猪野学 ネオ坂バカ奮”登”記 第12回
目次
突然ですが、自転車競技は機材スポーツである。どんなにフィジカルが優れていても自転車がまともに走らなければ成績は出ない。まさにサイクリストにとって命の次に大切なものだ。
今回は少し趣向を変えて、あの個性が強い坂バカ部員たちはどんなバイクに乗っているのか?少し紹介させていただこうと思う。
今回は坂バカ部員の愛車紹介、階段王のメリダ
まずは階段王。真っ黒なフレームなのでどこのメーカーか気になる方もおられると思うが、メリダである。
興味深いのはホイールがゴキソであるという事だ。私も以前使用していた事があるが、転がり抵抗が皆無な乗り味はゴキソでしか味わえない。まさに唯一無二のホイールだ。しかし皆様ご存じの通り、その重量は重い。
ゴキソのクランクも試用させてもらった事があったが、こちらも抵抗なくクルクル回り、とても魅力だがやはり重い。
階段王がこの重さを承知しているかは不明である。
そして最も私を唸らせたのはトップチューブに貼ってあるステッカーだ。
「自力本願」
彼のレース運びそのものである。個人TT以外、他力をいかに利用するかが自転車競技なのだが、階段王らしくて潔い。階段垂直マラソンは駆け引きはなく自力本願なのだろう。
戸丸のママチャリ
お次はママチャリ坂バカ戸丸のママチャリ。フレームはTOYOのオーダーフレーム。世界に一台しかない代物だ。
このママチャリを操る戸丸本人に乗り味を聞いてみた。すると
「気合い入れて乗らないとやられちゃぃすよ!」
と訳の分からない言葉が返って来た。どうやらホイールベースが短いぶん、その操作性はトリッキーで難しいそうだ。
このニュー坂バカ号になる前のママチャリは、戸丸の悩みや愚痴を聞いてくれる優しい彼女的な存在だったらしいが、ニュー坂バカ号は愚痴る暇などないくらい集中して乗らないと操れないらしい。
「自分はまだまだこの自転車にふさわしくないです」
本人曰く、もっと速く走らせるようになれるらしい。
そして本人がぜひ紹介して欲しいと言っていたのがウサギちゃん人形だ。このウサギちゃんは光が当たると反射する。交通安全の願いを込めて、親しくなった人に配っているとの事。一度注文すると4万円ぐらいになるらしい。とても素晴らしい行為だ。戸丸にはそういったピュアな所がある。
そんなピュアな男が履く赤いレーパンはレディースサイズらしい。パットが小さいからタ○がはみ出るのが悩みだそうだ。
私は感心した。世の中には「本当に」どうでもいい情報が存在するのだと。
私、猪野のタイム
ついでにと言っては何だか、私のバイクも紹介させて頂こう。
タイムのアルプデュエズ(もちろんリムブレーキ)に、ライトウェイトのホイール。最近のお気に入りはスペシャライズドのサドル「ミラー」。フカフカなのにパワー伝達もちゃんとできる、癖になるサドル。今までにない新たな感覚でライドが楽しくなった。
そしてハンドル幅は流行りの”狭め”38cm。空気抵抗が少なくなるのはもちろん、ハンドルが狭いので肩甲骨が動かしやすい。私は今シーズン、サウナでこつこつストレッチし、肩甲骨はがしに成功した。それにより胸郭まわりと背中の柔軟性が増したため、腰痛も少しだけ改善された気がする。
自転車も己の体もグレードアップすれば全く違う感覚を味わえるのが自転車競技の魅力だろう。
飽きた頃には、また更なる魅力的なパーツが誕生する無限のループ。私がこの世から居なくなっても自転車は永遠に存在し続けるだろう。
いったい100年後ロードバイクはどんな形状をしているのだろうか?妄想という名のサイクルも止まる事はないのであった。