ロードバイク初心者が100kmを5時間以内に走り切る方法

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ロードバイク初心者が100kmを5時間以内に走り切る方法

ロードバイク初心者の多くの人が「まずは100kmを走り切る」ということを目標に掲げるだろう。しかし、だらだらと朝から晩までかけて走っていれば誰でも達成できてしまうので、ロードバイクらしいスピード感を持って走りたいと考えるはず。その一つの基準が“100kmを5時間以内”ではないだろうか。今回はそのコツについて特集する。

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平均時速20kmを達成する必要がある

今回指導を仰ぐのは、元プロロードレーサーで現在はサイクリングガイドとして活躍する、リンケージサイクリング代表の田代恭崇さんだ。

リンケージサイクリング代表・田代泰崇さん

リンケージサイクリング代表・田代恭崇さん。2001年/2004年全日本選手権ロードレース優勝、アテネオリンピック自転車ロードレース代表など、プロロードレーサーとして活躍。引退後はサイクリングプログラムやコーチング、サイクリングコース作成などのサービスを提供するリンケージサイクリングを創業し、現在はその代表を務めている

「確かに、ロードバイク初心者の方は多くが最初の目標として100km走破を掲げます。しかし、おっしゃるように1日かけて走り続ければ達成は簡単ですが、5時間以内でとなると、いくつかテクニックやコツが必要となります」と田代さん。

「単純計算で100kmを5時間以内で走り切るには、平均時速にして20kmを超えないといけません。休憩などで止まっている時間も含めてです。そのために必要なポイントとしては、

1.コース設定
2.ペース配分
3.休憩のとり方と補給のしかた
4.走り方
5.装備

この5つを押さえると良いです」。

詳しくを教えてもらおう。

POINT1 コース設定

「平均時速20㎞を達成するには、途中で信号で止まったり休憩を取ることも考えると、走行中はだいたい時速25㎞前後くらいの速度で走り続ける必要があります。さらに、5時間以内という目標を考えると、できるだけ休憩も含めて止まっている時間を短くする必要があります。

そこでまず大切になるのが、コース設定です。できるだけ信号や市街地が少なく、交通量の少ない道をつないだコースを、ライドに出る前にきちんと設定しておくことが重要となります。さらに、できるだけ平坦基調でアップダウンが少なめのコースにすることも重要です。あまりにも坂道が多いとペースが乱されてしまいます。

多くの方は自宅出発で自宅ゴールにすると思いますが、こうしたコース設定をするうえでおすすめなのが、河川敷道路やサイクリングロードを探し、できるだけそれを組み込むことです。信号でストップするシチュエーションを減らし、坂道でペースを乱される心配のないコース設定をすることで、最大限自分の力を発揮できるようにするのです。

実は、ロングライドの大敵はいったんストップしてしまうことです。そこから再スタートするのに結構体力を奪われてしまうんですよ」。

そうしたコースを探すときにはどうしたらいいのか?

「グーグルマップなど、各種地図アプリなどのサービスを活用するのがいいでしょう。ルートをオンライン上で作成できるサービスや、他のサイクリストが引いたルートをダウンロードしてナビできるアプリなど、便利なサービスがたくさん登場していますので、そうしたものを利用してみましょう」。

POINT2 ペース配分

「ほとんどの方が、最初から飛ばしすぎて、中盤~後半で失速して失敗します。走行中は時速25km前後をキープする必要があると説明しましたが、100kmと長丁場だからといって前半で距離を稼ぎたいと思うあまり、時速30kmくらいで飛ばしてしまうんです。そして、中盤~後半で疲れ切ってペースががくんと落ちてしまうんですよね」。……耳が痛い。

「私がかつて現役選手だったときはタイムトライアル競技にも出場していましたが、スタートして5分間でペースを上げすぎると、必ず後半でいっぱいいっぱいになってペースがガタ落ちし、タイムが悪くなる、という経験則があります。ロングライドもそれとまったく同じで、こうした走り方が実は一番効率が悪いんです。

