アラフォーおっさんず挑戦記 気にはなっているけどハードル高そうなトライアスロンにチャレンジ!
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サイクルスポーツを運営する八重洲出版には、記事を作る編集職と、雑誌やウエブの広告を売る広告営業部という部署がある。編集と広告は時に連携し、時に喧嘩する。記事の内容について、営業は自分のクライアントに不利があってはならないと、編集の記事に意見する。それに対して、編集は読者に伝えたいことがあるので突っぱねたりする。
日夜、その繰り返しだ。サイクルスポーツ.jpの編集長である中島と、広告営業部の松村の関係はまさにこれ。
松村に「頼むよナカジー」、中島「やだ」っとこうだ。
そんな松村が、2019年の春につぶやいたひと言が冒頭の
「1人で行くの寂しいから一緒にトライアスロン出ようよ」
である。
聞けば、昨年も木更津トライアスロンに1人で参加したが、まわりはチームや仲間と参加しているのに対して、1人で参加の松村は準備を協力することも、苦労をわかちあうこともできずになにか物足りなさを感じたらしい。(もちろん、トライアスロンは個人競技だし、仲間と参加しなきゃいけないなんてこともない。実際1人の人もいる)。とはいえ、寂しがりやの松村は仲間が欲しかった。
中島は、「毎年新しいことに1つチャレンジする」という、個人的な目標がある。よし、今年はトライアスロンだ。「じゃあ参加しますよ、木更津トライアスロンに!」と、言ってしまった。泳げないのに……。
とはいえ、いろいろとトレーニングを積み、どうにか木更津トライアスロンに出られそうな感触をつかんだ中島。無事に当日のスタートラインに並んだ。
今回出場する木更津トライアスロンは、オリンピックディスタンスと呼ばれる距離。スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの計51.5kmで争われる。その名の通り、オリンピック種目になっている長さだ。
会場となるのは陸上自衛隊木更津駐屯地。ここの目の前の海、東京湾を泳ぎ、滑走路をバイクとランで走るのだ。オリンピックディスタンスの参加者は1062人。
最初にして最大の難関、スイムパートへ
最初のスイムは各クラスがウェーブごとにわかれてスタートしていく。浜からのスタートではないので、入水して少し泳いだところからのフローティングスタートだ。号砲一発、泳ぎ出す!
コースは四角形。1周750mのコースを2周する1.5km。波間に見えるブイを頼りに泳ぎ進める。これまで、25mプールをひたすら往復するばかりの練習(1度だけオープンウォータースイムの練習会に参加した)だったので、最初はあまりのブイの遠さに焦る。しばらく泳いだら、たまらず背浮き(ウエットスーツを着用しているので、仰向けになって脱力すれば自然と浮く)して休憩、また泳ぎ出すの繰り返し。
どうにか最初のブイをターンする。「これをあと7回か……」と絶望的な気持ちになる。しかもまっすぐ泳ぐのが難しく、ヘッドアップしては自分の向かうべき方向を確認しながらまた泳ぐの繰り返し。上手くなると、最短距離を泳げるようになるらしい。這々の体で、1周目を泳ぎ切り、自分が2周目に突入する頃には別のウェーブがどんどんスタートしてしまっていた。焦ってもしょうがないので、とにかく自分のペースで泳ぎ切ることを目指す。2周目はすこし慣れてきたのか、背浮きで休むこともなく意外に良いペースで泳ぎ進めることができた!それでも、やはり盛大に蛇行していたようで、フィニッシュ後にデータを見たらなんと2kmも泳いでいた。そりゃ遅いわけだ。
