シマノ・105-R7100シリーズインプレッション〜新時代の到来だ
目次
シマノのロードバイク用コンポーネントにおけるサードグレード「105」が、フルモデルチェンジを実施! 最大のトピックは、上位グレードと同じワイヤレスDI2とリヤ12速の採用で、電動変速システムの導入はシリーズ初となる。最新のデュラエースやアルテグラに比肩するスペックを手に入れた105-R7100シリーズ。その進化ぶりを詳しく紹介しよう。
シマノ・105-R7100シリーズの概要をおさらい
1982年に誕生したシマノのロード用コンポ「105」。直近の歴史を振り返ると、2014年にリヤ11速化、2018年に油圧式ディスクブレーキ追加など、上位コンポのデュラエースやアルテグラの遺伝子を受け継ぎつつ、幅広いユーザーに向けて着実に進化してきた。そして40周年となる今年、ついにシリーズ初となる電動変速システムDI2を採用した。「最高のパフォーマンスを適切な価格で」をモットーとする105だが、導入されたDI2は一世代前の有線式ではなく、最新のワイヤレス式だ。さらに、スプロケットは11速から12速となっただけでなく、105のユーザーにふさわしいギヤコンビネーションを設定。変速や登坂におけるストレスをさらに軽減したのが105-R7100シリーズと言えるだろう。
インプレッション〜電動変速という新体験を幅広い層へ
DI2化によって変速に関するストレスをトータルで削減
シマノのサードグレードコンポ、105がついにDI2化された。この電動変速システムについては、2009年にデュラエースが初めて採用したころから折につけ触れているが、変速操作に要する労力が指先のみで済むという圧倒的なストレスの少なさから、ビギナーにも間口を広げるべきだと考えていた。ゆえに、今回のDI2化は素直に歓迎したい。
さて、新型105に採用されたDI2は、最新のワイヤレス式だ。フレーム内部のバッテリーと前後のディレーラーはEチューブケーブルで接続され、STIレバーの操作信号は無線でディレーラーへと送られる。当たり前だが、無線だからといってディレーラーの反応には一切の遅延がなく、スイッチをクリックした瞬間にディレーラーから小さな作動音が聞こえ、次の瞬間には変速が完了している。
厳密には、チェーンが隣のスプロケットへ移動するスピード自体は機械式と大差ないのだが、機械式の場合は指がレバーを動かしてからディレーラーが実際に作動するまでの間に、ワイヤのたるみ分だけタイムラグが生じる。ゆえに、シフトアップ&ダウンとも脳が指令を出してから変速を終えるまでのトータル時間は圧倒的に短く感じられるのだ。
この変速時間の短さと同等以上に機械式コンポユーザーが感動するのが、おそらく多段変速だろう。機械式の場合、リヤのシフトダウンは1ストロークで3段まで可能だが、それを行うにはレバーの先端をおよそ10cmも動かす必要がある。手の小さな人にとっては困難な動作であり、上り坂で失速する原因の一つだ。これが新型105のDI2なら、スイッチを長押しするだけで多段変速でき(シフトアップもだ)、しかもその段数や速さはスマホアプリ「E-TUBE PROJECT」で任意に変更できるのだ。
フロントの変速についても、特にインナーからアウターへの変速はスイッチの短押しで済むので、クリックしてからクランクを多くとも半周させれば変速が完了する。機械式の場合、リヤの多段変速並みにレバーを大きく動かす必要があるので、DI2化でストレスが大幅に減ったことは言うまでもないだろう。
リヤ12速化で1枚ごとのギヤ比が接近し、より扱いやすく進化
今回テストした歯数構成は、フロントが50-34T、リヤが11-34Tだ。この11-34Tというギヤは11速のR7000シリーズでも存在したが、スプロケットが増えたことで1枚ごとの歯数差が少なくなり、状況に応じてより適切な歯数が選べるようになった。
