新型トレック・マドンの印象をトームス・スクインシュに聞く
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ツールのチームプレゼンテーションの日に、インタビューに答えてくれたトームス・スクインシュ
正式に情報が解禁されたトレックの新型マドン。今日からスタートするツール・ド・フランスにもちろん投入される。果たして新型マドンはどのような走りを見せるのか。バイクの印象について、トレック・セガフレードのトームス・スクインシュ選手に、聞いた。
ツールを走る新型マドン
決して内密にされていたというわけではないが、2022年のツール・ド・フランスがデンマークのコペンハーゲンで開幕するのに合わせて、トレックは新型マドンを発表した。最も注目すべきは、もちろんシートチューブの劇的な切り欠きだ。野性的なルックスではあるが、印象的な機能を備えている。
トレックによると、トップチューブとシートチューブの接合部のすぐ下にあるこの切り欠きは、エアロダイナミクスとライダーの快適性を向上させるとのこと。実際、トレックによると、この新しい形状はハンドル周りやフレームチューブの形状の改良とともに、従来のマドンよりも1時間あたり60秒速くなったという。この新テクノロジーは「IsoFlow(アイソフロー)」と呼ばれ、従来の「IsoSpeed(アイソスピード)」とは異なり、調整はできない仕組みになっている。
また、他のトレックバイクで採用されている「アイソスピードディカップラー」が不要になり、軽量化も実現した。全体として新型マドンは、前世代より約300g軽くなっている。
トレックによると、アイソフローはライダーに適切な整合性を提供するため、サイズ別に調整されているとのこと。そして、適切なフィット感を確保するために、さまざまなシートポストのオプションが選べるようになっている。
アイソフローほど顕著ではないものの、アップデートされた部分は他にもある。まず、フレームデザイン全体に、トレック独自の新しいカムテールチューブ形状が採用され、全体的なエアロダイナミクスが改善されている。そして、ハンドル周りも再設計された。バーには浅いリーチと広いフレアを採用し、ここでもエアロダイナミクスを改善。そして、ドロップ部ではより人間工学に基づいたポジションを取りやすくなった。
これによって、より戦略的に手首や手の自然な曲げ伸ばしに応じたポジションを取れるようになる。理論的には、腕や肩もリラックスした状態になるはずである。
「新型マドンは速い」トームス・スクインシュ
トレック・セガフレードのトームス・スクインシュは、新型マドンでトレーニングとレースを積み重ねてきた。あらゆる変更点をすでに自分のモノにし、確実に良い方向に向かっていると考えている。「新型は速い」と彼は言う。
「前世代よりも楽しい。以前のマドンは、アメリカの大きな下り坂で、大きくワイドターンして流れるように走るのがとても気持ちよかった。このマドンはエモンダに似つつ、反応がよくなり、敏捷性も増した」
「ハンドリングがぐっと改善されて、エモンダとマドンとの乗り換えが楽になった。」レースとレースの間、そして、同一レースのステージ間でも、スクインシュは頻繁に両車を乗り換えている。「今年の最初のうちは、自宅にはエモンダしか持っていなかったんだ。ベルギーのフランドル・クラシックのレースに行くたびに、前作マドンに乗り換えねばならなくて大変だった。今は、この2台(エモンダとマドン)のハンドリングがより近く感じられて、とても楽だよ」
快適性とは速さ
トレックがレーサーに対して、快適性こそがスピードの鍵であると大々的に宣伝したのは、そう遠い昔のことではない。苦悩を讃える過酷なスポーツにおいて、そのメッセージは必ずしもプロライダーの心に響くものではなかった。しかし、先代マドンに搭載されたアイソスピードにより、ライダーたちは間違いなく快適性に注目するようになった。快適性は実際のところ、ライダーがより速く、より長時間フレッシュさを保つための鍵だったのだ。とはいえ、調整可能なアイソスピードは重量があり、課題となっていた。
その課題をアイソフローが解決した。アイソスピードとは異なり、しなり具合の調整が可能ではないものの、トレックによると、サイズごとにチューニングされており、さまざまなサイズのライダーに対して適切な整合性を提供することができるそうだ。
「本当に硬くて速いバイクは作れるが、それは単に背中を痛めつけるだけ。だから、サポート力を維持したままどれほど新型マドンが性能を上げたのかについて、とても満足している。荒れた路面で重宝するよ」
スクインシュと彼のチームメイトはツールの開幕を前にコペンハーゲンで新型マドンに乗っているものの、オープニングステージは個人タイムトライアルのため、新型バイクが活躍するのは第2ステージになるだろう。しかし、いったんツールがコペンハーゲンから始まったら、スプリンターにとっては大きなチャンスだ。彼自身、これらのステージでの勝利を重視しているわけではないので、ギアの選択に関してはかなり控えめである。
「フロントは絶対に54Tのチェーンリングにするつもりだ。後ろに10Tのコグがあるから、56Tは必要ないと思う。10-28のカセットでシンプルに。なんの変哲もないよ」
タイヤについては「レースの状況やライダーの好みに合わせて選ぶのが良い」とスクインシュは言う。「ライダーやステージによって、チューブレスの時もチューブラーの時もある。でも、第2ステージは間違いなくチューブレスの日だ」インタビュー時、彼のマドンには、ピレリのP ゼロレースTLRタイヤが装着されていた。マドンSLRは28mmタイヤの使用に最適化されている。
また、新型マドンSLRに標準装備されているのとは異なるステムを彼が使用しているのも特筆すべき点だ。ステムの交換は可能だが、その場合はコラムスペーサーとヘッドキャップが必要になる。標準のステムは、内蔵ケーブルと洗練されたエアロ形状のヘッドキャップを備え、 新しくエアロダイナミックなものになっている。