ロードバイクのタイヤ空気圧セッティング法
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ロードバイクに乗っている人で、ふだんタイヤ空気圧を適当に入れている人は多いのではないだろうか。タイヤ空気圧のセッティング次第でバイクの走りは大きく変わる。今回は適切にタイヤ空気圧をセッティングするための方法について特集しよう。
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だいたいの人が空気を入れすぎている
アドバイザーとして教えてもらうのは、専門学校講師やメカニックとして活躍している、自転車コーキ屋店長の濱中健康さんだ。
「とりあえず8気圧を入れておけばいいや! など、適当にタイヤに空気を入れている人は多く見受けられます。だいたいの人が“入れすぎ”です。タイヤ空気圧をパンパンに高めた方がよくホイールが転がってくれるだろう、と勘違いしている人が多いと思います」と濱中さん。
「空気圧が高すぎると、逆に転がりが悪化したり、乗り心地の悪化、グリップの低下など、多くのデメリットが出てきてしまいます。逆に、低すぎてもまた違ったデメリットが出てきてしまいます。適切な空気圧にすることが大切です」。
なるほど。では詳しいことについて教えてもらおう。
【基本1】タイヤ適正空気圧の範囲を守る
基本中の基本となることは?
「タイヤごとに設定された適正空気圧を必ず守ることです。実は、タイヤには必ずこの適性空気圧が設定されています。この最低値を下回ってもいけないし、最高値を上回ってもいけません。
適正空気圧の数値は、基本的にはタイヤの側面に記載してあります。単位としては、気圧(BAR)とPSIが使われていることが多いですね。スポーツバイク対応の空気入れには、BARかPSIの表示が多く使われています」。
最低空気圧を下回ってしまうとどんな問題が出るのか?
「最悪のケースは、走行中にタイヤがホイールから外れてしまいます。あとは、段差などでパンクのリスクが高まります。いわゆるリム打ちパンクですね」。
一方、上限空気圧を上回ってしまうと?
「バーストと言って、タイヤが破裂してしまう可能性があります。大事故につながりかねません。あるいは、カーボンリムに装着しているなら、リムの破損の可能性もあります」。
恐ろしい……。
「タイヤの適正空気圧はタイヤの種類によって変わってくるのですが、細めならば高圧に、太めならば低圧に設定されている傾向があります」。
【基本2】空気圧による乗り味の変化を理解する
では、適正空気圧の範囲は必ず守るとして、そもそもタイヤの空気圧を低くしたり高めたりすると、それぞれどんな特性が出てくるのか?
「まず、低圧にするとタイヤが地面に設置する面積が大きくなるので、タイヤのグリップが高まる傾向にあります」。
「また、乗り心地も高まる傾向にあります。
ただし、(下の章で説明するが)自分の体重に対して空気圧が低すぎるとタイヤが沈み込んでしまい、走りが重くなってしまう傾向があります。また、パンクのリスクも高まります。乗り心地を重視して低めの空気圧にする人もたまにいるのですが、やりすぎるとこうしたデメリットが出ます」。
「一方で空気圧を高めると、タイヤが地面に設置する面積が狭くなる傾向にあります。すると、バイクを支える部分が狭くなるので、ブレーキング時にスリップしやすくなる傾向があります。また、路面からの衝撃が大きくなり、乗り心地も悪化する傾向があります。
空気圧を高めるとタイヤの転がりが良くなると思う人は多いかもしれませんが、先ほど説明したことと関連して、逆にタイヤが路面から跳ねてしまったりしてパワーロスが生まれ、遅くなる可能性も出てくるんです。要するにトラクションが抜けて地面にこいだ力が伝わらないんです。空気圧を高めると、実はいいことってあまりないんですよ。
つまり、空気圧を低くするか高くするかは、リスクとの天秤なのです」。
【実践】バイクに載る重量次第で空気圧をセッティングする
さあここからが本題だ。では、自分に最適な空気圧を見つけるにはどうしたらいいのか?
「ズバリあなたに最適な値を出す方程式はないのですが、体重が重い人は空気圧を高めに、軽い人は空気圧を低めに設定してください。それでいろいろと試してみて、最も良いと感じる数値を見つけてください。
自分の体重が重いのか軽いのかは、あなたの身長の標準体重より重いのか低いのかで考えてみるといいと思います。
タイヤの空気圧も、ロードバイクのチューニングの一つと考えて楽しんでいただけると、早く見つかるのではないでしょうか」。
なるほど。ちなみに筆者は身長177cmで体重は約62kgと、標準体重よりもだいぶ軽い。そしてふだんは700×28Cのチューブレスレディタイヤを使っており、下限空気圧の5.5気圧で乗っているが、これでちょうどよいと感じている。これはこれでいいのだろうか?
「その条件でご自身も良いと感じているならば、それで適切だと思います。逆に私なら、標準体重よりかなり重い(身長178cm/約100kg)ので、上限に近い空気圧に入れて使うことになるでしょう(笑)」。
チューブレスレディはより低圧にできる
「ちなみに、チューブレスレディタイヤの場合はリム打ちパンクのリスクがチューブドに比べて低いので、より低圧に設定して乗り心地を高められるというメリットがあります。ただし、MTBのように低くするのとはまったく別物ですので、あくまで下限空気圧は守ってください」。
荷物を多く積む場合も空気圧を高める
「自分の体重で判断、と説明しましたが、正確に言うと“バイクに載る全体の荷重”で判断すべきです。例えば、バイクパッキングのようにバイクにたくさんの荷物を積む場合は、体重が軽い人でもタイヤの空気圧は高めないといけません」。
この記事で紹介した内容を参考に、あなたに最適な空気圧を見つけてみてほしい。