ディスクロードホイール着脱の基本【ブレーキローター編】
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徐々に普及するディスクブレーキ仕様のロードバイク、いわゆるディスクロード。慣れない人が戸惑いやすいのは、ホイールの着脱だ。前回はスルーアクスルの扱い方について特集したが、今回はディスクローターの扱い方について特集しよう。基本を押さえて、マスターだ。
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そもそもディスクブレーキの仕組みとは?
前回の【スルーアクスル編】に引き続き、今回の指南役はプロメカニックの濱中康輝(はまなか こうき)さんだ。
まず本題に入る前に、そもそもブレーキローターとは何か? というかディスクブレーキってどういう仕組みなの? ということについて、ごく簡単におさらいしておこう。
「まず、ブレーキローターとは、ホイールの中心に取り付けてある、丸い鉄の板のことです。このブレーキローターを、ブレーキキャリパーという部分(中にブレーキパッドが入っている)で挟み込むことによってブレーキを掛けるのが、ディスクブレーキの仕組みです。
リムブレーキは、ホイールのリムの部分を挟み込んでブレーキを掛けていましたが、それとは異なる仕組みですね」と濱中さん。
「このブレーキローターが従来のリムブレーキにはなかった最たるものでして、ホイールを外したり装着するときに、慣れない人はつまづきやすいのです」。
では、ディスクロードホイールの着脱時、ブレーキローターを取り扱ううえでポイントになるのは?
「まず①ブレーキローターでフレームを傷つけないこと、またブレーキローターを曲げてしまわないことです。そして②ブレーキローターを汚さないことです。
このブレーキローターがブレーキを掛けるうえで要になりますから、当然安全のためにはこの①と②が重要になるわけです」。
それぞれ詳しく教えてもらおう。①が深く関係してくる、ディスクロードホイールの外し方・装着の仕方について、②が深く関係してくる、ブレーキローターの取り扱い方の、2つの項目から説明してもらう。
ディスクロードホイールの外し方・装着の仕方
まずは外し方について。
「最初にフロントホイールで説明します。前回の記事で学んだように、まずスルーアクスルを外します」。
「スルーアクスルを外したら、ハンドルなどを持ちながら、自然とまっすぐにホイールを引き抜いてください」。
「問題は入れるときですね。ポイントは、ブレーキローターがまっすぐにブレーキキャリパーの中に入っていくように、焦らず、静かに、ゆっくりと入れていくことです。
焦って無理に入れようとすると、フォークやキャリパーのあたりに傷をつけてしまったり、それが原因でブレーキローターが曲がってしまう場合があります。注意しましょう」。
「ホイールが装着できたら、スルーアクスルを入れて締めます。これも前回学びましたね。さらに、スルーアクスルを締めたら、きちんとブレーキが掛かるか、ブレーキを掛けながらホイールを前後に揺すってチェックしましょう」。
難しいのは、リヤホイールの方だろう。
「そうです。リヤディレーラーがあってそちらに注意が行ってしまいがちで、フレームを傷つけたり、ブレーキローターを傷つけてしまいがちだからです。
まず、リヤホイールの外し方について。リヤ側のギヤをトップに入れておきます。そして、スルーアクスルを外したら、リヤディレーラーを後ろに引きつつ、ホイールを下方向に引き抜きます。これはリムブレーキと同じ手順です」。
「そして、問題のリヤホイールの装着のコツについてですね。まず、外すのと逆の手順で、リヤ側のトップギヤに、リヤディレーラーを後ろに引きつつ、チェーンを掛けます。これも、リムブレーキ仕様と同じ手順です」。
「最も気をつけてほしいのは、ここからホイールを入れていくとき。今、リヤディレーラーを引きチェーンをトップギヤに掛けることに注意が100%行っていて、ブレーキローターのことを忘れていませんでしたか? そうです、このとき同時にブレーキローターがまっすぐブレーキキャリパーには挿入されているかにも注意を払ってください」。
「このとき、ブレーキローター側を忘れていたり、うまくホイールがはまらないからといってガチャガチャと無理に入れようとすると、下の写真の部分を傷つけてしまいやすいです。当然、ブレーキローターも傷ついたり曲がったりしてしまうかもしれません」。
ホイールを外しているときは“パッドスペーサー”を入れよう!
