2022全日本選手権男子エリート コメントレポート 新城幸也から学ぶもの

目次

2022全日本ロード コメント

男子エリートの表彰式

6月26日、男子エリートの全日本選手権ロードレースを一部の選手たちのコメントを切り取り、さまざまな背景とともに振り返る。そして勝った新城幸也の強さの理由を考える。

 

真夏の気候下での熱戦

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前年チャンピオンの草場がスタートライン先頭に並ぶ。その後、金子と兒島も先頭でスタートした

 

6月26日(日)、朝8時にスタートしたからマスターズ各カテゴリーの激戦が終わった後、11時からはこの全日本選手権のオーラスを飾る男子エリートのレースが行われた。今年は、広島県中央森林公園のサイクリングロード12.3㎞のコースを15周する184.5㎞。時折雲がかかるものの、日差しも強く、気温も30度以上と厳しい蒸し暑さがあった。

前年度男子エリートチャンピオンの草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、前々日のタイムトライアルで勝利した金子宗平(群馬グリフィンレーシンチーム)、前年度男子U23チャンピオンの兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)がスタートラインの先頭に並び、今レースで最も注目を集めた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は後方からスタートを切った。

昨年同じ場所で行われた全日本から、およそ半年と本来よりも短い間のナショナルチャンピオンジャージ着用となった草場だったが、今シーズン序盤、アジア選手権に出場してから調子を落としていた。しかし、前週の全日本実業団競技連盟(JBCF)のレースでは復調の兆しを見せ、この全日本に向けてコンディションもメンタル面も上げてきていた様子だった。

「僕は3連覇を狙ってるんで。そのうちのまだ一回しか取ってない」とレース前に話し、自信を覗かせていた。

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逃げに出ようとする松田

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逃げようと動くが集団もすぐ近く

 

一周目、松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が単独の逃げとなる。
チームブリヂストンサイクリングとしては、松田の逃げ切り勝利、あるいは窪木一茂や今村駿介などスプリントのあるメンバーでの集団スプリントを狙っていた。しかし、松田を含むブリヂストンのほとんどのメンバーがトラックのアジア選手権でインドから帰ってきたばかりという状況。コンディションが未知なメンバーが多かった。

窪木や今村より少し早く、タイムトライアルの3日前に帰国した松田は、調子は悪くないと感じていたそうだが、タイムトライアルでは暑さと疲労により失速。翌日も外に出ず、ぐったりしていたと話した。

ロードについては、「僕自身は前で待つ。もうマリノ(小林海/マトリックスパワータグ)さんとか(新城)幸也さんとか増田(成幸/宇都宮ブリッツェン)さんとかが行ったら、集団にいても三段坂で多分耐えられないので。いつも通りの僕の広島の走り方というか、最初から逃げに乗ってという感じですね。180㎞もそこまで長くはないので、ある程度スピードに乗るかなと」とスタート前に話しをしていた。

しかし、松田の単独の逃げも長くは続かなかった。2周目の前半には織田聖(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)らが追いついて来たが、集団もまだ逃げたい選手が多く、集団は一塊となり、振り出しに戻された。

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チーム右京が集団先頭にメンバーを集める

 

3周目、周回コース中、約5㎞地点にあるフェンストンネルを抜けた先の少しの上り区間で、やはり松田が逃げたがるが集団はすぐに吸収。その後、集団一つの状態でチーム右京のメンバーが先頭を固め始めた。
逃げができないまま集団はチーム右京、キナンレーシングチーム、宇都宮ブリッツェン、シマノレーシングが順にチームごと集まった。

コース中、約7㎞地点からおよそ2㎞の上り、通称三段坂はこのコースの中で最も長い上り区間だ。そこで織田や門田祐輔らEFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチームのメンバーも逃げを作ろうと動きを見せていたが、決定的な逃げはできず。

また、ここで新城が集団で一瞬前に出ようとすると一気に全員が追おうとする各チームからの徹底マークぶりも見られた。

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キナンの小出が一本引きを始める

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小出が仕事を終えると、今度は花田がペースアップ

 

中盤の7周目に入る頃、集団はなお一つのまま。116人がスタートしていたが既にコース上を走るのは63人まで絞られていた。

上りに入ると、集団先頭をキナンレーシングチームの小出樹、花田聖誠が中心に強力に牽引し始める。スプリントに絶対的な自信を持つメンバーがいないキナンレーシングチームとしては、昨年、愛三工業レーシングチームがしたようにスプリンターが最後まで残るような展開にはしたくなかった。キナンの新城雄大はチームの作戦をこう振り返る。

