リドレー・カンゾー A-マルチなグラベルロード-アサノ試乗します!その39
目次
ベルギーの自転車ブランド・リドレーのグラベルロード・カンゾーシリーズ。同シリーズのエントリーモデル・カンゾーAは、アルミフレームにシマノのロードバイクコンポーネント・ティアグラ4700シリーズの油圧ディスクブレーキ仕様を搭載し、コストパフォーマンスに優れた1台。試乗を通じてこのバイクの実力や魅力をチェックし、前回試乗したカンゾースピードとの違いも明らかにする。
カンゾー A-マルチに使える守備範囲の広さと走行性能の高さを両立
自転車大国ベルギーを拠点とする自転車ブランド・リドレーのグラベルバイク・カンゾーシリーズ。同シリーズの4つのモデルの中で、カンゾーAはアルミフレームのエントリーモデルという位置づけだ。
フロントフォークやフレームにはフェンダーやキャリアを装着するためのマウントを設け、ダウンチューブ裏にもボトルケージマウントを搭載するなど、さまざまなパーツを後付け可能な拡張性の高さが特徴。乗り手のライドスタイルに合わせたカスタムができるようになっている。
フレーム素材は6061-T6アルミで、トリプルバテッドチューブを採用することで軽さと剛性、高い強度を兼ね備えている。オフロードでも安定して走れる直進安定性の強いジオメトリーを採用しており、ロングツーリングやグラベルライド向けの。これに組み合わされるフォークは、ブレード部分がストレート形状のカーボンフォーク。振動吸収性の高さと優れたハンドリング性能を両立している。
対応するタイヤの最大幅は、700Cホイールで45mm、650Bホイールで55mmと、かなりワイドなタイヤにも対応。太いタイヤを履かせることで、エアボリュームの多さを生かして乗り心地をよくしたり、オフロードでの走破性を高めることも可能で、カスタム次第で本格的なグラベルライドも楽しめる。
カンゾー Aの細部-さまざまな用途に対応する拡張性の高さが魅力
カンゾーAは前回紹介したカンゾースピードとほぼ同じ形状をアルミフレームで実現している。弓なりに湾曲したトップチューブがシートチューブに接合するのとほぼ同じ高さに細身のシートステーを接合しており、後輪の突き上げを効果的にいなすよう設計されている。
ディスクブレーキ専用フレームとすることで、シートステーにブリッジを設ける必要がなく、後輪のチェーンステー周辺のクリアランスも大きくとっていてワイドなタイヤをはきこなせるのも特徴。700Cホイールで45mm幅、径の小さな650Bホイールなら55mm幅のタイヤに対応し、本格的なグラベルライドも視野に入る。
もちろんマウントや泥よけを付けるためのダボ穴もあり、ライドスタイルに応じたカスタマイズも可能だ。
組み合わされるコンポーネントは、シマノのロード用10スピードコンポーネント・ティアグラのフロントダブル仕様。チェーンリングが48×34T、カセットスプロケットが11-34Tとなっており、ロードもグラベルも幅広くカバーできるようになっている。
カンゾー Aをインプレッション-カスタマイズの振り幅が広い、ラフに使える1台
カンゾーAを一言で表すなら、アルミフレームのグラベルロードだ。ただ、多様化を見せるグラベルロードの中で、カンゾーAがどのような立ち位置かというと、とにかく守備範囲を広くしようと試みているのではないかと感じる。
コンポーネントはロードバイク用の10スピードコンポーネント、シマノ・ティアグラで、チェーンリングが48-34T、カセットスプロケットは11-34Tとなっている。インナー×ローなら1:1のギヤ比が可能で、グラベルやオンロードの激坂もカバーするし、アウター×トップに入れればロードバイク並みとまでは行かなくてもオンロードを気持ちよくクルージングできる。レースでスピードを追求するようなモデルではないので、これで必要十分。もし本格的にグラベルを走ろうと思ったら、コンポーネントをグラベル用に載せ替えるのもありかもしれない。