「ホイールを外しているときに忘れずにやってほしいことがあります。それは、“パッドスペーサー”の装着です」。
「パッドスペーサーをブレーキキャリパーに入れないままうっかりブレーキを引いてしまうと、何とブレーキキャリパーが閉じきってしまい、元に戻らなくなって、ホイールを入れることができなくなります」。
ディスクブレーキならではの構造だ。もし引ききってしまったら?
「戻す方法はありますが、戻せても調整が狂ってしまうことがあるので、バイクを買ったショップへ持ち込み、修理してもらってください。命に関わる大事なブレーキですから、そこは慎重になってください」。
慣れないうちはバイクを倒立させるのもあり
バイクを倒立させるとやりやすいこともあるようだが?
「そうですね。慣れないうちは、バイクを倒立してやるのも手だと思います」。
「ただし、そのときはハンドルまわりに装着したサイクルコンピューターやライトなどを外すことを忘れずに。地面に当たって傷つけるかもしれません。
また、ボトルを入れっぱなしにしていて、ざばーっと中身が出てくるなんてことも……。こうした“二次災害”にだけは注意しましょう」。
ブレーキローターの取り扱い
続いて、ブレーキローターそのものの取り扱いの注意点、つまり“触らないこと”と“汚さないこと”についてだ。
「ブレーキローターに触って皮脂やその他油分がついてしまうと、ブレーキの効きが悪くなります。また、それだけでなく異様な音が鳴ったり、ブレーキキャリパーの中に入っているブレーキパッドの減りが異常に早くなってしまい、危険です。
ホイールを着脱するときや外している最中は、うっかり側面を触ったり、側面だけでなく端の部分を触らないように注意してください」。
ほんの少しでも触ってしまったらだめなのだろうか?
「比較的きれいな手でちょろっと触ってしまった、くらいだったら大丈夫です。実は、ブレーキローターが汚れるのがまずいのではなくて、それが原因でブレーキローターを止めるブレーキパッドが汚れてしまうのがまずいんです。ここに汚れが行かなければ、大丈夫です。
とはいえ、とにかく触らないことですね」。
“お触り防止策”はあるのだろうか?
「例えば、ホイールまわりを扱うときには、ニトリル製の薄いゴム手袋をするのが有効です。これで物理的に触らないようにできます。
他には、ホイールを外して車に積んだり鉄道輪行するときなどは、カバーを掛けておくのもいいでしょう」。
汚さないということについては?
「当然使っているうちにブレーキローターは汚れてきます。ところが、触っちゃだめだから、ということで、ギトギトに汚れたままにしておくのはNGです。しっかりとクリーニングすることが大事です」。
汚れたら、パーツクリーナーできれいにすればいいのだろうか?
「やりがちですが、パーツクリーナーの使用は避けてください! パーツクリーナーは脱脂するうえで有効なものではありますが、ものによっては不純物が入っており、制動力の低下や異常なブレーキパッドの摩耗、異常な音鳴りの原因となります。我々プロメカニックでも、パーツクリーナーの使用は慎重になりますから、一般の人がこれを使うのは避けてほしいです」。
では、汚れたらどうしたらいいのか?
「第一に、買ったショップに持ち込んで、メンテナンスを依頼してください。これはリムブレーキでも同じことですが、命に関わる慎重に扱うべき部分ですから、ここはプロに任せましょう」。
一般ユーザーが、最低限やれることはないのだろうか?
「汚れたら、きれいなウエスで乾拭きしてください。また、雨の日に乗った後は、まず水拭きで泥汚れを落とし、その後で乾拭きしてください。要は、薬品をつけないことが大事なのです」。
ショップに持ち込むべき汚れの度合いを判断する方法はあるのだろうか?
「見た目というよりは、音で判断してください。油汚れなどを吸ったブレーキパッドは、ブレーキが効かなくなる以前に、ブレーキを掛けたときに“キューン”と独特の音が鳴ります。ですから、変な音がしだしたらショップへ、ということに気をつけてもらえればいいと思います」。
今回はディスクロード用ホイールの着脱について、スルーアクスル編とブレーキローター編に分けて特集したが、ブレーキパッドについても機会を改めて特集してみたいと思う。