リドレー・カンゾー スピード-万能グラベルバイク-アサノ試乗します!その38
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ベルギーの自転車ブランド・リドレーのグラベルロード・カンゾーシリーズ。同シリーズの中でもカンゾースピードは、カーボンフレームにグラベル専用コンポーネント・シマノGRX600シリーズを搭載し、オンロード50%、オフロード50%というコースを想定したモデルだ。オフロード重視・ツーリング向けのグラベルロードやコンフォート系ロード、エンデュランス系ロードとはどう違うのか? 試乗を通じてこのバイクの実力や魅力をチェックしていく。
カンゾー スピード-マルチに使える守備範囲の広さと走行性能の高さを両立-
ベルギーはロードレースもシクロクロスも盛んな自転車大国。この国を拠点とする自転車ブランド・リドレーのグラベルバイクシリーズがカンゾーシリーズだ。
同シリーズは大きく分けて4つのモデルがあり、グラベルピュアレーサーのカンゾーファスト、今回紹介するカンゾースピード、ツーリング志向の強いカンゾーアドベンチャー、アルミフレームのカンゾーAがある。
このうち、カンゾースピードは、オンロードとオフロードが半々のコースを走ることを想定したモデル。立ち位置としてはレース志向のカンゾーファストとアドベンチャー志向のカンゾーアドベンチャーの中間的な立ち位置、すなわち両者のいいとこ取りをしたモデルと言える。
フレーム素材はカーボンで、エンデュランスロードのフェニックスSLディスクのテクノロジーを継承し、トレイルを安定して走れる直進安定性の強いジオメトリーを採用している。タイヤは700Cサイズで最大38mm幅まで対応し、ダートとオンロードが入り交じったグラベルバイクが得意とするフィールドが守備範囲のど真ん中。タイヤを細身にすればエンデュランスロード的な乗り方も可能だ。さらにバッグを装着してツーリングバイク的な使い方も可能で、1台で様々な乗り方に対応するバイクと言えそうだ。
カンゾー スピードの細部-マルチな走行性能、グラベルでの快適性と耐久性を追求-
オンロードもオフロードもそつなくこなすマルチさの片鱗は、フレームやパーツアッセンブルにも現れている。
フレームの造形では、トップチューブを弓なりに湾曲させ、それに続くように細身のシートステーをシートチューブの高めの位置に接合しているのが特徴だ。リアトライアングルの面積が大きくなり、シートチューブやトップチューブで路面からの衝撃をいなし、快適性を高めようという意図が見て取れる。また、グラベルライドで必要な強度を確保するため、チューブの接合部を補強し、ダウンチューブの形状も最適化されているという。
フレームやフォークにはフェンダーやキャリアなどを付けるためのダボ穴があり、用途に応じて拡張することもできる。シートステーやチェーンステー、フロントフォークは、フェンダーを付けた状態でも700Cホイールと36mm幅のタイヤを装着するためのスペースを確保している。
組み合わされるコンポーネントは、シマノのグラベルロード用コンポーネントGRX600のフロントダブル仕様。ここからもオフロードを意識しながらオンロードでのスポーティーな走りを視野に入れていることがうかがえる。
カンゾー スピードをインプレッション-グラベル、オンロード問わず気持ちよく走れるバイク-
グラベルロードが盛り上がりを見せている。ただ、グラベルロードと一口に言っても、まるでMTBのようにオフロードでの走行性能に振ったモデルから、オンロードメインでオフロードもこなせる程度のロードバイク寄りのモデルまである。さらにフレームやフォークに多くのダボ穴を設け、荷物を運搬するためのキャリアやバッグの取り付けを容易にしたアドベンチャー色の強いツーリングバイクに近いモデルもある。
カンゾースピードはグラベルロードの中でどのような立ち位置かというと、エンデュランスロードよりオフロードの走行性能が高く、ロードバイクに近いオンロードでの走行性能を誇りながら、ツーリングバイクよりスポーティーな走りが楽しめるモデルと言える。それぞれのスペシャリストほどの特化した性能はないが、あらゆる楽しみ方をそつなくこなすオールラウンダーとも言えるだろう。軸足がどこに置かれているかというと、個人的にはオンロード、それもロングライド向けのエンデュランスロードに近いと感じる。
そのことはフロントダブル仕様のグラベルロードコンポーネントを標準装備していることによる影響もあるだろう。チェーンリングが46-30T、カセットスプロケットが11-34Tと、さすがにロードレースで使うには向かないが、アウター×トップ付近に入れればオンロードでも下りでなければ脚が回りきることなく気持ちのいいスピードで巡航できる。インナー×ローなら1:1より軽いギヤ比になるので、オンロードの激坂はもちろん、オフロードの上りもこなせる。
カーボンフレームでフレーム重量が1010g(Sサイズ)と特別軽量ではないものの、走り出すと数値ほどの重量は感じず、走りは軽快だ。ジオメトリーはチェーンステーやホイールベースが長めで直進安定志向が強いため、ジープロード程度の未舗装路ならオフロードに不慣れなサイクリストでもそれほど恐怖心を感じることなく気持ちよく走れるだろう。
もう少し本格的にグラベルメインで走ろうとすると、標準装備されているタイヤは700×34Cのセンタースリックのグラベルタイヤではやや心許ない。この状態ではどちらかというとオンロードメインでジープロードぐらいのオフロードもこなせるというレベルだろう。ここからタイヤを対応する最大幅の38mmのブロックタイヤに変えればよりオフロード寄りのセッティングになるし、28mmぐらいのスリックタイヤに変えればエンデュランスロードに近い軽快な走りを楽しめるはずだ。
つまり、このバイクのキャラクターは装着するタイヤによってある程度変えられる。さらにフェンダーを付けたり、キャリアを付けたりすることで、通勤ライドやロングツーリングもカバーする。バイク購入後にある程度は自分の乗り方の色に染められるので、1台で何でもこなしたいサイクリストにはオススメだ。
ただし、“餅は餅屋”というように、やりたいことが明確に決まっているならその専用のバイクを選ぶべきではある。舗装路での速さやヒルクライム性能を追求するなら、やはりレーシングロードバイクを選ぶべきだ。本格的にグラベルライドを楽しもうと思うと40mm幅以上のタイヤを履きたくなるところだが、カンゾースピードはそれには対応していないので、より本格的なグラベルロードが必要になるだろう。また、33mm幅までのオフロード向けタイヤを使えば、ルール上はシクロクロスにも出場できそうだが、シクロクロスバイクとはジオメトリーが違うため、やはりその道を究めるなら専用のバイクを選ぶべきだろう。
カンゾースピードの存在意義は何かというと、レース志向ではないホビーサイクリストの多くにどんぴしゃな守備範囲をカバーしているという点にある。イメージとしては、週末のロングライドをメインとし、荒れた道の多い林道を走ったり、グラベルを含むコースも走ったりする感じ。日々の通勤ライド+週末のロングライドという使い方にも良さそうだ。
カンゾー スピード-スペック-
価格:38万5000円(完成車)
素材:カーボン
サイズ:XXS、XS、S、M
コンポーネント:シマノ・GRX600