ロードバイクのドロップハンドル活用術
目次
ロードバイクの大きな特徴はドロップハンドルを装備していることだ。いわゆる“ブラケット”“下ハン”“上ハン”と、さまざまなポジションを取ることができが、あなたはしっかりと活用できているだろうか? 活用できればレースからロングライドまで、より速く・楽に走れるようになる。今回は、そんなドロップハンドルの活用法を特集する。
動画で見たい人はこちら
ドロップハンドルはブラケットばかり持つ人が多い
今回指導をしてもらうのは、おなじみUCIコーチでプロサイクリストの小笠原崇裕さんだ。
そもそも、なぜロードバイクのハンドルはこんな形をしているのだろうか?
「ドロップハンドルはいろいろなポジションを取ることができるので、ロードバイクで長距離を走るうえでさまざまなシチュエーションに対応でき、より楽に・速く走ることができます。
また、ポジションを変えることで体にかかる負荷も変えることができるので、リラックスして走りたいとき・頑張って走りたいときなど、状況に応じて走り方を変えるのに適しています。
と、このようにさまざまな状況に対処できるようにこんな形をしているわけなんです。
ただ、一般のサイクリストは“ブラケットばっかり持っている”人が多いと思います。下ハンドルをうまく使いこなせていないんです。また、同じブラケットでも実はさまざまなポジションを取ることができますが、そこまで活用できている人も少ないですね。もったいないです」と小笠原さん。
なるほど。では、各ポジションの基本と、それぞれをどんなシーンで使うといいのかなど、詳しくを教えてもらおう。
ドロップハンドルのポジションその1〜ブラケット
まずは、最も基本的なポジションのブラケットポジションについて。
「最も持つことが多く、さまざまな状況に対応できるオールランドかつ基本的なポジションです。
まず、ハンドルの持ち方の基本ですが、小指と薬指をブラケットとハンドルの間に入れておき、人差し指と薬指を軽くブレーキレバーにかけておくと良いです(上の写真)。
ブレーキレバーに2本の指をかけておくのは、公道を走っているといつとっさにブレーキをかけるか分からないので、そうしたときにいつでも対応できるようにするためです。
小指と薬指は、路面からの衝撃で手がすっぽ抜けることを防止する意味でかけておきます。また、スポーツにおいては“何かを握るときは必ず小指から”という考え方があり、うまく体を使う意味でも重要です」。
「ブラケットポジションは、平地・上り・下り、そしてリラックスして走るときから速度を上げて走るときまで、あらゆる状況で使うことができます。肘を伸ばし気味にしてあげると、より呼吸が楽になって、リラックスして走ることも可能です」。
「ここからさらに肘を曲げると前傾が深くなり、エアロポジションを取ることができます。高い速度域で走るときに有効です」。
「ブラケットの握り方にもバリエーションがあります。上の写真のように、ブレーキレバー根本のブラケット先端部分を握り込んでしまうと、前腕を水平にしてハンドルバーに乗せやすくなり、長時間エアロポジションを取るのが楽になります」。
「また、ブラケットの場合は小指をしっかりとブラケットとハンドルバーの谷間にかけておくように、と説明しましたが、路面がきれいで交通状況がクリアなときなどは、少し離してリラックスして走るのは間違いではありません」。
「ブラケットポジションのときに避けてほしいのは、親指をブラケット先端部に乗せることです。プロ選手がこのようにしているのを見ることがありますが、一般のサイクリストは真似しない方が良いです。突然路面に段差が現れたときなど、手がすっぽ抜けてしまう危険性があります。ブラケットポジションのときは、親指は常に内側に入れましょう」。
ドロップハンドルのポジションその2〜下ハンドル
次に下ハンドル部分を握るポジションについて。
「下ハンドルは、サイクリングの場合は路面が荒れた状況や下りで使うと有効です。しっかりとハンドルバーを握ることができるポジションなので、そうしたときに手が外れにくく、より確実なハンドル操作を行うことができるためです。また、レースではスピードを上げて走ったり、スプリントやアタックをかけるときにも多用します。
使うときのポイントは、路面が荒れたり下りが始まったり、レースならアタックやスプリントが始まるな、と思ったときに早めに持ち替えておくことです」。
「下ハンドルを握るときのポイントは、小指をしっかりと握っておくことです。下ハンドルの場合は、小指を離すととっさの状況で手が外れやすくなります」。
「下ハンドルの場合も、やや肘を伸ばし気味にしているパターンと、肘を深く曲げて前傾をより深めるパターンでバリエーションがあります」。
「下ハンドルポジションのときの注意点は、前傾が深くなるので目線が下を向きがちになりますが、安全のためにしっかりと前方を見ることです。顎を少し上げるくらいの気持ちがいいと思います」。
ドロップハンドルのポジションその3〜上ハンドル
最後に、ハンドルバー上部、いわゆる上ハンドルの部分について。
「最も上体が起きて呼吸が楽になるので、特に上りでリラックスして走りたいときに使います。ただ、ブレーキレバーにすぐ指をかけられないので、交通状況がクリアなときにだけ使うようにしてください」。
「注意点としては、親指をハンドルバーの内側(自分側)へ入れて握っておくことです。これを外側へ出しておくと、段差や衝撃で手が外れやすくなります。
ただ、親指を内側に入れるとハンドルを握りこみすぎてしまうこともあるので、そうならないようにも注意です」。
「上ハンドルのときは、小指(と他の指)を離してさらにリラックスして走るのは間違いではありません。ただ、路面状況が良く、交通状況がクリアなとき限定にしてください」。
レースに出ない、ロングライド派でも下ハンドルは必要?
下ハンドルを使えていない人が多いということだったが、ここはレースに出ない人は関係ないのではないだろうか?
「いいえ。先に説明しましたが、下ハンドルは路面の悪い場所や下り坂で安定した走りをするのに有効です。ロングライドなら、下り坂や荒れた路面に出くわすことは多いはずです。そんなとき、下ハンドルを活用できるのとできないのとでは、安全性も疲労度も違ってくるはずです。
下ハンドルを使うのが苦手という人は、意識して使う時間を作ってほしいと思います。最初は短い時間から始めて、徐々に使える時間を伸ばしていくと良いでしょう。いざというときに使えるようにしておくのが大切です」。
改めて、ドロップハンドルとはこんなにも多彩なポジションを取れるアイテムなのだと、驚かされた。これはクロスバイクなどに採用されるフラットハンドルバーにはない大きなメリットだ。ぜひ、使いこなせるようになってほしい。