“スマートバイク”一気乗りインプレッション-アサノ試乗します! 番外編

目次

Zwiftなどのバーチャルサイクリングを楽しむ際、バイク+スマートトレーナー以外にスマートバイクという選択肢がある。ホイールを外したりバイクを設置したりする手間がなく、安定感もあり、音も静かで、駆動部が露出しないため基本的にメンテナンスフリーでもある。ハンドルやサドルのポジションを変えれば、家族で共用することもできる。スマートバイクは初期投資は高額だが、インドア専用機材と割り切るなら、実は“アリ”な選択だ。そこで今回の「アサノ試乗します!」では、趣を変えてインドアバイク3機種の乗り比べを行う。それぞれどのような違いがあるのか?

 

スマートバイクを選ぶメリットとは?

インドアサイクリングで使うサイクルトレーナーの中で、Zwiftをはじめとするアプリでコースを走る際の勾配変化に応じて負荷が自動的に変わるものをスマートトレーナーという。スマートバイクは広く言えばその仲間だ。スマートバイクとスマートトレーナーの最大の違いは、使用時にバイクを設置する必要があるか否かだ。まずはスマートバイクのメリットとデメリットについて見ていこう。

【メリット】

スマートバイクは設置の手間が少ない

スマートバイクはひとたび設置して設定さえ完了すれば、アプリを立ち上げてすぐにバーチャルライドを楽しめる。これはスマートバイク最大のメリットだろう。また、ポジションを調整すれば、1台を家族で併用することもできる。

一方、スマートトレーナーは使用時にトレーナーにバイクを設置する必要がある。現在主流のダイレクトドライブ式なら後輪を外してバイクを設置する必要があり、タイヤドライブ式ならタイヤかすが出にくいトレーナー専用タイヤを付けたホイールに履き替えるケースもあるだろう。インドアトレーナー専用のバイクを用意しない限り、実走とインドアライドを切り替えるたびにこの作業が必要になる。

 

スマートバイクはほぼメンテナンスフリー

スマートバイクは、ドライブトレインが外に露出していないため、ほぼメンテナンスフリー。ユーザーにできることと言えば汗で汚れたときにふく程度だ。

一方、スマートトレーナーの場合は実際のバイクを使うため、変速機やチェーンなどは通常のバイクと同様にメンテナンスが必要だ。機械式変速の場合、シフトケーブルの交換も定期的に必要だ。インドアサイクリングは汗で汚れやすい環境のため、バイクのメンテナンス頻度もそれなりに高くなりがちだ。

 

スマートバイクは騒音や振動を抑えたい場合も有利

騒音や振動を抑えたい場合もスマートバイクは優れている。重量が40〜50kg程度と重いため安定感があり、脚をきちんと設置すればかなり振動を抑えられる。さらにベルトドライブを採用するなど駆動音も静かで、一般的なロードバイクで採用されるチェーン駆動のようにチェーンとギヤがかみ合う際に発生する駆動音や変速時の音や振動が発生しない。

 

【デメリット】

片付けるのは難しい

真っ先に思いつくデメリットといえば「場所をとる」ということだろう。スマートバイクはコンパクトにならないので常に設置場所をとる。常設できない場所で使うのには向かない。大人2人がかりなら移動できなくもないが、それなりに幅をとるため、部屋間の移動もドアを通るときにネックになるケースもある。

一方、スマートトレーナーはバイクを外せばそれなりにコンパクトになり、さらに本体も脚をたたんでコンパクトにできるモデルもある。手間ではあるが、使用後に片付けたり場所移動が必要なケースではスマートトレーナーの方がいいだろう。

 

予算が高くなる

スマートバイクは安いものでも40万円前後する。金額的なことを言えば、スマートトレーナーならどんなに高い機種でもこの半額以下で購入できるし、バイクの傾きで傾斜を再現するデバイス(ワフー・キッカークライム、エリート・ライザーなど)と組み合わせても同額程度で収まる。ロードバイクをすでに持っていて、使用前に設置する手間を惜しまないなら、スマートトレーナー+ロードバイクの方が予算は抑えられる。

 

続いて実際にスマートバイクを乗り比べ、詳細をチェックする。

 

ワフー・キッカーバイク-勾配変化に応じて本体が傾斜

ワフー・キッカーバイク(48万9500円)

ワフー・キッカーバイク(48万9500円)