やっとの思いで陸に上がり、トランジットエリアへと駆け足。途中でウエットスーツの上半身だけ脱ぐ。その下にはトライスーツと呼ばれる、ワンピースのサイクルジャージを着用している。ただパッドは、ロード用よりも簡素で幅の狭いものだ。ランでの動きやすさを考慮してのこと。
陸に上がってバイクに乗れる喜びに震える
ウエットスーツから脚を抜くのに苦労しつつ、バイク用のゼッケンを腰に巻いてバイクパートをスタート。周回コースを6周する40km。最初は飛ばしすぎないように、アップのつもりで1周走る。フラットで、直線の多いコースなので、DHバーポジションを多様できる。ただ、滑走路という環境ゆえに風を遮るものが何もない。追い風区間は良いが、向かい風区間は我慢の走りだ。一応、ロードバイクには乗ってきただけあってかなり良いペースで走ることができた。周りの選手をどんどんパスできる! 途中、先にスイムアップしていた営業松村をラップ!スイムの時は文字通りずぶずぶだったけれど、一気に巻き返し。しかし、はやる気持ちを抑えつつオーバーペースには気をつける。バイクの後にはランが残っているのだ。
事前の練習で、何も気にせずにバイクで走った直後にランと、連続して走ってみたのだが、びっくりするくらい脚が動かない。バイクに乗らずにランニングしたときとペースを比べると、1分/kmは遅い(ランニングのペースは、1kmをどれくらいのタイムで走るかを目安にするのだ)。なので、バイクパートでのオーバーペースには警戒していた。
灼熱の滑走路をひた走るランパート
バイクパートを無事に終え、いよいよ最後のランへ。目標である完走は、ほぼ見えてきたので気持ちには余裕があった。飛ばしすぎずに走れば大丈夫だ、あせるな、まず目標は完走なのだ。はやる気持ちを抑えつつ走り出す。しかし暑い。ランパートも滑走路を走るがゆえに、太陽光を遮るものが何もないので、ひたすら太陽に焼かれる。バイクパートもそこは同じだが、スピードが出ているぶん風を受けていた。ランのスピードではそうもいかない。聞けば、昨年はその暑さゆえに距離が短縮になったそうだ。2.5kmのコースを4周する10km。給水ポイントがコース上に2か所設けられているので、水を飲み、バケツの水をかけてもらい、とにかくクーリング。暑さ対策を最優先した。最初の2周はとにかくオーバーヒートしないことを最優先に。
周りを見ると、足がつってしまった選手が何人も……足を引きずって、苦悶の表情を浮かべている。反面、速い人は本当にバンバン飛ばしていく。バイクパートでは順位を一気に上げた自分だが、ランでは、またばんばん抜き返される。むむむ。しかし、ちょっとペースを上げてみようと試みると、たちまち体がオーバーヒートを起こしそうになる。だめだ、抑えて。
ランに入る時は、完走が見えてきたなんて思っていたが、ちょっとでも気を抜いたら心が折れそうだった。トライスーツの背中のファスナーを開けて呼吸をラクに。掛水をしたせいで、シューズが濡れて重い……。それでも、どうにか暑さに対応できてきて後半2周は、少し余力があったのでペースを上げることにした。
ラストラップ、周回コースから外れてフィニッシュゲートがある方へ。おお、ついに!!! 4月からはじめたトレーニングの集大成がまっている。トレーニングしていることは、自分のSNS等に書いていたので、リタイヤしたらどうしようという不安を持ちながら走っていたが、ついに待望の瞬間を迎えるのだ。
フィニッシュテープをわしづかみ!
