カンパニョーロ・シャマルカーボンDB–アサノ試乗します!番外編
目次
カンパニョーロ・シャマルカーボンDB 2WAY シマノ(21万4500円)
さまざまなバイクを乗り比べ、その特徴や性能、パッケージングから、どのようなサイクリストに向くかまでチェックしていく本連載。今回は番外編としてカンパニョーロのディスクブレーキ用ホイール「ゾンダDB」「シャマルカーボン」「ボーラWTO33DB」を乗り比べる。第2弾はエンデュランスカーボンホイール・シャマルカーボンをチェックする。
シャマルカーボンの細部:快適性を重視したエンデュランスホイール
シャマルカーボンは、カンパニョーロ初のエンデュランスホイール。かつてカンパニョーロのアルミリムホイールの最高峰だったシャマルの名を冠するが、21Cとワイドなカーボンリムを採用し、ディスクブレーキ専用となったまったくの別物だ。カンパニョーロのカーボンリムホイールの中では最も手の届きやすい価格を実現しているのも特徴だ。
ワイドリムでより太いタイヤとマッチしやすくなったことに加え、2ウェイフィットでクリンチャーだけでなくチューブレスでの運用も可能なことから、快適性を重視したホイールであることがわかる。スポーク組みはカンパニョーロの象徴とも言えるG3パターンで本数は前後とも24本。重量は前後ペアで1585gだ。
リムハイトは前35mm、後40mm(写真はリアホイール)。リム外幅はいずれも28.1mm。スポーク組みは、前後輪ともにG3 パターンの24本だ。前輪は左側のブレーキ側から16本、ドライブ側から8本、後輪は左側のブレーキ側から8本、ドライブ側から16本という組み方になっている。フロントのブレーキ側、リアのドライブ側を強化する目的なのも前回紹介したゾンダと同様だ。
ハブボディは駆動伝達効率を高めるためアルミ製を採用。フリーボディにはスプロケットのセレーションのかみ込みを防ぐためプラズマ電解酸化処理が施されているが、これは他のモデルと同じだ。ハブフランジは後輪はドライブ側、前輪はブレーキ側により大径のフランジを採用している。シャマルカーボンでは大径のフランジ側はJベンドスポークを採用しているが、これは主にコストを抑えたり生産性を高めるなどの狙いがあると思われる。
ディスクブレーキローターの取り付け方式は、ロックリングで固定するAFS仕様のみ。ロックリングは外周に溝がある外セレーションタイプで、BB用のツールを使って着脱する。
後輪のブレーキローター側と前輪の非ブレーキローター側のハブフランジは、ドライブ側と比べて小さく、スポーク数も半分になっている。スポークはこちら側にはストレートプルタイプを採用している。
ベアリングは理想的な玉当たりを出しやすく、整備も容易なカップアンドコーン式。マイクロ・セッティング・テクノロジーを採用した調整ロックにより、遊びの発生もしっかり抑える。USB&CULTベアリングへのアップグレードキット(別売)も用意されている。
スポークはニップル側とハブフランジ側の両端が太く、中央部が細くなっているダブルバテッドの丸スポーク。ゾンダのスポークと似ているが、メーカーによるとシャマルカーボン専用に設計されているという。ニップルはアルミ製のブラック・アノダイズド・セルフ・ロック・ニップルを採用し、リムの外周部に配置。スポークテンションが緩みにくく、メンテナンス性も高い。
リム内幅は現行のカンパニョーロのロードバイク用ホイールでは最も太い21mm。タイヤは700×25Cから700×50Cまで装着可能とメーカーはうたう。フレームとの相性にもよるが、ロードレースで使うような細めのタイヤから太めのグラベルタイヤまで組み合わせられる汎用性を誇る。
付属のチューブレス用バルブとチューブレスタイヤを組み合わせることで、チューブレスホイールとして運用でき、インナーチューブを入れてクリンチャーホイールとしても使える2ウェイフィット仕様。チューブレスで使えばクリンチャーより低い空気圧に設定でき、衝撃吸収性や乗り心地を犠牲にすることなく転がりの軽さも獲得できるため、ロングライド向けの快適なセッティングを行いやすい。クリンチャーに加えチューブレスのタイヤも選択肢に入るため、使えるタイヤの種類が多いのも魅力だ。
SHAMAL CARBON DB 2WAY シマノ
価格:21万4500円
素材:カーボン(リム)、ステンレス(スポーク)、アルミニウム(ニップル)、アルミニウム(ハブ)
スポーク本数:24本
リム高さ:前35mm、後40mm
カタログ重量:1585g(前後)
インプレッション-快適に速く走るためのエンデュランスホイール
カンパニョーロのシャマルと言えば、アルミリムホイールの最高峰という認識だった。しかし、今回テストするシャマルカーボンはカーボンリムを採用し、ディスクブレーキ専用となり、エンデュランスホイールというキャラクターを与えられたというから、以前のモデルとは全くの別物だ。
