マウンテンバイクのタイヤ種類解説&空気圧セッティング法【MTBはじめよう! Vol.13】
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MTB(マウンテンバイク)トレイルライド&グラビティライド(下り系の遊び方)の基礎が分かるシリーズの13回目。今回はバイクの種類同様、さまざまな種類があるタイヤについて解説し、重要となる空気圧セッティング法についてフィーチャーしよう。
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MTBタイヤの種類と特徴
今回も教えてもらうのはプロMTBライダーの板垣奏男さんだ。
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板垣奏男(いたがき かなお)さん。東京サイクルデザイン専門学校を卒業後に本場カナダへ渡り、高度なライディングスキルからトレイルビルディングに至るまでを習得。現在はプロライダー/インストラクターとして活躍している。Instagram:kanao_i_into_the_ride YouTube:kanao itagaki
「クロスカントリーバイク、トレイルバイク、エンデューロバイク、ダウンヒルバイクと、MTBは主に4つの種類に分けられると『マウンテンバイクの種類解説&はじめての一台選び』の回で説明しましたが、MTBタイヤも同様にそれらと同じ種類で分けられます。
ただ、例えばトレイルタイヤの中でも上りも下りもオールマイティにいける性格のものから、下り性能を重視したものがあるなど、同じ種類でも性格が分かれている傾向があります。
まずは、大きなくくりの分類とその特徴について解説しましょう」。
クロスカントリータイヤ
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クロスカントリータイヤの例。写真はスペシャライズド・Sワークス ファストトラック 2ブリスレディ T5/T7(8250円)。転がり抵抗を抑えつつも路面をしっかりと食っていくよう設計されている
上り性能が重視されるので、転がり抵抗が少なく軽量に仕上がっているタイプ。一方である程度グリップ力も確保されている。ノブ(突起状になっている部分)が低めで、かつその粒が小さめなのが特徴。
ダウンヒルタイヤ
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ダウンヒルタイヤの例。写真はスペシャライズド・ブッチャー グリッド グラビティ 2ブリスレディ T9(9240円)。グリップ力と剛性が高く、高速域でも安定した走りができる、オールランド系ダウンヒルタイヤだ
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こちらはスペシャライズド・ヒルビリー グリッド グラビティ2ブリスレディ T9(9900円)。ウェットコンディションや過酷な路面でもグリップするよう設計された、よりハードな状況向けのダウンヒルタイヤだ
下り性能に特化しており、剛性が高く頑丈で、高いスピード域でもタイヤがつぶれにくくなっていて、強力なグリップ力が確保されている。ノブは高くその粒も大きい。
トレイルタイヤ
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トレイルタイヤの例。写真はスペシャライズド・パーガトリー グリッド 2ブリスレディ(7290円)。上り性能と下り性能をバランスさせた軽量なトレイルタイヤだ
クロスカントリータイヤとダウンヒルタイヤの中間的性格を持ち、その中でも上り性能も重視するのか、下り性能を重視するのかで性格が異なってくる。
おすすめのタイヤとは?
本連載では、特に自走で上って下りの区間を楽しむのに主眼を置くトレイルライド、あるいはリフトやゴンドラのあるMTBパークでの下りを楽しむ、グラビティライドと総称されるスタイルをテーマとしているが、そうしたスタイルにはどんなタイヤがおすすめなのだろうか?
「トレイルタイヤの中でも、下り性能を重視したモデルを選ぶと良いでしょう。つまり、ダウンヒルタイヤのような下り性能を持ちつつも、自走で上ってそのコースまでアクセスできる性能もある程度確保されている、という性格のものです。
特にこうしたモデルはエンデューロレースに適しているので、エンデューロタイヤとも呼ばれたりします」。
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下り系トレイルタイヤの例。写真はスペシャライズド・ブッチャー グリッドトレイル 2ブリスレディ T9(8580円)。強力な下り性能を発揮するトレイルタイヤ。一方で自走でトレイルを上れるだけの登坂性能も確保されている
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こちらはスペシャライズド・イリミネーター グリッドトレイル 2ブリスレディ T7(8580円)。高いグリップ力を備えつつも、転がり抵抗の軽さも追求した下り系トレイルタイヤ。後輪に組み合わせて使うのがおすすめだ
「フロントタイヤにはグリップ力が高いモデルを履き、リヤタイヤには高いグリップ力を持ちつつも転がり抵抗を抑えたモデルを組み合わせるのもおすすめです」。
MTBタイヤの空気圧セッティング法
タイヤの種類と特徴が分かったところで、空気圧のセッティング法についてだ。基本となる考え方はあるのだろうか?