「今年はちょっと早い段階から集団を絞り込むような動きをしたいなと。(山本)大喜と(山本)元喜さんを中心に考えていて、それで小出選手、花田選手を軸にペースアップをして、集団のアシストをどんどん絞っていくような動きをしました」
思惑通り、次の周のコントロールラインで集団はさらに人数を減らしていった。

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河野、阿部、小森が集団がから抜け出す

 

そんな中で8周目の途中、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、小森亮平(マトリックスパワータグ)、河野翔輝(チームブリヂストンサイクリング)の3人が抜け出す。
メイン集団とタイム差が開き始めた。これがこのレースで初めての逃げグループとなった。

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白川が逃げにブリッジをかける

 

9周目の三段坂では逃げと集団とで1分55秒差まで開いた。上り区間では集団はまだキナンが組織的にペースアップをはかり、さらに人数を減らす。10周目には白川幸希(シエルブルー鹿屋)が一人ブリッジをかけて合流し、先頭は4人となった。

終盤に差し掛かった11周目、三段坂の頂上の展望台付近では河野が先頭4人から落ち、集団にパスされていった。

その集団もみるみる数を減らし、小石祐馬(チーム右京)や小林、増田、石上優大(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、新城など有力勢に絞られて来ると、先頭3人とのタイム差は25秒ほどまで縮まっていた。その中でもキナンは多くの人数を残していた。

 

動き始めたレース

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三段坂の頂上付近で小石がプッシュし続ける

 

12周目、集団から数名が飛び出していく。集団の後方にいた草場だったが自ら脚を使って追走をかけていった。三段坂を前にして、逃げの3人はつかまった。そしてその勢いのまま、小石が一人抜け出す。この小石の動きからレースは厳しい展開が始まる。

TTで力を見せた金子と一時2人になったが、すぐに小石一人になった。レース前に「このコース大嫌いなんで」とこぼしていた小石だったが、「勝てる実力も調子もあると思うし、そこは狙ってく」とも話していた。

「必死についていって、それでスプリントして勝つっていうのは別にいいんですけど、正直、うちのチームはそれで勝てる勝算がなかったし、そうしたらやっぱり逃げ切り。多少不利なコースとはいえ、やっぱトライする価値はあるから」と、逃げ切りを狙った動きだった。

集団には有力勢の十数名が残るのみとなった。そしてついに新城が動き始める。
「最後の3周は身を削って。小石が行った時点で、もうみんな追いかけなきゃいけない立場になったんで、僕もやっぱり身を削って、集団をどんどん減らす動きにシフトしていきました」

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独走での逃げとなった小石

 

逃げていた小石は、「2周ぐらいして30秒くらいあいて、後ろも勢いあるの知ってたけども、みんなきつそうだったし、僕がそんなに大垂れしない限りは大丈夫かなと思ったんですけど」と、タイム差をキープする。

集団の中でごまかしながら走っていたという小林(右)は途中でバイクを降りた

 

集団では13周目のホームストレートに入る直前のコーナーで落車が発生。落車はしなかったものの機材が巻き込まれてしまった小林は、一時ストップ。もう一度走り出したが、次の周には小林はバイクを降りた。
今シーズン、絶好調でJBCFのレースを席巻してきた小林だったが、この日「今年一番体が動かなかった」と話す。
「最高の展開で、いつも通りの調子なら早めに小石さんやユキヤさんと抜け出したと思います。トラブルでとどめを刺されましたが、ずっとごまかしながら走ってました。トラブルがなくても降りてたと思います」
原因は前週のJBCFでのトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)との戦いで疲労が大きく残ったことから、休み過ぎてしまったことだという。調子が良く、目標が明確であったが故に、人生で初めてこんなに悔しいと小林は語った。

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新城がペースを上げるとついて来られる人数は限られた

 

13周目の三段坂、集団では新城がペースを上げると、門田、畑中勇介(キナンレーシングチーム)、伊藤雅和(シエルブルー鹿屋)らがつく。14周目に入る時点では小石の追走をかける新城ら7人が少し抜ける形となったが、後ろから追いついてきてまた集団は人数を増やした。

