CYCLE SPORTS.jpが選ぶ 2020年10大ニュース・海外ロードレース編
目次
- 1. 新型コロナウイルスの影響でシーズンは中断し、UCIカレンダーは大幅に変更した
- 2. ツール・ド・フランスでスロベニアのポガチャルが最終日前日に逆転優勝
- 3. ジロ・デ・イタリアはグランツール史上初めて総合1位と2位の選手がタイム差なしで最終日を迎えた
- 4. 改訂カレンダーの変則シーズンで若手が大活躍
- 5. 世界チャンピオンになったアラフィリップの不運
- 6. ツール・ド・ポローニュの落車事故でヤコブセンが重傷を負った
- 7. ロンド・バン・ブラーンデレンでオランダのファンデルプールがヴァンアールトを打ち負かして初優勝
- 8. エヴェネプールがイル・ロンバルディアで骨盤を骨折
- 9. CCCチームが活動終了
- 10. フルームがイネオスを去り、イスラエル・スタートアップネーションへ移籍
ツールでサプライズな逆転優勝を果たしたポガチャル
2020年シーズン海外ロードレース界のニュースを振り返る『2020年10大ニュース・海外ロードレース編』。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)に翻弄されながらも、ロードレースには今年も様々なドラマがあり、新しいヒーローたちが誕生した。
新型コロナウイルスの影響でシーズンは中断し、UCIカレンダーは大幅に変更した
世界中の全てのスポーツと同様に、ロードレースも新型コロナウイルス感染症のパンデミックで大打撃を受けた1年になった。2月下旬に中東のアラブ首長国連邦で開催されていたUAE・ツアー(UCIワールドツアー)で最初の感染者が出た後、レースの延期や中止が続出。国際自転車競技連合(UCI)は、3月15日に感染拡大危険地域でのレースの中止を主催者に要請した。
2020年シーズンが再開したのは7月からだった。UCIはカレンダーを再編成し、UCIワールドツアーは8月からほぼ3カ月に集中して開催される事になった。この改訂により、今年のツール・ド・フランスは8月29日から9月20日、ジロ・デ・イタリアは10月3日から25日、ブエルタ・ア・エスパーニャは10月20日から11月8日に開催された。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年シーズンにはモニュメントレースの1つであるパリ〜ルーベ(フランス)や、アムステル・ゴールド・レース(オランダ)は開催されなかった。UCIワールドツアーは最終的に15レースが中止になり、開催されたのは21レースだった。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックでシーズンが中断されていた期間には、本当にシーズンが再開できるのかも分からず、ツール・ド・フランスが開催できなければ、シーズンの終わりには多くのチームが消滅してしまうかもしれないとまで噂されていた。しかし、UCIや主催者の努力により、予想以上に多くのレースが新型コロナウイルスと闘いながら開催された事で、ロードレースというスポーツは救われた。
ツール・ド・フランスでスロベニアのポガチャルが最終日前日に逆転優勝
新型コロナウイルス流行の第2波の真っ只中で開催されたツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、最終日前日に行われたラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ頂上ゴールの個人タイムトライアルで、スロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)が、同郷のプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ・ヴィスマ)を逆転し、サプライズな総合優勝を果たした。彼はまだ21歳でツール初参加だった。
■敢闘賞:MARC HIRSCHI (TEAM SUNWEB / SUI)
ジロ・デ・イタリアはグランツール史上初めて総合1位と2位の選手がタイム差なしで最終日を迎えた
オープンになったジロの総合優勝争いは、総合首位のジャイ・ヒンドリー(チームサンウェブ/オーストラリア)と、2位のテイオ・ゲーガンハート(イネオス・グレナディアズ/英国)がタイム差なしで最終日の個人タイムトライアルを迎える珍しい展開になった。そのグランツール史上初めての闘いを制したのは、25歳のゲーガンハートだった。
改訂カレンダーの変則シーズンで若手が大活躍
2020年のツールは21歳のタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)が初優勝し、ジロも25歳のテイオ・ゲーガンハート(イネオス・グレナディアズ)が初優勝したが、8月からの3カ月間に集中したUCIワールドツアーのレースでは、ベテランのトップ選手よりも、まだあまり名前を知られていなかった若手選手の活躍が際立った。