ですので、後半まで疲れ果ててペースが落ちないようにするためには、次のことに注意してみてください」。

●スタートして30分~1時間
時速20km弱をキープして時速25kmを超えないようにし、ペースを抑えて走る【最重要】

●~50km地点
時速25km前後を目安にするが、やや抑え気味のペースで走る

●50km地点~80km地点くらい
時速25㎞前後を淡々とキープ

●ラスト1時間(約20kmくらい)
自分の疲労具合と相談しつつ、可能であれば少しずつペースアップしてみる。ただし、ゴールで力を使い切らないように、ゴール後「ああ、今日はオレがんばったなぁ」と気持ちの余裕を感じられるほど、余力を残すようにする

なかなか初心者にとってペースを抑え気味にして走るというのは難しいと思うが、どうやってペース管理したらよいのか?

「やはり、サイクルコンピューターを装着して、それで走りを客観的に見つめることが大切です。それが大前提と言っていいと思います。速度・ケイデンス(後に説明)・時間・距離、これらの数値を見ながら、オーバーペースにならないように注意するのが一番です」。

ペース管理にはサイクルコンピューターの装着が必須

ペース管理にはサイクルコンピューターの装着が必須

POINT3 休憩のとり方&補給のしかた

「これまで説明したとおり、重要なのはできるだけ止まっている時間を短くすることです。信号で止まっていること以外で止まる状況とは、イコール休憩と食事などの補給ということですよね。さすがに5時間ずっと走りっぱなしというのは無理で、休憩は絶対に必要です。また、何も食べないとハンガーノックと言って空腹で力が出なくなってしまう症状に見舞われますし、水分補給もパフォーマンスを落とさないようにするためには大切です。

休憩と補給のポイントは、できるだけ1回の休憩時間を短くすることと、こまめに補給を取っていくことです。次の流れでやってみてください」。

スタートして1時間半~3時間の間

●20分おきの補給と給水
信号待ちで止まったタイミングなどを利用し、厳密でなくていいので20分おきにボトルの水分を飲んだりやジャージのポケットに入れた補給食をこまめに食べる。水分は20分で200ml程度を目安に。ボトルに入れるのはスポーツドリンクがおすすめで、ジャージのポケットに入れる補給食はポケットに入る軽くてコンパクトかつカロリーの高いもの、例えばようかんや大福などのあんこが使われているものや、エナジージェルなどが良い。

信号待ちなどで止まるタイミングを利用し、こまめに補給する

信号待ちなどで止まるタイミングを利用し、こまめに補給する

ジャージのポケットに補給食を

ジャージのポケットにさっと手に取れる補給食をあらかじめ入れておくこと

ボトルとボトルケージの装着が大切

すぐに水分が摂れるよう、ボトルとボトルケージの装着が大切

●5分以内の休憩を1~2回取る
このときも水分補給をして補給食を食べる

50km地点くらい

●10分以内の少し長めの休憩を1回とる
このとき食べるもの:コンビニで買えるおにぎり2個程度とゼリー1個程度

中間地点で少し長めの休憩を一度入れる

中間地点で少し長めの休憩を一度入れる

50km地点~ゴール

●20分おきの補給と水分補給

●5分以内の休憩を1~2回とる

「最大でも10分というと短いなと感じるかもしれませんが、繰り返しますができるだけ休憩で止まっている時間を短くすることが大切です。

さらに上記に加えて、スタート前に適切に食事をしておくことも重要です。ポイントは次のとおりです」。

スタート前の食事を適切に摂る

●最低でもスタート2時間前までにご飯などすぐエネルギーに変わる炭水化物系の食事をしておく
→スタート直前に焦って食べると消化にエネルギーが使われ、走りのパフォーマンスが落ちやすい

