ピナレロ・プリンス ディスク ドグマ譲りのピュアレーサー アサノ試乗します!その32
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ピナレロのレーシングバイクでドグマの弟分的存在のプリンスシリーズが、2021年モデルでモデルチェンジ。ドグマF12のテクノロジーを継承するアップデートが行われた。T900カーボンフレームの上位モデル・プリンスFXとT700カーボンフレームのプリンスがラインナップされるが、今回はプリンスのディスクブレーキ仕様・プリンスディスクをチェックする。
プリンス ディスク-往年の名車の命脈を保つピュアレーサー-
ピナレロ・プリンスは、同社の2021年モデルではドグマ、プリンスFXに次ぐ第3のレーシングバイクという位置づけだ。そのルーツは古く、1998年にまで遡る。
初代プリンスはアルミフレームにカーボンシートステーを組み合わせた世界初のカーボンバックフレームで振動吸収性を高めて快適性を向上させたエポックメイキングなモデル。その後多くのブランドがカーボンバックフレームを発表するなど、トレンドセッターとしての役割を担った。
また、2代目プリンスSLでは、現在ピナレロのアイコンにもなっているONDA(オンダ)フォークを初採用。これをベースに2003年に初代ドグマが誕生しており、ドグマのルーツとも言えるモデルだ。
その後、2008年には東レのカーボンをフレーム素材に使ったプリンスカーボンが登場。2014年にドグマ65.1の金型を利用して作られた4代目、2018年にドグマF10のテクノロジーを継承した5代目が登場し、2021年モデルではドグマF12のテクノロジーを継承する第6世代へとモデルチェンジを果たした。
基本的なジオメトリーは、ドグマよりもヘッドチューブが長めではあるが、フレーム各部の造形はドグマF12のテクノロジーを踏襲。
例えば、ダウンチューブの形状は、ドグマにも採用されているカムテールのフラット面の中央部が凹型にくぼんだコンケーブデザイン。このくぼみにボトルケージが収まり、ボトル装着時にフレームとの隙間を少なくすることで空気抵抗を低減する。また、ダウンチューブ上部にはDi2のジャンクションを設置するためのEリンクが設けられている。
ほかにも、フロントフォーク先端にフォークフラップという小さなフィンが設けられ、整流効果を高めていたり、ダウンチューブとフォークのより一体感を高まったデザインを採用してフロントホイールとの隙間を減らすなど、空気抵抗削減のためのデザインを随所に施している。もちろん、オンダフォークや左右非対称フレームなど、ピナレロのアイコンと言えるデザインも踏襲している。
プリンス ディスク-細部-
プリンス ディスク -インプレッション・比較的手が届きやすいピナレロの最新鋭レーサー-
オンダフォークに左右非対称フレームを採用し、一目でピナレロのバイクと分かる個性的な外観。ケーブルもフル内装で、見た目も非常にクリーンで洗練されている。ペイントにも高級感がある。プリンスを単体で遠めで見る分には、よほど詳しい人でもない限り、プリンスのロゴがなければピナレロの最高峰のレーシングバイク・ドグマF12と見分けが付かないのではないだろうか。実際にはドグマの方がヘッドチューブが短いなどジオメトリも微妙に違うのだが、そんな違いが分からないほどにプリンスはドグマF12と似ている。……なんて言うとドグマのユーザーに怒られそうだが、それだけプリンスは高級なバイク然としたオーラをまとっているとも言える。
今回試乗したプリンスは、ドグマ、プリンスFXに継ぐ第3のレーシングバイク。フレーム素材は東レT700カーボンで、ドグマと比べるとやや剛性感がマイルドに感じる。オンダフォークの優れた振動吸収性とも相まって、レーシングモデルとしては快適性も高いと感じる。ホビーレーサーにとっては適度な剛性感で、ロードレースはもちろん、ロングライドでも硬すぎて脚にくるなんてことはなさそうだ。
走りは軽快そのものだ。上りではレーシングバイクらしい軽快な走りが楽しめる一方、下りでは舗装路の微妙なアンジュレーションをオンダフォークがうまくいなしてくれるからか優れた安定性を発揮する。ハンドリングに過剰なクイックさはなく、かといって直進安定志向が強すぎるわけでもないので、狙ったラインをトレースしやすい。ゼロ発進から高速域までよどみなく加速して、気持ちよく上って下れて、コーナーも意のままに操れる。クセがなくて本当に乗りやすく、人車一体感を味わえる気持ちいいバイクだ。
プリンスシリーズは、完成車購入時に好みのホイールにアップグレードして購入できるホイールアップグレードプログラム対象モデルで、試乗車はアルテグラの機械式変速搭載モデルに基本ホイールとなるフルクラムR-800をアッセンブルした基本仕様。この仕様でも走行性能は申し分なく、価格も50万円台前半なので、ピナレロのレーシングバイクとしてはかなりお値打ちな部類と言える。予算が許すならホイールをフルクラムのウインドシリーズやカンパニョーロのボーラシリーズにアップグレードすれば、それだけでハイエンドレーサークラスの戦闘力を獲得できるだろう。
対応タイヤ幅は最大28mmまで。オンロードを走るのに特化したレーシングバイクといえるが、レースはもちろんロングライドもこなせるので守備範囲は広いといえる。ただし、太めのタイヤを履かせてロングライドをより快適に走りたいとか、ちょっとしたグラベルも対応できるようにしたい——なんて乗り方には対応しない。1台で何役もこなせるバイクがほしいなら、後に紹介するパリの方が向いている。
プリンスのターゲットユーザーは、ピナレロの唯一無二のルックスに惚れ込んでいて、レースをメインに楽しみつつ、ハイスピードでロングライドも楽しみたいというようなサイクリストだろう。
プリンス ディスク-スペック-
価格:40万5900円(フレームセット)、70万2900円(コーラス12Sディスク完成車)、53万7900円(アルテグラ11Sディスク完成車)、48万2900円(105 11Sディスク完成車)
素材:ハイストレングスカーボン T700UD TiCRケーブルフル内装
フロントフォーク:オンダ フォークフラップ ハイストレングスカーボンT700
ボトムブラケット:イタリアン
最大タイヤサイズ:700×28C
サイズ:43、46、49、51.5、53、54.5、56、58(C-C)
※プリンスディスクフレームセットには前後スルーアクスル、フルカーボン専用シートポスト付属