ロードバイクのステムをガタなく正しく締め付ける方法
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ロードバイクのハンドルを固定する重要なパーツが“ステム”だ。このステムだが、正しく締め付けられていなかったり、緩んでしまってガタつき(いわゆるガタ)が出たまま乗っている人が結構いる。そこで、今回はステムを正しく締め付ける方法について紹介しよう。※一般的な規格のステムについて解説。ハンドルまわりが専用設計のモデルについては、各モデルのマニュアルを参照のこと
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締め付ける順番に注意
「ロードバイクのサドルとハンドルをまっすぐセットする方法」の記事で、ガタが出ないようにステムを適切に締め付けることが大切、という話題が登場した。その記事に引き続き、プロメカニックの濱中康輝さんにレクチャーしてもらう。
「結構ステムにガタが出たまま乗っている人は多いと思います。間違って締め付けすぎておかしくなっているというよりも、一度緩んでしまってそのままにしている人が多い印象です。
最近は一体型エアロハンドルも増えてきましたが、まだまだ一般的な形状のステムが主流で、一体型エアロハンドルの基本的な締め付け方法も同じですので、今回はその一般的形状のステムで説明します」と濱中さん。
「大切なのは、締め付ける順番を間違わないことです。最初に締めるのは、上の写真のようにトップキャップのボルトです。ここを締めるとフォークコラムが引き上げられてヘッドパーツに圧力がかかり、これによって緩みが取れるのです」。
「次に、ステム側面のボルトを締めます。これでステムがコラムに固定されます。多くのステムでは、上下で2本ボルトがあることが多いです。
間違ってはいけないのは、最初に側面のクランプ部のボルトを締め込んでから、トップキャップを締めることです。これをやってしまうと、最初にガタが取れないままステムが固定されてしまうので、その後でトップキャップを締めてもガタは一向に取れません」。
トップキャップを締めてガタを取るときのポイント
「では、正しい順番を理解したところで、2つの手順それぞれのやり方です。まず最初のトップキャップを締めるときのポイントについて。
まず、トップキャップが十分に締まっていないと、前ブレーキをかけてハンドルを前後に揺すったときに、ヘッドパーツがガタガタと動きます。これが、いわゆるガタです」。
「逆に、締め付けしすぎてしまうと、圧力がかかりすぎてヘッドパーツ内部のベアリングが動かなくなってしまい、ハンドルが切れなくなります。これもだめな状態です。
ですので、“ちょうどガタが取れた&ハンドルもスムーズに切れる→締め付けをやめたところ”が、ちょうどよい締付けとなります」。
「次に、上の写真の流れのように確認していきます。まず、トップキャップのボルトを締め付けていき、やや手応えを感じたところで一旦締めるのをやめます。続いてハンドルを90°切り、前ブレーキをかけます。そして、ヘッドパーツとヘッドチューブの境目のところに指を当て、車体をまっすぐ前後に揺すってガタがないか確認します。
ガタが感じられたら少しだけトップキャップのボルトを締め、再度確認します。逆に締めすぎてハンドルの切れが悪くなったら、トップキャップのボルトを少し緩めます。
ここまでやってガタを感じられず、ハンドルもスムーズに左右に切れるなら、適切にトップキャップが締め付けられた状態となっています。
さて、なぜハンドルを90°切って指で確認するのか、です。よくハンドルがまっすぐな状態で前ブレーキをかけて前後に揺すって確認しがちですが、そうするとブレーキキャリパーでホイールを止めて揺すっていることになるので、微妙なブレーキキャリパーの揺れやずれをガタが出ていると勘違いしやすく、締め付けしすぎにつながりやすいからなんです。
ここで紹介した方法ならタイヤの地面へのグリップで固定して揺すっているのでより正確で、さらに指の感触でしっかりと確かめられます。人間の指の触感は、けっこう繊細で正確なんですよ」。
この方法は知らなかった!
ステムをフォークコラムに固定するときのポイント
「ガタが取れたら、次にステムそのものをフォークコラムに固定します。締めるのは横側のボルトです
で、上下に2つボルトがあるタイプが多いのですが、その場合は上下を交互に均等に締め付けるようにしてください。片方を先にどんどん締めてしまうと、適切に締め付けられません。ステムにはスリッドが入っているので、この隙間が上下で均一になっているか見ると確認しやすいです。最初に六角レンチで締めたら、最後にトルクレンチを使って、ステム規定のトルクまで締め付けましょう」。
「最後に、仕上げのガタチェックをしましょう。まず、上の写真のようにハンドルを左右に少しだけ力を入れてゆすり、ガタがないかを確認します」。
「次に、上の写真のように前輪を持ち上げ、地面に落としてガタがないか確認します。ガタが出ていたらカタカタと音がしますし、逆に締め付けすぎてベアリングやヘッドパーツが割れてしまっているときには、また違ったガタガタという異音がします。安全のために必ず怠らないでやっておきたい作業です」。
トルクレンチは必要?
ステムを固定するとき、トルクレンチを使って最後に締め付けトルクを確認しよう、と教わったが、一般のサイクリストはほとんどトルクレンチは持っていないだろう。高価なものだし。これは絶対に必要なのか?
「必要です。カーボン製パーツが多くなった現代のロードバイクには、必須のアイテムと考えてください。一昔前は手の感覚に頼っていましたが、厳密なトルク管理が必要となるカーボン製パーツには、安全のために絶対に必要なものです。特にカーボン製フォークコラムのバイクの場合は、締め付けすぎでコラムを割る危険性が高いですから。また、カーボン製でなくても安全のためには必要です。ステムの場合は、ステムに締め付けトルクが書いてあり、その値まで締め付けましょう。
買えない、あるいは扱えない、という人は、迷わずプロショップに作業を依頼してください」。
ハンドルの高さ調整は一般のサイクリストでも行ってみて良い作業だと思うが、その都度安全にステムを締め付けられるように、この記事を参考にしてチャレンジしてみてほしい。