さらに興味深いのは装着可能な最大タイヤ幅だ。カンゾースピードは700Cホイールで38mm幅までだったが、カンゾーAは700Cホイールで最大45mm幅まで対応する。ディスクブレーキだから簡単に650Bホイールに交換することもでき、その場合は55mm幅のかなり太いタイヤもはきこなす。グラベルありのロングツーリングでも、これだけ太いタイヤをはきこなせれば心強いだろう。複数のホイールを使い分けて、通勤で28mm幅のスリックタイヤを履かせた700Cホイール、グラベルに行くときには太いタイヤを履かせた650Bホイールを使うのも良さそうだ。
こうしたマルチパーパスバイクとしては、アルミフレームを採用しているのがいい。カーボンフレームほどデリケートな扱いが求められず、輪行や通勤ライドのようなラフな感じの乗り方も許容するからだ。荷物満載の本格的なツーリングのベース車としても良さそうだ。
もちろん、何も付けない素の状態で乗っても、スポーツバイクらしい軽快な走りが楽しめる。ロードバイクのように舗装路を速く走ることだけに特化しているわけではないので、さすがにロードレースに使うには向いていないが、人と競うような用途ではなく、楽しく走るというスポーツバイク本来の楽しみ方をするのにはいい相棒だ。何より標準で38mm幅のグラベルタイヤを履いているから、多少道が荒れていても走れるし、ロードバイクより走れる道の選択肢が広がるという点が大きな魅力だ。
このモデルは、グラベルバイクの多用途性という魅力を、よりビギナーに近いサイクリストにも訴求できるという点で魅力だと思う。自転車で何をしたいかと尋ねられて、明確に答えられるビギナーは多くないと思う。なんとなく通勤しようかな、で始まって週末にサイクリングに行くようになった——という人が、次のステップに行くときに「荷物を積んで走るツーリング」や「オンロードのロングライド」や「グラベルライド」などさまざまな楽しみ方を志したとき、それを許容する懐の深さがカンゾーAにはある。
カンゾー A-スペック-
価格:23万1000円
素材:アルミ
サイズ:XXS、XS、S、M
コンポーネント:シマノ・ティアグラ
カンゾーAとカンゾースピード比較-走りに振ったスピード、マルチさに振ったA
リドレーのグラベルバイク、カンゾーAとカンゾースピードの最大の違いは、フレーム素材にある。カンゾーAがアルミフレームなのに対し、カンゾースピードはカーボンフレームを採用している。ジオメトリーも違いがあり、カンゾーAはヘッドアングルが少し寝て、チェーンステー長も10mm(XXSとXS。SとMは8mm)長くなっていて、これに伴ってホイールベースも長くなっている。
このことから分かるように、カンゾーAはリドレーのグラベルバイクの中でも直進安定性志向の高いジオメトリーを採用し、後輪のタイヤクリアランス増加によってより太いタイヤをはきこなせるようになっている。対応する最大タイヤ幅を比較してもこのことは明らかで、カンゾーAが700Cホイールで45mm幅のタイヤに対応するのに対し、カンゾースピードは700Cホイールで38mm幅のタイヤが最大となっている。
これに対し、カンゾースピードはチェーンステーが短めでロードバイクに近い乗り味を志向したジオメトリーとなっている。700Cホイールに28Cぐらいのスリックタイヤを履かせれば、オンロードではロードバイクに負けない軽快な走りを楽しめるだろう。
拡張性の高さでも微妙な違いがある。カンゾーAはフロントフォークとフレームに泥よけや荷台などを付けるためのダボ穴が設けられているほか、ダウンチューブの裏側にボトルケージ台座を設け、フレームバッグを使った際にもボトルケージを増設することができるようになっている。一方、カンゾースピードにはフロントフォークとフレームのダボ穴はあるが、ダウンチューブ裏のボトルケージ台座はない。泥よけを付けて通勤ライドを楽しんだり、比較的荷物がコンパクトにできるツーリングぐらいならカンゾースピードでも対応できそうだが、多くの荷物を積んで走る宿泊を伴うツーリングやキャンプツーリングならカンゾーAが適任だ。
これらの違いから、カンゾーAは拡張性を重視していて、より守備範囲を広げようとしているのに対し、カンゾースピードは拡張性を最小限にとどめ、軽快な走りを信条としていることがうかがえる。どちらもマルチパーパスなバイクではあるが、この点を踏まえればより自分のライドスタイルや好みに合わせたバイクが選べるはずだ。