●スタート直前に消化吸収の早いバナナを1本分ほど食べる

スタート前の食事の摂り方も非常に重要

走行中だけでなく、スタート前の食事の摂り方も非常に重要

「スタート前に適切に食事を摂ることで、ライドの効率がだいぶ変わってきます」。

POINT4 走り方

「最初にペース配分のことを説明しましたが、それと関連してロングライドに適した走り方をすることも重要です。

まず第一に、ガシガシと力んで踏み込まないペダリングをすることです。すぐ疲れてしまうからです。そうではなくて常にリラックスして、自分の体重がペダルに乗っかるのを効率的に使うイメージで走りましょう」。

力まずリラックスしたペダリングを心がける

力まずリラックスしたペダリングを心がける

力んでガシガシ踏み込むようなペダリング

力んでガシガシ踏み込むようなペダリングをしているとすぐに疲れてしまう

「次に、皆さんペダリングで脚ばかり意識しがちですが、上半身をリラックスさせることも意識することです。5時間近くロードバイクに乗り続けるとどうしても上半身がこわばって腕から肩にかけてガチッとこわばったフォームになりがちなので、やや肘に余裕を持たせるようにしましょう」。

リラックスしたフォーム

腕から肩にかけて余裕のあるリラックスしたフォーム

こわばった良くないフォーム

腕から肩にかけてがっちりとこわばった良くないフォーム

「それから、ハンドルを持つ位置をこまめに変えることも大切です。どうしてもブラケットばかり持ちがちですが、交通量がなくて視界が良好な道に出たらハンドル上部(いわゆる上ハンドル)に持ち変えるなど、できるだけ上半身がリラックスできるように工夫してください。

これらのことに気をつけていると疲れにくくなり、走りの効率がだいぶ違ってきます」。

たまに上ハンドルに持ち変える工夫を

安全には十分に注意したうえで、たまに上ハンドルに持ち変える工夫を

「そしてケイデンス(1分間のクランクの回転数)にも気をつけてください。よく理想的なケイデンスは毎分90~110回転だ、なんて言われていますが、実はそれは上級者かつ時速40km~50kmで走るレース中の速度での話で、時速25km前後くらいのロングライドには当てはまりません。

こうしたロングライドのときには、毎分70回転~80回転くらいのゆっくりめのケイデンスを心がけましょう。かっこいいからと言って無理して90~110回転をキープすると、むしろ疲れてしまいますし、この速度域ではそんなケイデンスは高すぎで効率が良くないんです。また、高いケイデンスは高いペダリング技術も要求されます。あくまでそれはレースでの話と思ってください」。

ケイデンスは毎分70~80回転が効率が良い

ケイデンスは毎分70~80回転が効率が良い

90~110回転のケイデンスは効率が悪く疲れてしまう

90~110回転のケイデンスは効率が悪く疲れてしまう

し、知らなかった。目からうろこだ。

「最後に、これも“走り方”というくくりにしていいと思うのですが、ストレッチです。どうしてもロードバイクにまたがっていると肩が内側に縮こまってきたりと上半身がこわばってくるので、それをほぐすために信号待ちで止まったときや休憩中にストレッチを入れると良いです。下の写真の動きが簡単にできておすすめです。全てバイクにまたがりながらでもできます」。

肩をぐるぐると前後に回すストレッチ

肩をぐるぐると前後に回すストレッチ

腕を伸ばして背伸びするストレッチ

腕を伸ばして背伸びするストレッチ

首を前後左右に伸ばしてあげるストレッチ

首を前後左右に伸ばしてあげるストレッチ

POINT5 装備

「走ることばかりに注目がいきがちですが、途中何かトラブルがあったときに対処できること、そして最後までトラブルを起こさないようにすることもかなり重要です。例えばパンクなどですね。そもそも途中でトラブルがあっては、最後まで走り切ることすらできませんから。

そこで、そうしたトラブルに対処するための工具やアイテムなどの装備を、できるだけ体に負担が少ないように装着して持っていくことが重要となります」。

この“ロードバイクでロングライドするときに持っていくべき装備”については、次回の特集で詳しく紹介する。お楽しみに。

いかがだっただろうか。上記のポイントを参考にして、ぜひ100km 5時間切りを目指して楽しく走ってみてほしい。