)も揃う。
DEORE XT「FH-M8110-B」フリーハブ
FH-M8110(32H、28H、142mm)9286円(税抜)
FH-M8110-B(32H、28H、28Hストレートスポーク、148mm)9286円(税抜)(28Hストレートスポーク 1万633円(税抜))
FH-M8130(32H、28H、157mm)1万94円(税抜)
SLX「FH-M7110-B」フリーハブ
FH-M7110(32H、28H、142mm)7646円(税抜)
FH-M7110-B(32H、28H、142mm)7646円(税抜)
FH-M7130(32H、28H、157mm)8454円(税抜)
※センターロック・ローターマウント
「DEORE XT」シリーズからは3種類のペダルが登場
XCレース用に最適化されたSPDペダル「PD-M8100」。
対応クリート:SM-SH51/56
PD-M8100 SPDペダル(XC用) 1万64円(税抜)
PD-M8120 SPDペダル(トレイル用) 1万645円(税抜)
フラットペダル
PD-M8140 オフロード用フラットペダル 1万237円(税抜)
S/M サイズ、M/L サイズ
DEORE XT M8100 シリーズ
発売開始: 2019年6月14日
SLX M7100 シリーズ
発売開始: 2019年7月
AX-MT700/MT500 Eスルーアクスル(追加仕様)
発売開始: 2019年7月