カレラ2022モデル登場 シンボル的モデルがディスクブレーキ化

目次

フィブラ2022

イタリアンブランドであるカレラが、2022年シーズンモデルをリリース。エントリーモデルのSL1(ディスクブレーキモデル)と、ロングセラーを続けるフィブラの最新モデルであるフィブラディスクの2機種を紹介しよう。

 

レースシーンで鍛えた実力派

カレラはイタリアのロンバルディア地方に拠点を設けるイタリアンブランド。1989年、元プロロード選手のダヴィデ・ボイファーヴァとルチアーノ・バラキの2人によって創設された。ブランドの名前の由来はデニムとポルシェ(商標の取得に至るまでは、さまざまな話し合いがもたれたという)。

90年代当初からプロチームへの供給を行っており、イタリアのトップチームであるカレラジーンズが代表的だろう。グランツールでは山岳王と呼ばれたクラウディオ・キャプーチ、稀有なるヒルクライマー故マルコ・パンターニらを擁し、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスでの活躍により、当時のテレビ放送などで日本のファンの目にもその活躍は目に焼き付いているはずだ。その後もイタリアを中心にプロチーム供給を続け、ミケーレ・バルトリ、パオロ・ベッティーニ、イヴァン・バッソといった往年のチャンピオンたちが駆り勝利を量産。プロ通算500勝に貢献しているという。

これまでスチール〜アルミ〜カーボンとフレーム素材は移り変わってきたが、常に斬新な素材や形状設計を取り入れており、アイデンティティを確立し続けてきた。現在まで引き継がれるシンボル的なモデルは、今回紹介するフィブラシリーズだ。フィブラといえば、2008年にデビューした初代フィブラは、ラウンドしたチューブと極太のダウンチューブが印象的な、どことなく有機的なデザインで当時の話題をさらっていった。今回試乗したフィブラディスクは5代目となる。

カレラは2021年、創業者のダヴィデ・ボイファーヴァから息子のシモーネ・ボイファーヴァへと世代交代を果たした。それから間もなくフィブラネクストの次期モデル、フィブラディスクが発表となる。第二世代シモーネ最初のニューモデルだ。「フィブラはカレラのアイコンとなった形状設計。比類なき美しさを発揮しているね」とはシモーネの言葉。世代が変わってもイタリアンブランドとしての精神に変わりはないのだ。

 

RIDER:山本健一

山本健一さん

ライター・編集者・イベントディレクター。学生時代から自転車にどっぷりとハマり、2016年まで実業団のトップカテゴリーで走った。自身の経験に裏付けされたインプレッション系記事を得意とする。日本体育協会公認自転車競技コーチ資格保有。

 

カレラのアイコン フィブラも第5世代へ PHIBRA DISC

フィブラディスク

カレラ・フィブラディスク

 

フレームセット価格/ 29万7000円
フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
メインコンポ/シマノ・アルテグラ R8000
ホイール/ヴィジョン・メトロン40ディスク
タイヤ/ハッチンソン・セクター 700×28C
ハンドル&ステム/ヴィジョン・メトロン5D ACRインテグレーテッド
サドル/サンマルコ・ショートフィットレーシン
グブラック
シートポスト/カレラ・フィブラ専用
サイズ/ XS、S、M、L、XL
カラー/2色
試乗車重量/ 7.66kg(ペダルなし)

 

ダブルアーチ構造(快適性を担うコンフォートアーチのトップチューブとバックステー、剛性を担うパワーアーチのダウンチューブを組み合わせるという概念)をもって自由度の高いジオメトリを実現した第5世代フィブラ。前作との大きな違いはディスクブレーキ対応になったこと、また剛性とハンドリング性能が大きく向上した。フレームは弾性率の異なる3種類のカーボンと航空宇宙産業で採用されるレジンを用いている。それらを最新のモールディング工法を用いて成型したことで、最高レベルの重量比剛性を実現。さらに形状設計においてはエアロ効果が向上し、快適性・パワー伝達性能との両立を果たしている。シモーネは「ずっと乗り慣れた自転車に乗った気分」とその印象を述べている。

