ディスクロードホイール着脱の基本【スルーアクスル編】

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徐々に普及しつつあるディスクブレーキ仕様のロードバイク、いわゆるディスクロード。慣れない人が戸惑うのは、ホイールの着脱だろう。従来のリムブレーキ仕様のものと異なり“スルーアクスル”という機構が用いられており、そこがポイントとなる。しかし、基本を押さえて慣れれば簡単。今回はその基本的な使い方について特集しよう。

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そもそもスルーアクスルって何?

今回指導をお願いするのは、プロメカニックとして活躍している自転車コーキ屋店長の濱中康輝(はまなか こうき)さんだ。

東京サイクルデザイン専門学校講師/SBM講師。プロメカニックの濱中康輝さん(自転車コーキ屋店長)。MTBにも明るく、ディスクブレーキについての見識は深い

自転車コーキ屋。東京・青梅のプロショップ。ロードバイクもMTBも得意で、一般車まで扱う。幅広いスポーツバイク愛好者が集まるお店だ

さて、「そもそもスルーアクスルって一体何なの?」という人も多いだろう。はじめに、スルーアクスルの構造について簡単に学んでおこう。

「皆さん既に慣れている、リムブレーキ仕様のロードバイクに採用されているクイックリリースの機構は、レバーを倒し込んで摩擦によってホイールを固定する、カム機構でした」と濱中さん。

クイックリリースの機構

「それに対しスルーアクスルとは、フォークとフレーム(リヤエンド部分)に直接ネジが切ってある穴が空いていて、そこに1本の太い軸棒(シャフト)を通し、ネジで固定していく仕組みです(ネジで固定しないものもある※後述)。

このシャフトの端にはネジが切ってあり、反対側にはアーレンキーなどを使って締める部分がついています」。

スルーアクスルの構造を簡単に説明した画像

「前述のタイプが最も一般的なものと言えるのですが、他にもいろいろな種類があります。ネジが切られていないタイプのスルーアクスルもあったり、シャフトの太さ、ネジ切りのピッチも種類によっては異なるものもあります」。

なぜディスクロードにはスルーアクスルが用いられるのだろう?

「諸説ありますが、ディスクブレーキだとフォーク/フレームにより大きな負荷が掛かるのに対し、スルーアクスルは強い構造だからです。

また、クイックリリースだとホイールを着脱したときにホイールの中心がずれることがあるのですが、スルーアクスルだとネジで直接とめるのでずれません。これによってブレーキローターが確実にブレーキキャリパーの中心に来ます。その理由もあります」。

スルーアクスル(シャフト)の外し方

では、ここから実践編だ。まずは外し方から。

「最初に説明したようにスルーアクスルにはさまざまな種類があるのですが、今回は最もオーソドックスと言える、アーレンキーで着脱する方式のものを使って説明します」。

今回の説明で使う、アーレンキーで着脱するタイプ

「まずは、アーレンキーを挿入し、回して緩めていきます」。

アーレンキーで緩めていく

「シャフトが抜ける状態になったら、手でつかんで引き抜きます。まっすぐに引き抜くようにしましょう」。

シャフトの抜き方

「このとき、シャフトがフォーク/フレームかホイールに引っかかってすぐに外れないことがあります。その場合は無理に引き抜こうとするのはNGです。フォーク/フレーム、ホイールのハブ部分、そしてシャフト本体を壊す原因となります」。

うまく引き抜けないとき、無理に引っ張って抜こうとするのはNG

「うまく抜けないときは、ホイールをつかんで軽く左右にゆすってあげながら引き抜いてみましょう。すると、うまく引っかかりがなくなり、するっと抜けるポイントが必ず見つかるはずです」。

ホイールを左右に軽く揺すると、シャフトがスムーズに抜けるポイントが見つけやすい

スルーアクスル(シャフト)の入れ方

「外すときと同じ要領で戻します。まず、シャフトを入れていくのですが、引き抜くときと同じように引っかかる場合があります。そのときは、同様にホイールをちょっと揺すってみて、スルッとシャフトが入るポイントを見つけてください。

やはり、入らないからといって無理に押し込むと壊れる原因となります。

シャフトが入ったら、アーレンキーでネジを締めていきます。きちんとネジが締まってきていれば、ストレスなくスムーズに締められます。スムーズに締まっていかないようなら、ずれている可能性があるので、再度きちんと入れ直しましょう」。

きちんとネジを合わせること

「締め込んでいき、少し固くなったところで、軽くギュッと締めて完了です。渾身の力を込めてギュッと締める必要はありません。メーカーの指定トルクがあれば、それに従いましょう」。

最後は適切な力で締めること

ここがポイント! 外している最中のシャフトの収納

外し方・戻し方の基本は分かった。他に何か注意点は?

「クイックリリースではなかったポイントがあります。それは、シャフトを引き抜いているとき、これをどこに収納しておくか、ということです。

クイックリリースですと、クイックリリースはホイールを外しているときもハブの中に入れておけばOKでした。しかし、スルーアクスルの場合は、ホイールのハブの中に入れておくと、抜け落ちてしまいます」。

シャフトはホイールのハブに入れておくと、抜け落ちてしまう

これは“ディスクロード初心者”がやってしまいそうな失敗だ。

「こうならないように、ホイールを外して鉄道輪行したり、車に積んで移動したりするときは、必ずフォーク/フレームにシャフトを入れておきましょう。こうすれば、落として紛失しにくくなります。出先でシャフトをなくすと非常に厄介ですよ。種類によっては入手困難だったりするので、要注意です」。

ホイールを外しているときは、シャフトをフォーク/フレームに収納する

「このとき、シャフトを収納するときは、手で軽く回して締める程度にしてください。ギュッと力強く締め付けすぎると、フォーク/リヤエンドがゆがんでしまう原因となります」。

シャフトは手で回して軽く締める程度に!

スルーアクスルのシャフトはフォーク/フレームに付属するもの

ということは、スルーアクスルのシャフトとは、ホイールを買うと付属してくるものではなくて、フォーク/フレーム側に付属してくるものということ?

「そのとおり。ここもクイックリリースと大きく違う点です。

フォーク/フレーム側の規格にシャフトの規格も依存します。シャフトはそのフレーム純正品を使うようにすることをおすすめします。

なお、今回はアーレンキーを使うタイプで説明しましたが、他にシャフトを回す部分にレバーがついているタイプも割と多いです。このレバーがスポッと外れるタイプもありますよ」。

シャフトにレバーがついているタイプの例

 

以上がスルーアクスルの使い方の基本だ。基本をちゃんと守って運用していれば、すぐに慣れてしまうだろう。“ディスクロードアレルギー”の人もいるかもしれないが、ロードバイクの扱いに慣れている人なら、すんなりと覚えられるシステムだと思う。

さて、次回は引き続き濱中さんに指導を仰ぎ、【ブレーキローター編】としてその扱い方の基本を特集する。お楽しみに。