残暑を涼しく・快適に走る4つのロードバイクテクニック〜前編
目次
8月も終わりに近づきやや暑さも和らいできたが、まだまだロードバイクに乗るには暑い時期が続く。そこで、残暑を涼しく・快適に走るための4つのテクニックを、前編と後編の2回に分けて紹介しよう。自身もサイクリストである医師に話を聞いた。
鍵は熱中症とパフォーマンス低下を防ぐこと
今回レクチャーしてもらったのは、RoppongiExpress(ロッポンギエクスプレス)所属の市民レーサーであり、慶應義塾医学部で研究医として活躍する、國見洋光医師だ。医学的見地とサイクリストとしての経験から、暑い時期のライドを乗り切る技術を教えてもらう。
夏のように気温が高く、日差しの強い状況で走るときにポイントとなるのは何なのか。
「まず、暑く日差しの強い時期は、朝・夕の涼しい時間帯を選んで走ることが大切です。とはいえ、それは既に皆さん当然のこととして知っていると思います。そもそも近年の夏は朝夕でも気温がかなり高いですし、日中走る場合もあるでしょう。そこで今回は、”気温が高く日差しの強い状況で走るときに共通するテクニック”という観点でお話しましょう。
気温が高く、日差しの強いときにロードバイクで快適に走るためのポイントは、ずばり熱中症とパフォーマンス低下を防ぐことです。これは、暑さで体温が上がりすぎる・水分やミネラルが失われすぎる、また間接的には強い日差しで体力が奪われたりエネルギー補給がうまくいかないことによって起こります。
熱中症とは、暑熱障害による症状の総称です。例えば、初期症状では、倦怠感・頭痛・異常発汗・吐き気といったことが起こります。体がだるいとか、ちょっと頭が痛いなと感じていれば、それは既に危険な状態というわけです」。
「ここからさらに症状が進行すると、血圧低下による意識障害、低ナトリウム血症によるけいれんが発生する可能性があります。意識障害は落車と事故に直結しますから、自転車では特に注意です。またけいれんしたら、当然走りがままならないですよね」。
「そこで、この熱中症とパフォーマンス低下を防ぐためには、次の4つのことが大切です。
1.クーリング
2.補給
3.日焼け対策
4.ウェアリング
です」。
それぞれ、詳しく教えてもらおう。
1.クーリング
最初に、物理的に体を冷やすクーリングについてだ。
「これには2つポイントがあります。1つは”外から冷やす”こと、もう1つは”中から冷やす”ことです」。
外から冷やす
「これは皆さん最もイメージしやすく、取り組みやすい方法でしょう。
かつては頭や首などに優先して水を掛けて冷やせ、といったことが言われていましたが、実は大切なのは体表面全体をまんべんなく冷やすことです。これは近年の研究でその効果が証明されてきています。
これにはライド中水を掛けて冷やすのと、涼しい場所で休んで冷やすという2つのやり方があります。
水を掛ける場合、肝となるのは気化熱によるクーリングです。できるだけ体表面全体に水を掛けて、乾いたらまた掛ける、というのを繰り返すのが効果的です。頭・首など、体の上側から掛けると自然と胴体に滴りますので、ライド中にはやりやすい方法ですね。あとは腕・脚に個別に掛けてあげましょう」。
「涼しい場所で休むのは、結果として体全体を冷やすことになります。例えばコンビニ休憩をするときそこにイートインがあれば、合わせて少し時間をとって涼んでいくと良いでしょう」。
中から冷やす
「近年注目が集まっているのは、体の中からも冷やすことです。外から冷やすのと同じく重要であるとされています。
中でも特に注目されていて、今回紹介したいのは”アイススラリー”というシェイク状の飲み物です。
これは、冷凍したスポーツドリンク3に対し冷蔵したスポーツドリンク1を混ぜ、ミキサーでシェイク状にしたものです。氷の粒が小さいほど、冷却効果が高まるとされています。ツール・ド・フランスなど、本場レースでも取り入れられている方法なんです」。
アイススラリーを飲みながら走るのは難しいと思うが、取るタイミングやコツはあるのだろうか。
「実際のライドでは給水の方が優先されますので、取るのは難しいです。ですから、お勧めは止まって休憩を取るタイミングです。
例えば、周回コースで練習をしているような人なら、拠点となる駐車場に車を停めておいて、あらかじめ作っておいたアイススラリーをクーラーボックスに入れておく、といった方法ができます。休憩で拠点に寄るときに取るのです。
また、最近はコンビニで手に入る商品も発売されています。コンビニ休憩のときに、これらを買って飲むのも手です」。
2.補給
続いて補給。クーリングと双璧を成す重要なテクニックだ。補給というと水分の補給とエネルギーの補給の2つがあり、暑いときは水分補給が真っ先にイメージされるが……?
水分補給に目が行きがちだが、エネルギー補給も超重要!
「実は、気温が高いからといって消費カロリーが減るわけじゃないんです。暑さや強い日差しに対処するために体に強い負荷が掛かっているわけですから、むしろエネルギー消費は激しくなります。しっかりカロリーも補給していかないと、走れなくなってしまいます。
そこで、暑くて食欲が落ちがちですが、大切なのはどうにかカロリーのあるものを喉に通すことです。水分量を多く含んだジェル系食品などをうまく活用しましょう」。
水分とミネラルの同時補給を
「体温を冷やすには、汗をかき、その汗の気化熱で体を冷やすことが大切です。そのためには、多くの水分を補給しなければなりません。
しかし、その一方で汗でどんどんミネラル分も失われるので、低ナトリウム症候群になる可能性があります。ですから、水分と同時にミネラル分も取ることが大事です。①内容 ②温度 ③量の3つの観点で気をつけてください」。
①内容/ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムも複合的に取る
「これら4つのミネラル分が複合的に取れるドリンクだと望ましいです。カロリーも一緒に取れるとなおのこといいですね。お勧めはマグオン®で、こうしたスティックタイプで水に溶かせるアイテムが便利です」。
②温度/吸収効率がいいのは5〜15℃
「このくらいの水温だと吸収効率が良くなることが実証されています。同時に、体を内側から冷やす効果も期待できます。保冷ボトルを活用するなど、工夫して水温を保ちましょう」。
③量/1時間でボトル1本。ワンプッシュずつ
「体の水分処理力は800ml/時とされています。ですから一気にがぶがぶ飲んでも吸収しきれず、不快感や水中毒という症状につながります。
よって、10分〜15分に1〜2回、100mlくらいずつこまめに飲むことが大事です。目安としては、1回分はボトルをワンプッシュする程度で、500〜600mlのボトル1本を1時間で空にするペースです」。
3.日焼け対策 4.ウェアリングは後編にて!
後編では日焼け対策とウェアリングについて紹介する。
残暑を涼しく・快適に走る4つのロードバイクテクニック〜後編