バーチャル空間の勾配変化に応じて、負荷が変動するのはもちろん、本体も傾斜することで登り20%〜下り15%まで斜度を再現する。勾配変化はバーチャル空間に対応して自動で変化するが、手元のボタンで手動で操作することもできる

バーチャル空間の勾配変化に応じて、負荷が変動するのはもちろん、本体も傾斜することで上り20%〜下り15%まで斜度を再現する。勾配変化はバーチャル空間に対応して自動で変化するが、手元のボタンで手動で操作することもできる

変速操作をはじめ、Zwiftでのステアリング操作、アイテム使用などアバターの操作はすべてシフター部分のスイッチで行える。ブラケット部分の上と内側だけでなく、レバー部分の外側にもスイッチがあり、シマノ、カンパニョーロ、スラムの変速操作を再現できる。変速段数や歯数構成なども細かくアプリでセッティング可能

変速操作をはじめ、Zwiftでのステアリング操作、アイテム使用などアバターの操作はすべてシフター部分のスイッチで行える。ブラケット部分の上と内側だけでなく、レバー部分の外側にもスイッチがあり、シマノ、カンパニョーロ、スラムの変速操作を再現できる。変速段数や歯数構成なども細かくアプリでセッティング可能

ポジションの調整は、サドルの高さや前後位置、ハンドルの高さや前後位置を工具なしで簡単に調整可能。アプリを使って自分が普段乗っているバイクを撮影すると、同じポジションが出せるようアプリがキッカーバイクの調整方法を示してくれるので、家族で共用する場合なども簡単に調整できるのは魅力

ポジションの調整は、サドルの高さや前後位置、ハンドルの高さや前後位置を工具なしで簡単に調整可能。アプリを使って自分が普段乗っているバイクを撮影すると、同じポジションが出せるようアプリがキッカーバイクの調整方法を示してくれるので、家族で共用する場合なども簡単に調整できるのは魅力

クランクには5つのペダル取り付け穴があり、ペダルの取り付け位置を変えることで、クランク長を165mm、167.5mm、170mm、172.5mm、175mmから選べるようになっている

クランクには5つのペダル取り付け穴があり、ペダルの取り付け位置を変えることで、クランク長を165mm、167.5mm、170mm、172.5mm、175mmから選べるようになっている

 

ワフー・キッカーバイク Spec

価格:489500
設置面積(長さ×幅):121×76cm
重量:42kg
再現可能な勾配:-15~20%
対応通信規格:ANT+BLUETOOTHANT+ FE-C
パワー計測の精度:±1%
最大パワー:2200W
適応身長:152~192cm
クランクの長さ:165mm、167.5mm、170mm、172.5mm、175mm

 

ワフー・キッカーバイク-インプレッション-ひとつの完成形

±1%と高精度でキャリブレーション不要なパワーメーターを内蔵するのは他のスマートバイクでも実現できているが、最大の差別化が図られているポイントとして、バーチャル空間の勾配に応じて本体が傾く機能が搭載されていることが挙げられる。どのスマートトレーナー・スマートバイクでもバーチャル空間の勾配変化に応じて負荷が自動的に変化するが、本体が傾くことで必然的に上りでは上りのフォームに切り替える必要があり、このことが実走感やバーチャルサイクリングへの没入感をより高めることにつながる。

 

勾配変化をバイクの傾きで再現する機能は、2022年3月現在、市販品ではスマートトレーナーにワフーのキッカークライムやエリートのライザーを組み合わせることでしか実現できない。さらに付け加えるなら、この機能とバーチャル空間でアバターのステアリング操作を行う機能を同時に搭載しているのも、エリートのライザーしかない。バイクの傾きで勾配を再現し、ステアリング操作にも対応するキッカーバイクは、この点で他のスマートバイクと比べて一歩先を進んでいると言える。

 

操作にまつわる部分の官能性能も、キッカーバイクのメリットだと感じる。特に素晴らしいと思ったのがシフターの出来だ。ボタンはレバー部分に変速用の2つ、ブラケットのトップ部分に2個、ブラケット内側に1個あるが、どのボタンも押しやすい。ブラケットも持ちやすく、シフトレバーまわりに関しては他の2台に比べて実によくできている。操作フィールはシマノのDI2に近いが、設定を変更すればカンパニョーロやスラムの変速操作を再現することもできる。どのブランドのコンポーネントを使っていても違和感なくすんなり使いこなせそうだ。シフターにはステアリング操作のほか、Zwiftでアイテムを使ったりアバターをUターンさせたりする動作も割り当てられているため、Zwiftなら手元で基本的な操作はすべてできるのが素晴らしい。汗に濡れた手でスマホやパソコンを操作するストレスからも解放される。

