ロードバイクで自分に最適なサドル高の出し方

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ロードバイクで最適なサドル高の出し方

ロードバイクで自分にとって最適なサドル高を出すというのは、多くの人にとって課題だ。もちろんフィッティングやプロコーチの指導を受けられればいいのだが、それが難しい人も多いだろう。そこで、今回はできるだけ自力で理想のサドル高に近づくための方法について特集しよう。

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ベストなサドル高を自力で出す方法はある!?

ロードバイクでお尻の痛くならない正しいサドルの座り方」の記事に引き続き、今回もUCIコーチでプロサイクリストの小笠原崇裕さんに指導をしてもらう。

UCIコーチ/プロサイクリストの小笠原崇裕さん

UCIコーチ/プロサイクリストの小笠原崇裕さん。全日本MTB選手権アンダー23優勝、エクステラ全日本8年連続優勝など、アスリートとしても輝かしい成績を持つ

これが自分にとって最適なサドル高だ!という数値を出す、“ズバリな方法”はあるのだろうか?

「残念ながら、現在のところそうした方法は発見されていません。やはり、自分に最適なサドル高を出すには、プロのコーチやフィッターに指導を受ける必要があります。しかし、それが難しい人も多いでしょう。

そこで、昔からよく言われている方法ではありますが、できる限り自分でベストポジションに近づくためのアプローチ方法というものはあります。今回はそれをレクチャーします」と小笠原さん。それは朗報だ。詳細について教えてもらおう。

基本1 大きくサドル高が外れていないかチェック

「ビギナーで自分に合うサドル高が皆目見当もつかない人はもちろん、既にある程度乗り込んでいて“だいたいこれくらいかな”というサドル高を見つけている人も含めて、まずは大きく自分の体格から外れていない、ざっくりとした目安となるサドル高を確認しましょう。方法は次のとおりです」。

自分の体格からざっくりとした目安となるサドル高を出す方法

自分の体格からざっくりとした目安となるサドル高を出す方法

「まず、シューズを脱いだ状態で固定式トレーナーにセットしたバイクにまたがり、クランクをシートチューブの延長線上にまっすぐ降ろします。そして、ペダルの表側(クリートをはめる側)にかかとか軽く着き、膝が伸びきらずに軽く曲がり、かつお尻がサドルから下に落ちないサドル高に合わせます。これがざっくりした、“大きくは外れていないあなたのサドル高”です。

膝が伸びきっていたり、かかとをペダルに着けるためにお尻がサドルよりも下がっている状態だと、サドルが高すぎです。

この状態を基準として、サドルを上げたり下げたりして、ベストに近づける作業をしていきます」。

基本2 悪いペダリング動作が出ていないかチェック

「次に、悪いペダリング動作が出ていないかチェックしていきます。見るポイントは3つです」。

サドルが高すぎるエラー動作1

足首が進行方向側に伸びて爪先が下を向いてしまっていないか確認

「1つ目は、足首が進行方向側に伸びて、爪先がペダリングのたびに下を向いていないかどうかです。こうなっていると、サドルが高すぎる可能性があります。高すぎるから足首が伸びてしまうわけです」。

サドルが高すぎるエラー動作2

足が下死点に来たときに骨盤が下に沈み込む動きが出ていないか確認!

「2つ目は、足が下死点に来たときに骨盤が下に沈み込む動きが出ていないかです。これもサドルが高すぎる証拠です。サドルが高すぎて脚が下に引っ張られてしまっているのです。このような動きになっている人は割と見受けられます」。

上死点で膝が開いてがに股になっていないか確認!

上死点で膝が開いてがに股になっていないか確認!

「3つ目は、上死点に来たときに膝が開いてがに股になっていないかです。この場合、サドルが低すぎる可能性があります。サドルが低すぎるので股関節が上死点で詰まり気味になり、それで膝が開いてしまうためです。また、前腿が疲れやすくもなるので、前腿ばかり疲れが出る場合もサドルが低すぎる状態の可能性があります。

以上の3つの悪い動作が出ていたら、それが出なくなる位置までサドルを上げ下げして調整してください」。

基本3 1mm~2mm単位で煮詰めていく

上死点と下死点をスムーズに通過できているか確認する

上死点と下死点をスムーズに通過できているか確認する

「ここまでで高すぎず・低すぎず、極端に悪いペダリング動作が出ないポイントを出したところで、次はより良い高さへ煮詰めていく作業を行います。見るポイントは、上死点と下死点をスムーズに通過できているかです。

サドルが高すぎる場合は、脚が引っ張られることで下死点にきたときに若干脚が伸びきって引っかかるというか、ぎくしゃくする動作が出ます。同じように、上死点に来たときには逆脚が下死点に来てぎくしゃくした動作が出ているので、それに引っ張られてぎくしゃくします。

この動作が出ない位置まで、1mm~2mm単位で高さを煮詰めてください。もちろん、先の項目で確認した爪先が下を向いてしまう、骨盤が沈み込む動作が出ていないかもチェックしてください」。

