その名は「F」 最新世代ピナレロ・ドグマ
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同じモデル名を継承するというのは、世代が進めば進むほどに難しくなる。比較対象がライバル他社はもちろん、まさに自分たちの歴史だからだ。2003年に登場したドグマは、フレーム素材がカーボンへと移行していく時代にあって、マグネシウム合金をフレーム素材に選ぶという異端児だった。それで性能がついてこなければ、本当にただの異端児で終わってしまうところだが、グランツールのステージ優勝や総合優勝など幾多の勝利を支え、名車と言える履歴書を手に入れた。
そんなドグマのファンなら、「そろそろ、新型が出る年だな」というのは薄々感づいていただろう。正解だ。
モデル名は「F」
近年のドグマはFの後ろに数字がつくのが定石だった。最新のドグマではその掟が破られ、シンプルな「F」の名が与えられた。それだけ、特別なドグマになっているというメッセージをピナレロが発信したいのだろう。その性能をカタログスペックで追っていくと、まず重要視したのはバランスだという。ドグマの真骨頂である優れたハンドリング性能(あらゆるコースで、ライダーの意のままにバイクが姿勢を変える)を、落とすことなく重量を削り、剛性を上げ、空力性能を向上させることを至上命題として開発された。具体的な数値を上げるなら、ドグマF12とドグマFをディスクブレーキ仕様で比較すると、フレームセット重量は11%軽量化され、BB周辺の剛性は12%向上しているという。またコンビで使われるハンドル「タロン」や、シートポスト、ヘッドセットなどを合わせて265gの軽量化を達成。
空力性能にも抜かりはない。ピナレロのTTバイク「ボリデ」で培われたノウハウをドグマFに活かし、ドグマF12よりも4.8%空力性能が改善されている。
きめ細かいサイズ展開、リムブレーキモデルの保持
さすがピナレロと言わしめるのは、このサイズ展開である。フレームサイズは全11サイズ、組み合わされるステム一体型ハンドルも16種類のサイズ展開。そしてシートポストもセットバックを2種類用意している。あらゆるライダーの体系をカバーせんとするピナレロのこだわりを感じるポイントだ。また、トップモデルをディスクブレーキのみ展開するメーカーが増えてきているなか、ドグマFにはリムブレーキのラインナップも残る。同社の顧客には、まだリムブレーキの需要があるからというのが理由だ。
ドグマFとドグマF12
先代モデルであるドグマF12と、新型のFは遠目からみるとシルエットが似通っている。しかし、実際に細部を見比べてみると、その造型は細かく変更されていることがよくわかる。ここからはドグマFとドグマF12の実機(サイズ515)を用意して、代表的な変更ポイントをつぶさに見比べてみよう。左がドグマF、右がドグマF12だ。
・フロントフォーク
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歴代ドグマのアイコンであるオンダフォーク。一見するとわかりづらいがドグマF12に比べてドグマFの方がボリュームを持たせるところ、削るところのメリハリが強い。
・フォークの先端にあるフィンも形状変更
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フォーク先端にあるフィンは、ドグマFになって、大幅にボリュームが削減されている
・スマートになったトップチューブ
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トップチューブは、幅が大きく削られている。横から見るとわからないが、上から見るとその差は一目瞭然だ
・ボリュームアップしたダウンチューブ
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ダウンチューブは、ボトルケージ取り付け台座回りにあったリブがなくなり、シンプルな形状になった。だが、マッシブなボリュームは健在。シマノDi2のジャンクションAが収まるスペースも廃止されている。新しい世代のコンポーネントに対応した設計か?
・シャープになったシートポスト
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ドグマF12と比較するとドグマFのシートポストは、まるで日本刀のような薄く鋭い形状になっている。クランプ方式は先代と同じく、シートポストを後ろから押して固定する方式
・シートクランプはチタン素材を用いた3Dプリンタ製
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シートクランプは、チタンを素材として3Dプリンタで製造したパーツを採用する。トラス構造は3Dプリンタでなければ実現できない構造をもつ。強度と軽さを両立している
・シートステー
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ピナレロご自慢のアシンメトリーデザインの象徴的な部分であったシートステー集合部だが、ドグマFではシンプルな造形になっている。シートチューブとの交点はやや下がった印象。そのシートチューブは……
・船のマストのような、シートステー取り付け部
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シートチューブは、シートステーとの交点が下げられ、設計が新しくなった。
・シンプルになったシートステー
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シートステーの造形は、シンプルになった
・BBはスレッドタイプのイタリアン形式
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最新のロードバイクだが、ドグマシリーズは一貫してスレッドタイプのBBを採用してきた。ドグマになってもそのポリシーは変わっていない。イタリアンバイクだから、スレッド方式もイタリアン
・チェーンステー
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ほんの少し、ボリュームを落としたかのように見えるチェーンステー
デビュー戦はツール・ド・フランス
そしていよいよ始まるツール・ド・フランス。ピナレロは、優勝候補の一角であるイネオス・グレナディアーズと、向こう4シーズンのスポンサード契約を更新した。まずはツールでドグマFの真価が問われることになるだろう。
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ピナレロ・ドグマF12で2021年のジロ・デ・イタリアを制したエガン・ベルナル(左)と、ファウスト・ピナレロ(右)
ピナレロ・ドグマF スペック
DOGMA F DISKフレームセット:93万5000円(税込)
DOGMA Fフレームセット:93万5000円(税込)
フレーム素材:Carbon Toraya T1100 1K Dream Carbon with Nanoalloy Technology
BB:イタリアンスレッド
フレーム重量: ディスク/865g、リム/860g ※サイズ530; 塗装前
ディスクブレーキ完成車重量:7.13kg(サイズ515)※カンパニョーロ・スーパーレコードEPS、シャマル仕様。最大タイヤサイズ 622x28c
サイズ:430, 465, 500, 515, 530, 540, 550, 560, 575, 595, 620(CC)
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ブラックオンブラック
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プルトニウムフラッシュ
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イルプションレッド