エンデュランスホイールとは何なのか? まずはそんな疑問が浮かんだ。試乗してまず強く感じたのは、「レーシングホイールのような走行性能のみに振ったホイールではない」ということだ。
重量は前後ペアで1585gと、チューブレス対応であることを考慮しても特別軽量ではない。正直なところ、上りでやや重さは感じるし、レースでのアタックのような瞬間的に出力を上げたときにもレーシングホイールほどの切れ味はない。ロードレースのようなガツンとアタックして一瞬の切れ味で勝負するような走り方や、ヒルクライムレースで軽さを武器にタイムを削るような走り方をしたいなら、このホイールはあまり向いていないと思う。
だが、下りやコーナーでは安定感が高く、グリップに関してタイヤの性能をよく引き出している印象だ。平坦でもよく走り、高速巡航性能もゾンダDBより高い。さらに快適性も上々だ。上りはそこそこでも、下りやコーナーを安全に走ってもなんとなく速く走れていて、快適性もあってトータルではラクに速く走れそうな印象だ。
カンパニョーロが言うエンデュランスホイールとは、「ロングライドを淡々と速いペースで気持ちよく走るためのホイール」なのだと感じた。
太めのタイヤと相性がいいワイドリムがこのホイールのキモ
下りやコーナーでの安定感があり、高速巡航も無難にこなすシャマルカーボンの走りを決定づけている大きな要素は、内幅21mm、リムハイト前35mm後40mmと、ワイドかつハイトが高めのリムだろう。
シャマルカーボンが採用する21Cリムは、カンパニョーロのグラベル用を除くロードバイク用ホイールの中では最もワイド。リムがワイドになることのメリットは太めのタイヤとの相性がいいことだ。特に新エトルト対応のタイヤでは、700×28Cタイヤは21Cリムに履かせたときに幅が28mmになるように設計されている。これより細いリムでは装着時の実測幅は細くなって縦に長くなるため、コーナーなどでよじれて腰砕け感が出てしまうのだ。
実際、ゾンダDBではややもてあましていた感のあるピレリ・Pゼロレース700×26Cタイヤも、シャマルカーボンはそつなく履きこなしていた。エアボリュームは確保されて快適性は高いのに、タイヤがよじれにくく、コーナーも安心だった。ただ、エンデュランスホイールをうたうだけに700×26Cタイヤは若干このホイールには細いような気がして、700×28Cタイヤの方がこのホイールのキャラクターには合っているように思われた。
ロードバイクのホイールやタイヤの幅は、リムブレーキ時代はフレームやフォークのクリアランスだけでなく、ブレーキキャリパーによる制約も受けていた。しかし、ディスクブレーキ化によってフレームやフォークのクリアランスのみが制約条件となったからか、ここ数年のホイールはリムがワイドになり、それに合わせてタイヤも太めのものがスタンダードになっている。シャマルカーボンがディスクブレーキ専用となり、21Cリムというワイドなリムを採用したのも、トレンドに則った変化といえるだろう。
さらにシャマルカーボンで特筆すべきポイントは、クリンチャーとしてもチューブレスとしても使える2ウェイフィットを採用していることだろう。しかもリムテープが不要なので、チューブレスレディにありがちなリムテープ貼り付け不良や劣化などが原因のエア漏れや、クリンチャータイヤ使用時のリムテープのエッジでチューブが傷ついてパンクするトラブルが皆無というのもいい。
チューブレスで使えば、快適性重視で空気圧を低めにしても走りの軽さが犠牲になりにくく、快適かつ軽快な走りを高い次元で両立できるはずだ。チューブレスはタイヤの選択肢も増えているし、パンクのリスクもシーラントを使えばクリンチャーより少ないぐらいだし、たとえパンクしたとしても簡単に修理できるリペアキットもあるので、以前ほどのデメリットもない。このホイールを使うならチューブレスタイヤを組み合わせたい。
ロングライドが主戦場だが、グラベルも行ける
シャマルカーボンは、ロードレースに使うような細めの25mm幅タイヤからグラベル用のタイヤにラインナップされるような50mm幅のタイヤまで対応する。2ウェイフィットなので、もちろんチューブレスでの運用も可能だ。この汎用性の高さはシャマルカーボンの魅力と言えるだろう。
これを踏まえると、このホイールの良さが生きる用途はロングライドということになるだろう。長い上りではやや苦戦するかもしれないが、レースのように速さを競うのでなければこの点はある程度無視できる。逆に下りやコーナーでの安定した走りによって、気持ちいいペースで走る楽しさを存分に味わわせてくれるはずだ。また、チューブレスで運用したときの快適性、走りの軽さもロングライド向きと言える。
また、フレームとの相性にもよるが、太めのグラベルタイヤを履かせればジーブロードぐらいなら普通にこなせそうだ。個人的には32mmぐらいのグラベル対応のスリックタイヤを履かせ、エンデュランスロードやオールロードと言われる太めのタイヤを履きこなすバイクと組み合わせて舗装路からライトなグラベルまで1台でこなすバイクを作るのに使いたい。