チャプター2・トア–アサノ試乗します!その40
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トアはチャプター2の集大成ともいえるオールラウンダー。バイクの名前は、ニュージーランドの先住民マオリの言葉で「戦いに勝利する」という意味を持つ。パフォーマンスオールロードのテレとグラベルロードのアオの多機能性にヒントを得て、2年半もの歳月をかけて開発された1台だ。
トア-オールラウンダーをベースにエアロと快適性を備えた1台
その特徴を一言で言うと、「オールラウンダーをベースにエアロと快適性を備えた1台」となるだろう。
フレームは前三角をラテックスマンドレル(芯材)で一体成形。カーボンの積層や繊維の方向などを身長にコントロールして剛性バランスを整えている。さらに剛性が求められるヘッドチューブ周辺やBB付近は、東レのハイモジュラスカーボンを使うことで剛性と快適性のバランスを整えている。
空力性能の追求は、エアロバイクのココやレレなどに通じるものがある。フレームのヘッドチューブ周辺とフロントフォークに一体感を持たせたデザインを採用し、ダウンチューブなどにカムテール形状を採用することで、空力性能を強化。さらにオプションのマナハンドルバーを組み合わせることで、ハンドルまわりも含めてケーブルのフル内装化も実現可能だ。
さらにしなりやすいシートポストを採用したり、ダウンチューブ接合部を低くしてシートチューブ自体をしなりやすくするなど、快適性も追求。ディスクブレーキ専用で最大32mm幅のタイヤをはきこなすなど、最新ロードレーサーが太めのタイヤに対応するトレンドもしっかり抑えている。
フレームカラーは、ニュージーランド北島の国立公園をイメージしたトンガリロ、ニュージランドの盾状火山をイメージしたトゥワ(ブラック)、大洋を意味するモアナ(ブルー)の3色から選べる。
トアの細部-オールラウンド×エアロを感じさせるディテール
トアは、最近のオールラウンド系ロードレーサーの「オーソドックスなフレームデザインの中にエアロの要素を落とし込む」というトレンドを採用している。
その象徴と言えるのがフレームのダウンチューブなどに採用されたカムテール形状であり、フォーククラウンとフレームのヘッドチューブ付近を一体感のあるデザインに仕上げていることだろう。ケーブルの内装化はフレームにとどまらず、オプションのマナハンドルバーと組み合わせることで、コックピットまわりも含めてケーブルのフル内装も可能にしている。これらはいずれも空力性能の面で有利なデザインだ。
さらに快適性を高める工夫が随所に見られるのも特徴だ。シートチューブをしなりやすくして路面からの振動を吸収しやすくするため、シートステーの接合部をトップチューブとの接合部より低くしているほか、最大32mm幅のタイヤをはきこなすこともできる。
走行性能に加え、快適性も高めようとするテクノロジーが散りばめられており、このバイクが当代のオールラウンダーを志向したバイクであることが分かる。
TOAをインプレッション-見た目や軽さは普通だが、速く走れて楽しいバイク
期待をいい意味で裏切られるとはこのことか。
正直なところ、最初はそれほど期待していなかった。カタログスペックではフレーム重量は1000gオーバー。ディスクブレーキ専用フレームだとしても、決して軽い部類ではない。
フレームのシルエットもシートステーの接合部が低くなっている最近のトレンドは抑えているが、主張はそれほどない。ただ、ペイントはものすごく凝っていて、カタログで見る「モアナ」と呼ばれるブルー基調のモデルは、フォークの内側にブルーのグラデーションが施されていてかなりかっこいい。試乗車はトンガリロという植物を思わせるアースカラーのフレームだったが、トップチューブの幾何学模様が非常に個性的だ。このペイントワークはマスプロメーカーではまずお目にかかれない非常に手の込んだものだ。
マニア的に琴線に触れるのは、BB規格にT47を採用していることだ。クリスキングが提唱したこの規格は、簡単に言えばプレスフィット30規格にねじ切りを加えたもの。フレーム内にアルミスリーブが設けられるため軽量化には向かないが、BBまわりの剛性が高く音鳴りがしにくい。また、30mmクランクシャフトにも対応しやすいというメリットがあるため、さまざまなクランクを選びやすいという特徴がある。フレームセットで購入してコンポなどは好みのパーツを付ける“バラ完”で組むと考えると、パーツ選びの選択肢が広がって楽しい。
そんなわけで過剰に期待をすることなく、非常にニュートラルな精神状態で走りだしたのだが、スペックの重量からは想像できないほどの軽快な走りが印象的だった。特にそれを感じたのはガツンと一気にトルクをかけて加速する、レースでいうとアタックの場面のような走りをしたときだ。上下1.5インチのベアリングを持つヘッドチューブ付近は東レのハイモジュラスカーボンで成形されているというが、ハンドルを引きながらペダルを強く踏み込んでもヘッドまわりが踏ん張ってくれるので、上半身の力をペダルの踏力として伝えやすい。さらにヘッドチューブからダウンチューブ、BBへとつながるセクションも剛性が高く、踏力が逃げない。だからよく進むのだろう。
フレームの前三角やヘッドチューブまわりの剛性の高さは、下りでは意のままのハンドリングという形で、ブレーキング時は安定感という形でライダーをサポートする。開発者のマイク・プライド氏は、「ヘッドまわりやBBの剛性はバイクの走りの要」と話していたが、それを具現化したような剛性チューニングだ。
空力性能に関してはエアロロードと比べれば劣るものの、いわゆる一昔前の軽量レーシングロードのような高速域での頭打ち感は少ない。登りもクライミングバイクほどのキレはないが、そつなくこなす。カタログスペックだけでは想像できなかったが、走っていて相当気持ちいいバイクだ。
最大32mm幅のタイヤもはけるため、いわゆるオールロード的な使い方もできそうだ。個人的には、山岳コースのロングライドをハイペースで駆け抜けるような走り方、それも舗装の荒れた林道を組み込むようなとびきりハードなライドに向いているのではないかと感じる。タイヤの選択次第ではライトなグラベルも行けるかもしれない。もちろんレースにだって出られる。非常に守備範囲の広いバイクだ。
TOA-スペック-
フレームセット価格:45万3420円〜47万6190円
素材:カーボン
サイズ:XS、S、M、L、XL