 

負荷変動はバーチャル空間の勾配変化に応じてリニアに、自然かつ滑らかに行われる。上りに入ってギヤを軽くしたいと感じるタイミング、ギヤを軽くしたときの脚への負荷のかかり方の変化が非常にリアルだ。自然な負荷変動は、同社のスマートトレーナー・キッカーシリーズと同じ大型のフライホイールに加え、モーター制御によって生み出されている。モーターを内蔵することで、下り坂ではペダリングを止めてもフラホイールが回転を続け、より実走感の高い下り坂を再現することができる。このあたりはキッカーシリーズでも定評があるワフーのテクノロジーが生きている。

 

一方で、ペダリング中にベルトドライブ周辺から低くうなるような音が絶えず聞こえていたのは気になった。今回試乗したのは、イベントなどで試乗に使われている個体だったため、そのあたりも考慮すべきかもしれないが、市販されているものも同様に音がするのだとしたら、集合住宅では騒音が気になるかもしれない。

 

ポジション調整のしやすさもキッカーバイクのメリットだ。ワフーフィットネスアプリでバイクの画像を撮影すると、キッカーバイクをどのようにセッティングすればサドルの高さや後退幅、ハンドルの高さや遠さなどが忠実に再現できるかを数値で示してくれる。適応身長は152〜193cm。ハンドルやサドルの位置だけでなく、スタンドオーバーハイトも調整可能。クランクの長さも165〜175mmまで2.5mm刻みで5段階に設定可能で、小柄な方から大柄な方までポジションを再現しやすい。ポジション調整は工具不要なので、家族で共用する場合にも簡単に調整できるのは魅力だ。

 

価格は51万7000円とミドルグレードのロードバイクが買える値段だ。これをどうとらえるかはそれぞれの価値観によるが、スマートバイクを購入するのであれば個人的には今回試乗したスマートバイクの中ではベストの1台だと思う。

 

 

(問)ワフーフィットネスジャパン (https://jp.wahoofitness.com/
(問)インターテック(https://www.intertecinc.co.jp/

 

タックス・ネオバイクスマート-音の静かさと優れた実走感は随一

タックス・ネオバイクスマート(40万7000円)

タックス・ネオバイクスマート(40万7000円)

レバーはDI2を模したようなデザイン。青色の部分全体がスイッチというわけではなく、直径1cmほどのポイントを押さないと変速しない

レバーはDI2を模したようなデザイン。青色の部分全体がスイッチというわけではなく、直径1cmほどのポイントを押さないと変速しない

タブレットやスマートフォンなどを置くためのスペースがあるほか、スピードや心拍数に応じて風量を調整するファンが付いている。ファンは小さいが、顔のあたりに集中的に当たるので、見た目以上に冷却効果は高い。ファンを外側に向ければ設定を変更しなくても風が当たらないようにできる。サイコンを付けなくても走行データが分かるディスプレイもある

タブレットやスマートフォンなどを置くためのスペースがあるほか、スピードや心拍数に応じて風量を調整するファンが付いている。ファンは小さいが、顔のあたりに集中的に当たるので、見た目以上に冷却効果は高い。ファンを外側に向ければ設定を変更しなくても風が当たらないようにできる。サイコンを付けなくても走行データが分かるディスプレイもある

ポジションはハンドルの前後位置と高さ、サドルの前後位置と高さを調整する。調整方向にメジャーが付いているが、「最も小さいサイズからどのぐらい動かしたか」しか分からないので、最初のポジション出しはやや苦労する

ポジションはハンドルの前後位置と高さ、サドルの前後位置と高さを調整する。調整方向にメジャーが付いているが、「最も小さいサイズからどのぐらい動かしたか」しか分からないので、最初のポジション出しはやや苦労する

今回、旧モデルを借りたためクランク長の調整はできなかったが、現在のモデルでは3つのペダル取り付け穴があり、170mm、172.5mm、175mmから選べる

今回、旧モデルを借りたためクランク長の調整はできなかったが、現在のモデルでは3つのペダル取り付け穴があり、170mm、172.5mm、175mmから選べる

 