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ラスト3周、踏み続ける新城幸也に対して必死の表情で食らいつく他選手たち

 

一方、ラスト2周で先頭の小石はペースを落としてしまう。「ラスト2周くらいで暑さが来ちゃって、一気に踏めなくなって。(抜け出すのが)もう1周、2周後でも良かったのかなっていう反省もあります」と、TTに続き、暑さにやられてしまう結果となった。上り区間途中で小石は吸収され、そのまま集団からもドロップした。

14周目の三段坂で新城がペースを上げるが、12人の選手がくらいつく。その中でもキナンレーシングチームは4人と最多人数を残した。

14周目の上りを耐え切った後、下り始めて平坦に入ったところでキナンのうち一人、山本大喜が抜け出した。

「ラスト2周の三段坂でアタックしようと思ったんですけど、幸也さんがペースアップをしたので、もうちょっと待とうと思って待ったら、やはり集団もかなり疲労していて下りで止まったので、自分の勝てる展開に持ち込むんだったら独走するしかないなと思ってアタックしました」と山本は振り返る。

一方、集団にいた新城幸也にとってそれは待ち望んだ展開だった。
「キナンチームはどちらかというと、上りでペースを上げてオフェンスするんですけど、その後はディフェンスだったんです。それで数を残してたんで。僕ら7人で追走を作ったけど、後ろ何人かにまた追いつかれて、そこにキナンがもう3人ぐらい入っていて。だからそこでキナンが攻撃するかなと思ったら攻撃しなかったんですよ。またディフェンスに入ってたんで。もうこうなったら、多分キナンを行かせた方がいいなと思ったんで、誰かキナンがアタックするの待ってました。これで追いつかなかったら僕が力ないだけなので。
とりあえず誰か行ってもらわないとみんな脚を止めてしまう。僕が行くと全員に追いかけられて、そうするとレースが成り立たないので。一番人数残してるキナンに行って欲しかったので、あれは僕にとっては願ってもない展開になりました」

山本が飛び出した後、新城幸也が集団から抜け出すと、その後を追えたのはキナンの新城雄大のみだった。
新城雄大は山本が前に行っていることから、新城幸也に付き位置となった。

取り残された集団は、新城らの姿が見えてはいたもののスローダウンしてしまう。
「残り2周で幸也さんと行ったときに、このままゴールまで行きたいと思ってたんですけど、後ろから追いつかれちゃって、どうしようかなと思ったときに、また行ってしまって。一瞬考えたのがだめでしたね。
まだ結構他のチームいっぱいいたから、行くかなと思ったらもう全然待ちで。金子くんと中井(唯晶/シマノレーシング)とかしか行こうとせず」と集団に残されてしまった伊藤は振り返る。

ラスト1周。集団は止まってしまい、勝負は前の3人に絞られた。

三段坂の麓で山本の姿を追走2人の新城が捉える。最後の三段坂で再び新城幸也がペースアップをかけていくと、新城雄大はなんとかしがみつき、山本は置いていかれた。

 

同郷同士のスプリント勝負

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新城幸也の後ろには新城雄大がぴたりとつける

 

フィニッシュラインが見えるホームストレート、新城幸也が先頭で後ろに新城雄大がピッタリとつける。後ろから山本が追う状況だったため、新城雄大としては新城幸也についていくのみで脚を溜められる展開ではあった。しかし、そこは新城幸也が何枚も上手だった。

「これだけ走ったらコーナーも全部覚えてるんで、正直ついていれば楽なんですけど、僕より前に行こうとしたら、もっと出さなきゃいけないんで、それはもう心得てます。どこで抑えるか、どこで苦しめるか。自分も苦しいけど、相手も苦しくなるようにちゃんとペーシングしました」と、新城幸也は話す。

一方の新城雄大は、「そこまでの動きでかなり消耗していて、いつ脚が完全に攣ってしまうかどうか分からないような状況で最後まで行ったんで、それをごまかしながら最後何とかついていたんですけれど、やっぱ頭一つ抜けてて、ずっと後半はもう動き続けてる幸也さんに付いてるだけでもいっぱいいっぱいだった」と語った。

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横並びのスプリント

 

ラスト150m、先に仕掛けたのは新城雄大だった。
「脚が結構限界が近いような状況だったので、先にかけられてそのまま差せずに終わるよりか、ワンチャンを狙って先にかけて不意をつけたらなと思って行ったんですけど」

