「鳥人間コンテスト」のパイロットの脚を支えるトレーニングマシンとは?

目次

名古屋大学AirCraftの2022年チームメンバーと彼らが作った機体

名古屋大学AirCraftの2022年チームメンバーと彼らが作った機体

人力で大空へ舞う夢の舞台=鳥人間コンテスト

1977年に初開催され、以来、夏の恒例行事となっている『鳥人間コンテスト』(読売テレビ主催)。読者の皆様も一度はテレビで観たことがあるのでは? 今年は、7月23日、24日に滋賀県彦根市の琵琶湖東岸で開催された。

同コンテストとは、琵琶湖上に設けられた高さ10mのプラットフォームから飛び立ち、飛行距離を競うもの。現在は、グライダーに近い動力を持たない「滑空機部門」と、人力で動かすプロペラを搭載した「人力プロペラ機部門」の2クラスで競われている。

じつは、宇都宮ブリッツェン所属で東京五輪ロードレース代表にもなった増田成幸選手も、大学時代に人力プロペラ機のパイロット経験を持つことで知られている。しかも、当時樹立した日本航空協会による記録は、日本記録として今(2022年7月17日現在)も破られていない。

 

富士ヒル・ゴールドの実力を持つ鳥人間出場選手を発見!

鳥人間のパイロットが、どのような機材を使い、どんなトレーニングを積んでいるのか? そして、増田選手に続く逸材が隠れているのでは? そんな好奇心から、今年の鳥人間コンテスト参加チームをチェックしてみた。

福原悠介さんは、愛知県にある「名古屋大学AirCraft」所属のパイロット。2021年大会に続き、2022年大会にもパイロットとして、鳥人間コンテストに出場を果たした。

「子供の頃から飛行機が大好きで、なにか大きなものを自分で作ってみたくて、このサークルに入りました。重量的に有利な小柄(身長159cm)であることもあり、2021年のパイロットに抜擢され、それからロードバイクを使った本格的なトレーニングをするようになりました」

福原さんは、2021年のパイロットに決まるや、学業の合間を縫って室内トレーニングマシンを利用したり、名古屋エリアのクライマーの聖地、雨沢峠などに通い、トレーニングを積んできた。2021年に参加した箱根ヒルクライムでは年代別の3位に、今年の富士ヒルクライムでは、選抜枠で出場し65分を切る「ゴールドリング」でゴールするほどの実力を身につけた。その強さの秘密はどこにあるのだろうか?

 

山田想楽樹さんと福原悠介さん

名古屋大学AirCraft代表の山田想楽樹さん(右)とパイロットの福原悠介さん

鳥人間コンテストのトロフィー

部室には、先輩たちの偉業を印すトロフィーがある

 

ひょんなことから最新のトレーニングマシンを手に

名古屋大学AirCraftの部室には、1台のトレーニングマシンが置いてあった。福原さんは、WahooのKICKRに愛車のロードバイクをセットし、日々トレーニングを積んできたそうだ。

「2020年のパイロットだった先輩が、初代のELEMNTをフライトレコーダーとして、おもに速度を表示するために使っていたんです。画面が見やすく使いやすかったので、Wahooの製品が気になっていました。でも高価なんで、簡単には手が出ませんでした。そんなときに、YouTuberのけんたさんの企画で、Wahooの製品プレゼントがあり応募したんです。それは、見事に外れちゃいましたが、コメント欄に『今年も鳥人間に挑戦します…』と書いたら、それがWahooの方の目に入り、ありがたいことにサークルに製品提供していただけることが決まったんです」

Wahooからは、KICKRのほか、HEADWIND、TICKR、ELEMNT ROAMなどが提供された。福原さんは、与えられた機材を有効利用するため、パワートレーニングの本を参考に、自らでトレーニングプログラムを組み、練習に励んだ。

 

機体のワフーロゴ

機体には、トレーニング機材をサポートしているWahooのロゴも

 

日々、ストレスなく漕げる性能こそがトレーニングマシンの命

「平日は授業のあとに部室にきてトレーニングしています。もちろん、休日でも外を走れないときは、ここでトレーニングします。以前は、別のメーカーのトレーナーを使っていましたが、WahooのKICKRを使ってみて、一番驚いたのが、ブレの少なさですね。力強く踏み込んでも安定したペダリングを続けられるので、ストレスなく質の高いトレーニングを持続できます。この差が大きいんです。トレーニングアプリにはズイフトを使い、ケイデンスに基づいて目標ワット数を設定して行なっています。トレーニングデータは、ゴールデンチーターでCTL(長期トレーニング指標)などを記録しています。とくにオーバートレーニングにならないよう、気を使っています」

2022年の名古屋大学AirCraftのメンバーは代表の山田想楽樹さんを中心にした22名。2021年8月から今大会を目指して機体設計からスタート。9月には、新型コロナの影響で学内に入れない時期もあったが、それらの困難を乗り越え、2年連続で鳥人間コンテストの出場権を得た。

 

キッカーを使いトレーニングに励む福原パイロット

KICKRを使いトレーニングに励む福原パイロット

 

0.1gにこだわり軽量化された機体に乗って大空へ

胴体、プロペラ、翼など、パーツごとに専属のメンバーでチームを構成し、設計から製作までを個別に行ない、最後にひとつの機体として完成させる。メインフレームは、プリプレグと呼ばれるカーボンシートを取り寄せ、部室内にある窯で焼いて成形。翼に使うアラミド繊維も、部室内で硬化させていた。ボディは、発泡スチロールを丁寧に手作業で極限まで軽量化しながら加工されていた。

 

発泡剤のカットを行なう機械

部室には発泡剤のカットを行なう機械もそろう

分解した機体を運ぶ

機体は分解して2tトラックに積載して運ぶ。テストのたびに組み立てているそうだ

 

そして7月。0.1gの軽量化にこだわり、名古屋大生の英知と手わざを結集した機体は、琵琶湖上の空を舞った。部員全員の夢を載せた機体には、Wahooの機材を駆使し、苦しくも効率的なトレーニングを積み重ねてきた福原パイロットを乗せて。そんな彼らの活躍を見られる『鳥人間コンテスト2022』の放映が決まった。

「子供の頃からの夢だった鳥人間コンテスト。今年の目標は優勝です。20kmは飛びたいですね。そして、今後はサイクリストとしても上を目指していきたいです」と、この大会で引退となるパイロットの福原さんは、大会前に意気込みを語った。

 

機体のプロペラを回転

福原パイロットのペダリングで軽快にプロペラが回転。果たして結果はいかに?

名古屋大学鳥人間コンテストカーボンパーツ

機体のメインフレームはカーボン製

名古屋大学鳥人間コンテストクランク

パイロットが回すクランク。ワンオフのカーボン製

名古屋大学鳥人間コンテスト操縦桿

操縦桿。フライバイワイヤで翼を操作する 

鳥人間コンテスト2022放映予定
2022年8月31日(水)19時~
読売テレビ、日本テレビ系全国ネット