タックス・ネオバイクスマート Spec

価格:407000
設置面積(長さ×幅):139×75cm
重量:50kg
対応通信規格:ANT+BLUETOOTH
パワー計測の精度:±1%未満
最大パワー:2200W
シミュレーション可能な最大勾配:25%
適応身長:N/A
クランクの長さ:170mm、172.5mm、175mm

 

タックス・ネオスマートバイク-インプレッション-静かさと実走感の高さを高いレベルで両立

ライド中の音の静かさや振動の少なさは、今回試した3台の中では最高レベル。ブラシレスモーターに32個のネオジウム磁石を組み合わせた負荷ユニットを採用し、負荷変動の自然さもキッカーバイクと甲乙付けがたいレベルですばらしい。ネオバイクスマートには本体の傾きで勾配を再現する機能はないが、負荷はリニアに変わる。価格がキッカーバイクと比べて10万円ほど安いので、バイクの傾きまで求めないのであればスマートバイクとして魅力的な選択肢と言える。

 

リアルな走行感の再現については、キッカーバイクとは違ったアプローチで実現している。それは、路面の振動を再現するというタックスのスマートトレーナー・ネオ2などにも採用されている機能だ。石畳やオフロードにさしかかると、あたかもそのような路面を走っているかのように本体が小刻みに振動する。路面の再現機能は、サイクリングを楽しむ上での“スパイス”としては面白いが、ワークアウトに集中したいときなどは集中をそぐ要因だと感じる人もいるかもしれない。この機能はZwiftの設定でオン/オフを切り替えることも可能なので、不要な場合は切ってしまえばいい。

 

もうひとつは、標準装備されているファン。こちらはスピードや心拍数などに応じて風量をコントロールするようになっており、スピードが上がればより強い風が吹くことで実走感を高めてくれる。2機付いているがそれほど大きくないので風量は微妙だが、ピンポイントで顔や上半身に風が当たるので意外に涼しい。ただ、夏に使うとしたら他の扇風機やエアコンも併用したいところだ。

 

専用アプリ・タックスソフトウェアと組み合わせると、ペダルストローク解析も可能だ。左右それぞれのペダルストロークを計測し、ペダリング中のトルク発生状況を確認したりできるのは他にない魅力だ。キャリブレーション不要で±1%の精度を誇るパワーメーターも搭載し、トレーニング機器としても申し分のないスペックを誇る。

 

しかし、いくつか気になる点もある。ひとつはシフトレバー部分の操作性に関してだ。レバー外側のDI2を模したようなスイッチは、色が水色になっている部分のどこを押しても反応するわけではなく、わずか1cm程度の小さなスイッチをきちんと押さないと反応せずにストレスを感じた。また、レバーの形状も実際のロードバイクのそれとはほど遠く、レバーとハンドルの間が極端に狭く、ブラケット周辺を持ったときに手に違和感があった。ブラケット周辺は巡航時に長時間持つことになるので、ここはぜひ改善してほしいポイントだ。

 

また、ファンとファンの間にタブレットやスマホを置けるスペースがあるが、ノートPCや大型ディスプレイを使う場合はこのスペースは無駄になるどころか視野を妨げることにもなりかねない。一見ユーザーフレンドリーのように見えるが、あらゆる環境でインドアサイクリングを楽しむ人がいると考えると、このスペースが本当にデフォルトで必要なのかどうかは疑問だ。

 

ポジションの調整幅が小柄な人まで対応していない点も気になった。オフィシャルに適応身長に関する記載はないが、マニュアルによるとサドルを一番下げてもBBからサドル座面までの垂直方向の高さが640mmまでしか下げられない(一般的な測り方でのサドル高だと660mm程度)ので、実質160cm前後の人でないと乗れないと思われる。調整そのものはしやすいだけに非常に惜しい。

 

また、クランクもペダルを取り付ける穴が1つしかない一般的なクランクのため、クランク長を変更するにはクランクを交換するしかない。標準で付いていたのは170mmのクランクだったので、小柄な人や大柄な人はクランク交換が必要になるかもしれない。

 

スマートバイクとしての基本的機能は非常に優れているが、気になるポイントも多いため、万人にはおすすめできないというのが個人的な意見だ。

 

(問)ガーミンジャパン(https://www.garmin.co.jp/

 

ステージズ・ステージズバイク-3台中もっともお値打ち価格

ステージズ・ステージズバイク(29万7000円※2022年4月1日より)