同じタイミングで仕掛けようとしていた新城幸也は、「これだけ走ってきてるんで、そんなスプリントかからない」と言いながらも冷静に新城雄大の後ろに入り、そこからラスト100mを過ぎたところで再び並びにかかる。ラスト50mで新城雄大よりも前に出たが、両者最後まで踏み続ける。

フィニッシュラインの僅か手前で勝利を確信した新城幸也が両手を大きく広げた。
2位には新城雄大、3位には単独で追った山本大喜が入った。

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大きく両手を掲げた新城幸也

 

全日本チャンピオンジャージを着てワールドツアーで走る意味について新城はこう話す。

「僕も過去に走りましたけど、やっぱり日本のレベルがこのジャージで見られます。だから下手な走りもでいけないし、嫌でも目立つし、僕の走りで日本の評価になるし。やっぱそこは気合が入るというか。
普段のレースもちろんチームのために走るけど、それプラスこのジャージを着るっていうのは特別ですね。
僕としては『日本選手は他にいるのか?』って未だに言われる集団の中で、それを着て、世界の人に日本人も集団にいるぞということをもっともっとアピールして、それを見て、また若い子たちがヨーロッパの集団で走りたいっていうふうに思ってくれればいいし、あとは一緒に走った日本の選手たちが何かこれで感じてくれたらなと思いますね」

 

強かった理由、勝てない理由

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男子エリートの表彰式

 

37歳の新城幸也が3度目の全日本ロードチャンピオンに輝いた。
新城の強さについて、キナンの山本大喜はこう語った。

「やはりレースを人に任せるんじゃなくて、自分できつい展開にしていってたりとか、今回もちゃんとタイムトライアルでもロードレースでも表彰台に乗って、ロードでは勝って、1人でチーム戦ができない状態で走っているのに成績をしっかり残せるというのは力がしっかりある上に作戦もしっかり考えてるんだなと。本当に尊敬してますね」

全員からの徹底マークを受けながらも、自ら積極的にレースを動かした新城が強かったというのは紛れもない事実だ。ただ、その結論だけでこのレースを終わらせてしまうにはあまりにももったいない気がしている。優勝会見で放った新城の言葉には、おそらく今後におけるヒントとなり得ることが多くあった。

「僕に勝ちたいと思ったら多分、前半から行くべきだったと思います。後半勝負をしたら、180㎞だったら僕の方が後半出せる力が高いはずなんで」
新城はそう話した。

普段から200㎞クラスのレースをしている新城らは、4~5時間のトレーニングが当たり前だ。しかし、日本のレースのほとんどが長くても100㎞前後。それに照準を合わせたならば当然トレーニング時間も短くなるはずだ。付け焼き刃で全日本に向けたトレーニングをしたとしても、中盤までは耐えられるかもしれないが、終盤に同じパワーを出し続けることは難しい。

「5時間(のレース)だと3~4時間走った後に最後の1時間でパワーを同じように出す。そこの違いですかね。そこはやっぱりやらなきゃ駄目です。僕だって怪我したりして帰ってくるときに、レースの距離だったりトレーニング距離がやっぱり充実してないと、(3週間のレースで)1週間は多分持つんですよ。だけど、3週間をコンスタントに走るためにはもう前の年から継続的にトレーニング時間を積んでいかないと。やっぱり体ってそんな1か月で作れるものじゃないので。出るレースのためにじゃあどうやってプログラムしていくか、体を作ってトレーニングしていくか。ターゲットが違うので、もうそこが違いですよね」

しかし国内レースでターゲットになる長距離を走れるようなレースは少ない。それゆえに、「だからこの全日本のためにどうやってトレーニングするかは日本の選手の方が難しいと思います」とも話した。

今回のレースでは、中盤まで逃げもできず、誰もが後半勝負を待った形となった。
レースを振り返り、新城は「もっと厳しい展開になるのかなって予想してたんですけど、ならなかったです」と言う。

途中単騎で逃げた小石もまた、「今日もハードな展開があって、ちゃんとしたレースできればと思います。そうしたい選手としたくない選手の差が激しいですからね」とレース前に話しており、フィニッシュ後には「こんな消極的なレースばかりやっていたら……」と言葉を詰まらせた。