具体的には、トップ11Tを含む17Tまでの枚数が4枚から6枚へと増えており、このエリアを積極的に使うコンペティティブなユーザーにとっては歓迎されるだろう。なお、インナー34T×ロー34Tで得られる1:1というギヤ比は、10%程度の登坂でも脚がクルクルと回ってしまうほどに軽く、むしろ失速してふらつくレベルではあるが、とはいえ疲れ切っている状況でも34Tを使えば上れるという安心感はビギナーほどありがたいだろう。
圧倒的に握りやすくなったデュアルコントロールレバー
DI2化における見逃せないメリットの一つが、デュアルコントロールレバーのコンパクト化だ。メカニカルな変速機構を省略できるのがその理由であり、新型105もその例に漏れない。
ボタン電池の数をデュラエースやアルテグラの片側1枚から2枚へ増やしているため、ブラケットの先端部分はそれらよりもやや大きくなっている。とはいえ、それでもR7000シリーズの機械式レバーよりは圧倒的にスリムだ。真上から見たときにブラケットの中心が内側にオフセットされた形状となっているため、手首を自然な角度で握れるのがいい。また、ブラケットの下部には指を3本入れることかできるため、しっかり握りたい場面でストレスを感じないのもうれしい。
付け加えると、重量がR7000の610gから423g(いずれもペア)へと大幅に軽くなったことで、ステアリングモーメントが減ったことも無視できない。ダンシングでバイクを左右へ振ったときはもちろん、低速での舵角の付き方まで軽くなったことを実感できる。なお、後者についてはワイヤレスによって変速ケーブルによる突っ張り力がゼロになったことも影響しているだろう。
このデュアルコントロールレバー、コストを抑えるためにサテライトシフターや有線オプション、フードボタンは省略されているが、105を選ぶユーザーでそれに不満を覚える人はほとんどいないだろう。その一方で、上位コンポと同じフルおよびセミシンクロナイズドシフトが採用されたことは素直に歓迎したい。
このシンクロシフトは、設定次第で片手のみでの前後変速も可能とするシステムだ。勾配のきつい上り坂に差し掛かったとき、慣れた人なら左手でフロントをインナーに落とし、右手でリヤをシフトダウンするが、ビギナーは脚が回せなくなってから焦って操作を始めるため、変速が間に合わずに失速してしまう。これを限りなく解消するのがシンクロシフトであり、105におけるDI2化の恩恵はここにあるといっても過言ではない。
ブレーキノイズが大幅に減少、コントロール性も優秀だ
ブレーキについては、下り坂のあとで発生しがちだった「シャンシャンッ」というノイズがほぼ解消されていて驚いた。短い下りで何度も急制動を試みたが、少なくともあの擦れ音は確認できずじまい。パッドのクリアランスを10%拡張しただけとはいえ、これは大きな改善と言えるだろう。
肝心なブレーキ性能については、レバーへの入力に対して素直に制動力が立ち上がる特性であり、リムブレーキから乗り換えても違和感を覚えにくく、スピードコントロールのしやすさに感心するはずだ。
裾野を広げつつ上位コンポにも接近した意欲作
「ビギナーにこそDi2を」という考えが間違っていなかったことを証明してくれた105-R7100シリーズ。価格的なハードルは上がったものの、その上昇分以上の新しい体験が得られるのは事実。ぜひ触れて、そして性能の良さを実感してほしい。
動画もチェック!
現在発表されている105-R7100シリーズ搭載の完成車
2022年7月末現在で発表されている、105-R7100シリーズ搭載の完成車を最後に紹介しよう(編集部)。
コラテック・R.T.カーボンディスク
価格:45万9800円
トレック・マドンSLR6
価格:115万5000円
ジオス・レッジェーロ(R7100 DI2完成車)
価格:47万800円
ジオス・エアロライト(R7100 DI2完成車)
価格:47万800円
キャニオン
2022年9月頃の予定で搭載完成車を発表予定
ビアンキ
今後発表予定とのこと