メダルをかけてもらい、水を飲む。「ついにやった」その達成感が全身からわき上がってきた。ありがたいことに、友達がわざわざ応援に来てくれていた! 周りでも他の選手が家族と一緒にフィニッシュテープを切ったりしている。トライアスロンのフィニッシュってこんな雰囲気なんだ!その後、自分をトライアスロンに誘った弊社松村も無事にフィニッシュ。これにておっさん2人の木更津トライアスロン挑戦は終わった。
中島リザルト
タイム 3:01:36 604位
スイム 0:48:09 1004位
バイク 1:16:09 143位
ラン 0:57:18 578位
カナヅチサイクリストがやったトレーニングとは
中島にとって最大の難関は、いわずもがなスイムである。その次はランが不安……。とにかく泳ぎ切って地上に上がらないことには専門分野のバイクにまたがることも許されないので、とにかくスイムを強化すべく今年の4月からひたすら泳いだ。仕事終わりにおっさん松村と2人でプールに通ったのである。幸いにして、職場のそばの小学校が夜間一般解放を行っていたので、通うのはそれほど苦ではなかった。
トレーニングジムでのトレーナー経験のある松村についてもらって、スイムの練習に取り組んだ。とはいえ、中学校の体育の授業を最後に泳いだことがない中島は、25m泳ぐのがやっと。そこから50m、100mと徐々に距離を伸ばしていった。まず水に対する恐怖心をなくしながら、息継ぎを焦らずに行う余裕を身につけるまでが大変だった。1カ月ほどかかっただろうか……。
ビート板に片手で捕まって、もう片方の手だけで泳ぐ練習をしたり、両脚の間にビート板を挟んで追いだり。ランで言うところのダッシュをスイムでやったりという、おそらくは基本的な練習。そして、何より長い時間泳ぎ続けられないといけないので、とにかく泳ぎ続ける練習。これらを、今日はこれ、次の時はこれとこなしていった。平均して週に2回はプールに行く日を作った。
オフィスでは”編集長”と”営業松村”だが、水に入れば”生徒”と松村コーチである。これらの練習メニューも、松村コーチから伝授されたものだ。初めての種目については、やはり人に習うのが確実で早く上達できるので、身近にコーチがいたのはトレーニング環境として恵まれていたといえるだろう。普段はダメ出ししている中島が、逆にダメ出しされてそれを改善するという逆の立場に。これは、結果的に仕事でもチーム感が高まってよかった。
クロールで泳ぐわけだが、長時間泳ぐための筋力をサイクリストが備えているわけもなく、自転車に乗っているときにはなったことがない、腕周りの筋肉痛にさらされた。自転車と同じように体幹の強さは必要で、体をローリングするときに軸がぶれないよう、脚の間にビート板を挟んで泳ぐ練習もした。効率よく腕を回し、水の抵抗が少ないフォームで泳げるようになる事が、速く泳ぐためのコツだそうで、このあたりはペダリングやポジションにも通じるものだなと納得した。そして、ようやく1km泳げるようになったころに知ったのは、「海とプールは、実は全く違う」という事実。なんてこった。
オープンウォータースイムの練習へ
事前に1度は海で泳いだほうがいいということで、トライアスロンショップ「アスロニア」が開催しているオープンウォータースイムの講習会に参加してきた。その時の海はなかなかにうねっていたが、それがいいトレーニングになった。講師の方が「こんなに波がある海で泳ぐことは、トライアスロンではまずない。今日の波の中で泳げたことに自信を持っていいですよ!」と言っていたのを素直に信じることに。
ランとバイクは週末や平日の朝に少し時間を取って取り組んだ。特にバイクパートの距離は、これまで普段から練習で走っていた距離よりも短い(40km)ので、気持ち的にはかなり楽に取り組めたし、バイクに乗る準備をするのが面倒だな……と思える日でも、それならランに出かけようというふうに、ポジティブに切り替えてトレーニングできるのは自分にとってとてもプラスだった。また、初心者ゆえにランのタイムがどんどん良くなるのは単純に楽しい! これはスイムにも同じ事がいえた。ま、実際のタイムはまだまだ遅いのだけど……。
初トライアスロンで面白いと感じたのは、3つある競技の中で自分の得意不得意を理解して、それに合わせたペースで競技を進めるところだ。あくまで自分との戦いだけれど、自分なりに追い込むことができる。いま持っているロードバイクで新しいことにチャレンジしたい! と悶々としている人はトライアスロンに挑戦してみてはどうだろうか。
ここまで書いたとおり、サイクリストはバイクパートのパフォーマンスはある程度のレベルを満たしている。ゆえに、ランとスイムをどれだけ強化できるかがポイントだ。それには準備期間が長ければ長いほどいいだろう。中島も4カ月半を準備に当てたので、どうにか完走できたという実感がある。来年の大会に向けて、準備を始めるならこの時期からなのだ。
ちなみに来年の木更津トライアスロンは6月14日開催予定。