ジロでは第3ステージのエトナ山ステージで総合首位に立った22歳のジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ/ポルトガル)が善戦し、15日間マリア・ローザを守って注目を浴びた。アルメイダが遅れたラーギ・ディ・カンカノの頂上ゴールで区間優勝した24歳のジャイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)は、ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)の山岳アシストだったが、最後はゲーガンハートと総合を争う活躍を見せた。
■ツール・ド・フランス2020 第12ステージはヒルシが逃げ切りプロ初優勝
世界チャンピオンになったアラフィリップの不運
イタリア北部イモラで開催された2020年のUCIロード世界選手権大会は、フランスのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイッステップ)が独走で逃げ切り、初優勝を果たした。しかし、世界チャンピオンになったアラフィリップには、信じられないような不運が待ち受けていた。
アルカンシエルを着て参加したリエージュ~バストーニュ~リエージュ(UCIワールドツアー)で、アラフィリップは小集団でのゴールスプリントで勝利を確信して両手を上げたが、車体を投げ出してゴールしたスロベニアのプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ・ヴィスマ)が先にフィニッシュラインを通過していた。しかも、アラフィリップは斜行で降格処分になってしまった。
ツール・ド・ポローニュの落車事故でヤコブセンが重傷を負った
8月に開催されたツール・ド・ポローニュ(UCIワールドツアー)第1ステージのゴールスプリントで大落車事故が発生し、オランダチャンピオンのファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)が頭部と顔面に重傷を負った。この事故の原因を作ったオランダのディラン・フルーネウェーヘン(チームユンボ・ヴィスマ)には、UCIの懲罰委員会から9カ月の活動停止処分が課された。
ロンド・バン・ブラーンデレンでオランダのファンデルプールがヴァンアールトを打ち負かして初優勝
オランダのマテュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)とベルギーのウァウト・ヴァンアールト(チームユンボ・ヴィスマ)は、長年シクロクロスでライバルとして競い合っていたが、それは2人がロードレースに転向してからも変わらない。
10月に開催されたロンド・バン・ブラーンデレン(ツール・デ・フランドル/UCIワールドツアー)では、初優勝をかけた一騎打ちのゴール勝負が競われ、栄光を手にしたのはファンデルプールだった。ヴァンアールトは8月にイタリアのストラーデ・ビアンケ(UCIワールドツアー)とミラノ~サンレモ(UCIワールドツアー)で優勝していたが、母国最大のタイトルは永遠のライバルに奪われてしまった。
エヴェネプールがイル・ロンバルディアで骨盤を骨折
ベルギーのレムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、2020年で最も輝く若手選手の1人になるだろうと期待されていたが、8月に開催されたイル・ロンバルディア(UCIワールドツアー)で事故に遭い、骨盤を骨折してしまった。
エヴェネプールはソルマーノ峠の下り坂で石橋の壁に激突し、谷底へ落下。不幸中の幸いで最悪の事態にはならなかったが、再開した2020年シーズンはこの怪我で棒に振ってしまった。彼は今年、ジロ・デ・イタリアでグランツール・デビューする予定だった。
CCCチームが活動終了
ポーランド登録のCCCチーム(UCIワールドチーム)は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックでタイトルスポンサーであるCCC社が経済的に大きな打撃を受け、2020年シーズンで契約を終了した。米国人のジム・オコビッツ会長はCCC社に代わる新しいスポンサーを見つけられず、チームの運営母体であるコンティニュアム・スポーツをベルギーのシルキュス・ワンティゴベール(UCIプロチーム)に売却し、チームは実質活動終了となった。
フルームがイネオスを去り、イスラエル・スタートアップネーションへ移籍
英国のクリストファー・フルームは、2020年シーズンで英国のイネオス・グレナディアズ(UCIワールドチーム)を去り、イスラエルのイスラエル・スタートアップネーション(UCIワールドチーム)へ移籍する。