実は正解がない!? ロードバイクの手信号
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ロードバイクで仲間と集団走行(グループライド)をしているときや、周囲の車・自転車・歩行者に対して曲がる方向を伝えるときなどに手信号(ハンドサイン)を出すことは重要だ。ところが、人によって出し方が違ったり、うまく相手に伝わらなかったりする。結局、手信号に正解はあるのだろうか? プロコーチにレクチャーしてもらった。
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正解はない。大事なのは相手に伝わること
今回レクチャーしてもらうのは、「ロードバイクでの先頭交代の基本とルール」の記事に引き続き、自転車コーチの須田晋太郎(ウォークライド)さんだ。
まず、手信号に正しいもの、あるいはルールはあるだろうか?
「実は、長年自転車選手やコーチをやってきましたが、どうも手信号に正解はないようなんです。地域やチームによって、文化といいましょうか、いろいろなバリエーションがあるんです。
もちろん、道路交通法で定められた手信号はありますが、結局それを実践している人はほとんどいないし、まず相手に伝わりませんよね。
そこで、ポイントとなるのは”相手に伝わること”です。どのサインが正しいということではなく、それが正確に伝わればいいのです。ただし、そのためには事前の打ち合わせが必須です。いつも一緒に走っている顔なじみの仲間なら問題はないと思いますが、例えば初対面の人と走るときは、必ず走り出す前に、基本的な合図の出し方とそれが示す意味を確認し合う必要があります」と須田さん。
なるほど。例えば、”止まれの合図はこれが正統なものだ”などと信じている人がいるかもしれないが、それが絶対ではなく、相手にきちんと意思や情報が伝わることこそが大事なのだ。
とはいえ、多くの人に伝わりやすいサインは?
相手に意思・情報が伝わることこそ大事。それは分かったが、とはいえ多くの人に伝わりやすい、全国共通的なサインはあるのだろうか?
「はい、あると思います。では、多くの人に伝わりやすいサインをまずは紹介しましょう」。
“止まれ” “止まります”
「まず、最も多く使う”止まれ” “止まります”の合図です。これは、”私の場合は”ということとなりますが、手を後ろに出すやり方がいいと思います。」
「このやり方なら、ほとんどのサイクリスト、そして車・シティサイクル等に乗っている人・歩行者にも伝わりやすいでしょう。」
“減速します”
「”止まれ”に関連して、”減速します” “減速せよ”を伝えるサインもあります。私の場合は、手でボリュームを下げるようなジェスチャーをします。これも多くのサイクリストに伝わりやすいやり方だと思います」。
“右折します” “左折します”
「そして、右左折の合図です。腕を曲がる方向に伸ばして指をさします。これはまず100%伝わる方法ですね」。
“注意せよ”
「例えば進行方向の路面に段差があったり障害物が落ちているとき、それを後方に伝えるために、”注意せよ”というサインを出します。注意を促したいものがある方向を指差せばOKです」。
“右に寄れ” “左に寄れ”
「あと、例えば路肩に路駐している車があるときなどは、後続に”右に寄れ” “左に寄れ”の合図を出します。私の場合は、壁を押すようなジェスチャーを出します」。
「ただこの方法ですが、例えば上の写真の場合は、右に寄るの? 左によるの? どっち? と指摘されたときがあります。ですから、最初に説明したように、やはり走り出す前に共通の認識を確認し合っておくことが大切です」。
手が離せないとき
「この他に、路面が荒れていたりして手を離すのが難しいときにやるサインもあります。
ロードバイクでの先頭交代の基本とルールの記事でも紹介しましたが、先頭交代をするときは手を前方に送る合図が一般的です。これを手を離さないで、肘をくいっと突き出すやり方があります」。
他に、路面に段差があったり、荒れているときは、ハンドルに手を置いたまま両手の指をぱっぱっと開いて伝える方法もあります」。
“止まれ”には結構バリエーションが
地域やチームによって出し方が違うことがあるということだが、今まで須田さんが見てきた中で、「これは最初は意味が分からなかった」というサインはあるのだろうか。
「そうですね……。”止まれ”には結構バリエーションがあると思います。かつて、手のひらを背中に出して、グーパーする人を見たことがあります。これは一体何を意味しているんだろうと、最初は分かりませんでした(笑)。途中から分かったんですが、それは”止まれ”を意味していたんですよ
ね」。
「ベテランのサイクリストであればどんなハンドサインを出されても、”たぶんこういうことだろう”と、理解することができると思います。しかし、相手が初心者だと、まったく伝わらないこともあると思います。
ですから、繰り返しますが何が正しいということはないので、やはり事前にどのサインがどんな意味を表すか、確認し合っておくことが大事だと思います」。
いかがだったろうか。手信号には、もちろん全国的に伝わりやすいものは存在するが、”絶対に正しいもの”はなく、大事なのは相手にきちんと意思・情報が伝わること。これを念頭において、安全で楽しいサイクリングライフを送ってほしい。