スマホなどで動画を撮って確認しよう

「なお、こうした悪い動作が出ていないか確認するには、三脚にスマートフォンやデジカメなどをセットし、自分のペダリングしている姿の動画を撮って確認すると良いです。誰かに協力してもらって撮ってもらうのでももちろん構いません」。

30分~1時間乗ってみて問題なさそうなら数日間その高さで試す

「30分~1時間ペダリングして痛みやぎくしゃくした動きが出ていないなら、まずはそのサドル高が仮のベストということとなります。

そこまでいったら、その状態で2~3日乗ってみてください。強度を上げ下げして走ってみるのが理想です。痛みやぎくしゃくした動きが出ていないなら、その高さでまずはOKということとなります。そして1週間走ってみて何も問題がなければ、それが現状のベストです」。

煮詰める際はちょこちょこいじらないこと

「この段階になったら、“違うな”と思ってものの数分で高さをいじらない方が良いです。1日か2日は乗ってみてください。また、一気に1cmだとか大きく動かすことも避けましょう。1mm~2mmの範囲を守ってください」。

ここに注意!その1 サドルが高すぎる人が圧倒的に多い!

ここまでの説明から、“ベストなサドル高を探し当てる”というよりは、“一つ一つだめな動作が出ないように潰していき、何も問題がない高さを探る”と言うべき作業だということが分かる。

それに対し、「そのとおりです」と小笠原さん。ちなみに、サドルが高すぎる人が多いのか、それとも低すぎる人が多いのか?

「ほとんどの人が、サドルが高すぎる状態だと思います。なので、多くの人にとって、問題のある動作が出ない高さまで下げていく作業になるでしょう。

サドルを高くセットしてしまう要因としては、サドルが高い方がよくペダリングできるという感覚に陥りやすいということと、見栄を張ってサドルを高く見せようとしたり、シートポストに入っているロゴが全部見えるようにしたい(笑)、と思ってしまうことがあるのではないでしょうか」。

耳が痛い……。

ここに注意!その2 高すぎるよりはちょっと低めの方がいい

「一般のサイクリストの皆さんに気をつけてほしいのは、とにかくサドルを高くしすぎないようにすることです。サドルが高すぎると痛みや障害が生まれやすくなります。一般のサイクリストにとっては、痛みや障害が出ず、長く自転車スポーツを続けられることが重要です。ですので、サドルは高すぎるよりはちょっと低めくらいの方が良いです。

ちなみに、まったく同じ股下寸法でまったく同じ足の大きさの人が2人いたとしても、その人の筋力と柔軟性、またペダリングスキルによってサドル高は全然違ってきます。筋力・柔軟性・スキルが高い人は、よりサドルを高くセットできる傾向があります」。

非常に深い。サドル高を探る作業は、まさに“科学”だ。

基本4 サドル前後位置のセッティング

サドル前後位置のセッティングは?

サドル前後位置のセッティングは?

サドル高と絡む重要な項目として、サドル前後位置がある。これはどう考えたらいいのだろうか?

「サドル前後位置には基本的なセッティング方法があります。まず、バイクにまたがってクランクを地面に対して水平にします。このとき、“膝のお皿”と呼ばれる、膝の横にあるややくぼんだ部分から地面への垂線が、ペダルシャフトをちょうど通過する位置になるようにセットすればOKです。

おもりを付けた糸を垂らしたり、真横から写真を撮り、画面上で線を引いてみるという方法で確認が可能です」。

サドル前後位置の決め方

サドル前後位置の決め方

「この位置になると、ペダリングするときに最も効率良く力をかけられるようになります。これより後ろすぎると前に蹴りだすようなペダリングになり、前すぎると踏み込み型のペダリングになりがちで、効率が落ちてしまうのです。

なお、サドル前後位置を調整するとサドル高も変わります。ですので、サドル前後位置を調整したらサドル高も同時に調整していく必要があります。そこは注意です。

また、サドル角度の出し方についても注意してください。これを間違うと誤った位置となってしまいます。詳しくは前回の記事を確認してください」。

発展 クランク長の選択

サドル高にはクランク長も絡むが、それについては?

クランク長はどう選択したらいいのか?クランク長はどう選択したらいいのか?

クランク長はどう選択したらいいのか?

「クランク長は好みや筋力・柔軟性が絡んできて、これだけで一つ特集記事が組めるくらい深いんですよね。ただ、ここでもポイントとなるのは長すぎないようにすることです。“体格に合った長すぎないクランク長を選ぶ”というのが、あいまいな表現ですが基本となります。

多くの人はバイクを完成車で買うと思いますが、ショップできちんと体格に合った適正サイズを選んでもらっていれば、それに合った長さのクランクがまず装着されているはずです。そのクランクを使っていれば、大きな問題は出ないと思います」。

クランク長の選択については、別の記事で深堀りしてみたいと思う。

最後に小笠原さんからアドバイスだ。「繰り返しになりますが、サドルが高すぎる人が多いです。高すぎで痛みや障害が出ないこと、これを最優先にしてください。痛みや障害が出なければ長く楽しくロードバイクに乗り続けられます。長く楽しく乗り続けられれば、より速くなれる可能性も高まりますよ」。