ステージズ・ステージズバイク(29万7000円※2022年4月1日より)

視界の正面にスマートフォンやタブレットを置けるホルダーがあり、ハンドル前方にスマホなどを置けるスペースもある。ズイフトをタブレットで楽しみ、コンパニオンアプリをスマホで起動する場合も2台併用できるようになっている

視界の正面にスマートフォンやタブレットを置けるホルダーがあり、ハンドル前方にスマホなどを置けるスペースもある。Zwiftをタブレットで楽しみ、コンパニオンアプリをスマホで起動する場合も2台併用できるようになっている

通常のバイクでいうところのダウンチューブの両脇に、ボトルホルダーが設置されている。自転車用のスクイーズボトルを2本置けるほか、ペットボトルの飲み物を置くこともできる。差し込むのではなく上に置くだけなので、ボトルをケージから抜いたりケージに差し込んだりするストレスとも無縁だ

通常のバイクでいうところのダウンチューブの両脇に、ボトルホルダーが設置されている。自転車用のスクイーズボトルを2本置けるほか、ペットボトルの飲み物を置くこともできる。差し込むのではなく上に置くだけなので、ボトルをケージから抜いたりケージに差し込んだりするストレスとも無縁だ

シフトレバーはステージズオリジナル。一般的なロード用のシフターのようにブレーキレバーの横に変速スイッチがなく、ブラケットの内側にある3つのボタンと、下ハンにある2つのスプリンタースイッチで変速操作などを行う。

シフトレバーはステージズオリジナル。一般的なロード用のシフターのようにブレーキレバーの横に変速スイッチがなく、ブラケットの内側にある3つのボタンと、下ハンにある2つのスプリンタースイッチで変速操作などを行う。

サドルの後退幅やサドルの高さなどを調整する際は、本体のメジャーの数字を実際のバイクの寸法と合わせて調整すればよい。例えばサドル高を70cmにしたければ、サドルの高さ調整用のメジャーを70cmのところに合わせればいい。実際のバイクの数字をそのまま利用できるのは便利だ

サドルの後退幅やサドルの高さなどを調整する際は、本体のメジャーの数字を実際のバイクの寸法と合わせて調整すればよい。例えばサドル高を70cmにしたければ、サドルの高さ調整用のメジャーを70cmのところに合わせればいい。実際のバイクの数字をそのまま利用できるのは便利だ

クランクアームには4つのペダル取り付け穴があり、取り付け位置を変更することでクランク長を165mm、170mm、172.5mm、175mmに変更することができる

クランクアームには4つのペダル取り付け穴があり、取り付け位置を変更することでクランク長を165mm、170mm、172.5mm、175mmに変更することができる

ステージズ・ステージズバイク Spec

価格:29万7000円※2022年4月1日より
設置面積(長さ×幅):158×56cm
重量:62.5kg
対応通信規格:ANT+BLUETOOTH
パワー計測の精度:±1.5%
最大パワー:2200W
シミュレーション可能な最大勾配:25%

適応身長:147~208cm
クランクの長さ:165mm、170mm、172.5mm、175mm

 

ステージズ・ステージズバイク-インプレッション-

 

ステージズ・バイクは、パワーメーターと自動負荷変動というスマートバイクに求められる必要最低限のシンプルな機能に絞り込んでいる印象だ。他のスマートバイクのような、本体の傾きで勾配を再現したり、振動で路面の凹凸を再現したり、バーチャル空間のスピードに合わせて風が吹くファンも搭載されていない。パワーメーターの精度も±1.5%と、ライバルと比べてやや見劣りする。機能を絞っている分、価格をできるだけ抑えようという意図なのだろう。スマートバイクにそこまでの機能を求めないという向きであれば、ステージズ・バイクはいい選択肢になり得るかもしれない。

 

ポジションの調整は非常にしやすい。本体の各部に刻まれている目盛りは、サドル高ならBBからサドルトップまでの実際のサドル高が記されていて、メモリの数字を自分のバイクの寸法と合わせれば大まかなポジションが出せるようになっている。タックスのように「本体から何cm出したか」ではないので、自分のバイクの各部のサイズを知っている場合はこの方がやりやすい。固定用のボルトも大きめの取っ手が付いていて、工具不要で手で回してボルトを緩めたり締めたりできる点にも好感を持った。

 