 

DETAIL

フィブラディスクのダブルアーチ構造

トップチューブは快適性、ダウンチューブはパワー伝達性を両立する形状のダブルアーチ構造

フィブラディスクのシートチューブ

リヤホイールに沿った形状のシートチューブは空気抵抗軽減を狙う

フィブラディスクのシートステー

シートステーにはブリッジが設けられ横剛性を確保している

 

IMPRESSION 優れたクライミング能力と快適な巡航性能

フィブラディスクに乗る山本さん

10年以上にわたってブラッシュアップを続けているフィブラ。新たにディスクブレーキを搭載し、設計は大幅に変更が加わっているようだが、ラウンドしたトップチューブとチェーンステーが印象的なダブルアーチ構造は健在だ。そのおかげでメリハリの効いた走りが楽しめる。平坦などイーブンペースで走行しているときには、足に優しくコンフォートな印象を受けるが、いざヒルクライムセクションに入ると反応がよくリズミカルで軽快な走りが楽しめる。ユニークなデザインもさることながら、カーボンファイバーの素性の良さも感じさせる。パワー伝達性能と快適性という相反する能力を高次元で両立しており、当然レースに最適であるが、いくつも峠をつないだファストライドなどにも向いているだろう。

 

GEOMETRY

フィブラディスクのジオメトリ図

SIZE

フィブラディスクのサイズ表

 

ライドの興奮と喜びを提供するエントリーモデル SL1

SL1

カレラ・SL1

 

フレームセット価格/ 16万5000円
フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
メインコンポ/シマノ・105 R7000
ホイール/ヴィジョン・SC40
タイヤ/ハッチンソン・セクター 700×28C
ハンドル/ FSA・ヴェロコンパクト
ステム/ FSA・オメガ
サドル/サンマルコ・アスピデショートオープン
フィットダイナミック
シートポスト/ FSA・ゴッサマー
サイズ/ XS、S、M、L、XL
カラー/2色
試乗車重量/ 8.11kg(ペダルなし)

 

2022年モデル、カレラのエントリーモデルはER01とこのSL1である。ロングランドを主眼に置くER01に対して、このSL1はよりレーシングな性格を持つフルカーボンフレームだ。エントリーモデルながらカレラの独特の非対称フレーム構造を進化させ、カーボンレイヤーの積層構造をブラッシュアップ。ノンドライブサイドの剛性・強度をアップ。さらにフレームの大きなストレスを受ける箇所を強化し、パワー伝達性とスプリント時の反応性を高めている。さらに疲労試験においては、標準をはるかに上回る結果を残すなど、性能面においてエントリーグレードの域を超越している。さらにデザインにも妥協がない。シモーネは「エントリーレベルのバイクとは思えない」と語ったという。

 

DETAIL

SL1のフォーク

緩やかにベンドした形状設計のオリジナルカーボンフォーク

SL1のBB

BBシェルは非対称設計を施し、力が加わる側のねじれ剛性を高めている

SL1のシートポスト

レギュラータイプのφ27.2mm径のシートポストを採用している

 

IMPRESSION 優れたクライミング能力と快適な巡航性能

SL1に乗る山本さん

「重量はライドフィールに大きな影響を与えない」そんな格言のひとつを実証しているのがSL1だろう。ディスクブレーキを搭載したことで、エントリーグレードの枠に収まらないパフォーマンスを実現している。BBシェルいっぱいにまで広げた大口径チューブがペダリングパワーをしっかりと動力として伝えている。当然、上りでも性能が発揮されており、どんなレベルのサイクリストでも爽快な走りを楽しめるだろう。一方で優しい乗り心地はフロントフォークまわりで感じられる。僅かにラウンドしたフォークがフロントまわりの快適性を演出しつつ横剛性も保っていて、バランスのとれた設計であることが分かる。エントリーグレードとしてはハイスペック。中堅モデルといっても遜色はない。

 

GEOMETRY

SL1のジオメトリ図

SIZE

SL1のサイズ表