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新城はさらにこう振り返る。
「みんながみんな、考えは後半勝負っていう感じでしたね。何が何でも逃げの展開でっていうのはどこのチームを持ってなかったかなと。できたらもう10人ぐらい行って欲しかったんですよね。そうすると、追いかけなきゃいけないチームが出てくるので。荒れた展開にしたかったんですけど、中盤までディフェンスのチームが多かったんですよね。もうみんな守り守りっていうか、攻撃しても捕まえたらもうまた脚緩めて。キナンチームが、なぜか上りだけペース上げていたんですけど」

後半からキナンレーシングチームは最もレースを動かしたチームではあった。本人たちとしても納得し、作戦通りに力を出し尽くした結果だ。それでも新城は、キナンレーシングチームが行った上り”のみ”でのペースアップに対しても疑問を呈し、「もっとうまく使った方が良かった」と言う。

「でも僕自身、苦しめられられましたよ。上りのペースとか。まだデータを見てないですけど、そんな簡単じゃないです。なので、もっともっと日本のレベルは上がる可能性もある。
僕が三段坂で苦しめられたパワーというのは、ワールドツアーと同じぐらいです。3時間でもそれぐらいは出ます。じゃあ5時間後にこれを出せるかっていうところが、ヨーロッパと日本のレースの違いです。
でも見てもらった通り、平坦で30秒差なんですけど、上りに入った瞬間、僕が全部追い付いてるじゃないですか。みんな脚をゆっくり止めてからの三段坂だったら結構いいパワーが出る。ずっと踏んできて三段坂に入ると、ペースが上がらない。
それで、(一度)上がったら脚を止めるんです。リカバリーのために。その次に行くのがやっぱりヨーロッパで、僕としたら、ずっと早いのに慣れてるので、そういう部分で残り2周ずっと踏む展開になっても、僕は平坦からアップダウンでもずっと同じだけ三段坂を踏める。そういうレースばっかりなので。逆にヨーロッパではもっとぶっちぎられてる方なので(笑)。そういう部分では踏む長さっていうのがやっぱり日本とヨーロッパの違いかなというのを感じました」

ただ唯一、小石が踏み続ける展開からさらに飛び出した。新城はこの走りを讃えた。
「みんなが早いペースのまま、また三段坂突っ込んでいくっていう、小石がそこをやったんですよ。逃げ3人にみんなで追いついて、三段坂であいつだけ飛んでった。ああいう走りをみんなができれば、どんどん日本のレベルも上がっていけるんじゃないですか。
誰も反応できなかったから小石1人が行っちゃったけど、あれでもし僕が小石と一緒に行ってたら、多分そのまま逃げ切ったんじゃないかなと。小石のあの走りは強かったです」

今回のレースを本格的に動かし始めたのは小石だった。しかし小石本人は、「勝つか負けるかでやってるので」と結果を重視した。

各選手に対してたらればで考えることはいくつもある。しかし、フィジカルだけでなく、不調や気候への耐性、展開に乗り、さらに自ら展開を作る判断力、全てが揃って強さなのだ。

「新城の次がいない」
そんなこと、この十数年で言われ尽くしてきた。日本人の中では新城が特異的に強いというのはあるだろうが、彼の走りや言葉から強く”居続ける”ためのヒントは多く見つけられるように思う。

現状では世界に対応するのであれば、厳しい強度でレースをできる海外に行くしか方法はない。しかし、今シーズン前半戦で行われたツアー・オブ・ジャパンでもツール・ド・熊野でも、そしてこの全日本でも、強者から学ぶべきは必ずあるはずなのだ。

 

全日本自転車競技選手権大会ロードレース 男子エリート リザルト
1位 新城幸也(バーレーン ヴィクトリアス) 4時間36分28秒
2位 新城雄大(キナンレーシンチーム) +0秒
3位 山本大喜(キナンレーシンチーム) +15秒
4位 中井唯晶(シマノレーシング) +45秒
5位 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) +49秒
6位 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) +49秒
7位 畑中勇介(キナンレーシンチーム) +49秒
8位 金子宗平(群馬グリフィンレーシンチーム) +49秒
9位 石上優大(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) +49秒
10位 門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) +49秒

 

第90回 全日本自転車競技選手権大会 ロード・レース
第25回全日本選手権個人タイム・トライアル・ロード・レース大会
開催期間:2022年6月23日(木)~6月26日(日)
会場:広島県中央森林公園サイクリングロード

日本自転車競技連盟
https://jcf.or.jp