適応身長が147〜208cmと今回の3台の中で一番幅広い点も素晴らしい。トップチューブがないフレーム形状を採用しており、小柄な人でも乗り降りしやすくなっている点もよく考えられていると思う。ただ、残念なのは、クランク長を165mm、170mm、172.5mm、175mmの4段階しか設定できないことだ。日本人男性の平均身長よりやや小さめの人なら167.5mmクランクがちょうどいいという人も多いと思われるが、このサイズがないのでジャストサイズより長めか短めかの二者択一を迫られることになる。画竜点睛を欠くようで惜しい。

 

実際に使ってみて気になったのは、負荷変動のメリハリが他の2台に比べてかなりはっきりしていることだ。Zwiftのトレーナー難易度(勾配変化の感触を変更する項目。難易度が高いほど負荷の変動が大きくなる)を同じにしているにも関わらず、登りにさしかかると急激に負荷が強くなり、登りから平地に変わったときも、一気に負荷が弱くなった。他の2台に比べると実走感にはやや乏しいと言わざるを得ない。

 

変速レバーもオリジナルで、操作方法もロードの電動変速レバーとは全く異なる。ブラケット内側に3つのボタンがあるが、サイズが小さく、押した感じも固めでややストレスを感じる。慣れの問題かもしれないが、個人的にはこの部分ももう少しブラッシュアップしてほしい。

 

正面にあるスマホ・タブレットホルダーはボルト3本で固定されている。なので、パソコンのディスプレイやアップルTVなどでZwiftを楽しむ人は取り外すことで視界をクリアにすることができる。

 

価格は今回試した3台の中で一番お値打ちではあるが、この予算が用意できるなら個人的にはスマートトレーナーとロードバイクを購入する方がいいと思う。

 

(問)インターテック(https://www.intertecinc.co.jp/

 

スマートバイク購入時にチェックすべき5つのポイント

スマートバイクは安い買い物ではない。カタログスペックや価格だけで機種を選び、購入に踏み切るのはあまりにもリスキーだ。できる限り実物を見て、可能なら試乗してから購入することを強くおすすめする。最後にスマートバイク購入にあたってチェックすべきポイントについてまとめるので参考にしてほしい。

 

自分に最適なポジションが出せるか?

これは特に小柄な方は注目すべきポイント。サドルを最も下げ、ハンドルを最も近くしたときにサドルが高い、ハンドルが遠いと感じるようであれば、残念ながらその人にとっての最適なポジションは出せない。クランク長が変更できる場合、自分が普段使っているサイズが選べるかもチェックしよう。家族数人で併用する際は、ポジションの変更やそれぞれのポジションを簡単に再現できるかどうかも確認しよう。

 

音の静かさや振動はどうか?

今回チェックしたスマートバイクはいずれも、走行中の音が静かで、振動もほとんどないと感じた。しかし、音や振動の感じ方には個人差がある。許容できるレベルかどうかは実際に試乗してみないと分からないので、可能な限り試乗してみることをすすめたい。

 

負荷変動はどうか?

今回はZwiftを利用してスマートバイクの性能をチェックしたが、同じトレーナー難易度でもバーチャルの勾配変化と負荷の変動の仕方には大きな差があった。負荷変動は実走感の高さを左右する重要なポイントなので、実際に試乗してチェックしたい。その際、Zwiftを使うならZwiftと組み合わせてチェックするなど、実際の使用環境を想定して行うこともお忘れなく。

 

シフターの操作性など、官能性能はいいか?

変速やバーチャルサイクリング中のアバター操作などを行うシフターは、各ブランドで形状や仕様が大きく異なる。ブラケット形状は握りやすいか、スイッチ類は押しやすいかなど、実際に試乗して使い心地をチェックしよう。ブラケットの形がしっくりこない、ボタンが押しにくい、スイッチの位置が気になる——など、何か違和感があれば、それは後々ストレスになる可能性が高い。

 

使用するデバイスとホルダーなどの機能がマッチしているか?

スマートバイクによっては、タブレットやスマートフォンを置くためのホルダーが標準装備されているものもある。実際にメーカーの想定通りのデバイスでバーチャルサイクリングを楽しめばとても便利ではあるが、タブレットを使わない場合はこのホルダーそのものが無駄になることもある。パソコンやアップルTVなどでZwiftを利用する場合などは、ホルダーが視界を妨げるケースも考えられる。自分の使用環境と照らし合わせて細部までチェックしよう。