「状況と機材、人によって変わってくるものなので、ズバリコレ!という数値は存在しないのですが、次の3つの観点を基本に決めてください」。
POINT① 体重と自転車の総重量
「自分の体重と自転車の総重量が重ければ、空気圧を高めます。軽いなら空気圧を下げます。
空気圧が高すぎるとタイヤが跳ねやすくなったり、乗り心地が悪くなったり、グリップを失いやすくなってしまいます。
逆に低すぎると、タイヤが路面の衝撃で潰れすぎてしまい、走行抵抗が増したり、リム打ちやパンクのリスクが高くなります。
ですので、例えば同じ体重の人でまったく同じタイヤを使ったとしても、軽いハードテールバイクに乗るときと、重い下り系フルサスバイクに乗るときでは、空気圧が違ってくるわけです」。
POINT② 走るコースの状況
「例えばなめらかに整備されたトレイルならば、空気圧は低めにします。一方、ダウンヒルコースのような激しい凹凸や段差があり、岩や木の根でゴツゴツした厳しい路面ならば、リム打ちのリスクを避けるために空気圧を高めにします。
また、これはライダーの技量にも依存しますが、高い速度域で走ったり、ジャンプをキメたりする場合も高めにすることが多いです」。
POINT③ タイヤの推奨空気圧
「タイヤには通常、推奨空気圧が設定されており、その範囲を下回ってはならない(もちろん上回ってもならない)とされています。特にこの最低値を下回らないようにするのが大前提となります。リム打ちやタイヤが外れてしまうリスクがあるためです。
なお、タイヤ幅が太いほど空気圧は低めになり、細いほど高めの設定がされています」。
POINT④ 適切な空気圧の探り方と参考値
「さて、これらをもとに、じゃあ具体的にどう自分にあった空気圧を探すのか。コツは、高めの空気圧から始めて、徐々に下げていって一番感触のいい数値を探っていくことです。高めの数値から始める分には、リム打ちやパンクなどのリスクを避けられます。
あくまで参考値ですが、1.5気圧(約22psi)くらいから試してみるとよいですね。体重が重くて自転車も重い人の場合は、2気圧(約29psi)から始めるといいでしょう。2気圧だと相当高めの方です」。
ちなみに、板垣さんの場合はどう設定している? あくまで参考として。
「私は体重が約58kg、自転車は約15kgのフルサスで、前後29インチホイールでタイヤが下り系トレイルタイヤの2.3インチ幅です。これで……
前輪:1.7気圧(約24psi)
後輪:1.8気圧(約26psi)
にします。
おそらく、私の体重と使っている機材からすると、空気圧が高めと言えます。これは、私が岩や段差などもガンガン飛んでいく走り方をするためで、グリップ力よりもリムをひしゃげてしまうリスクを避ける方を重視するからです。タイヤが潰れてリム打ちをしてしまう限界ギリギリの数値がこのくらいなんです。
このように、ご自身の体重と自転車の総重量、走るコースや走り方のスタイルから、少しずつ空気圧を変えてみて、一番良い数値を探ってみてください」。
POINT⑤ 推奨空気圧は下回っても良い?
「最後に、タイヤごとに設定される推奨空気圧の最低値は下回らないように、と説明しましたが、これは場合によっては下回っても良いと考えます。かなり難しい問題なのですが……。
というのも、体重が軽くバイク重量も軽めの人の場合、下限空気圧まで高めるとタイヤが跳ねてしまったりして、十分なグリップが得られない場合が生じることもあるからです。
タイヤとは、適切に潰れることによって最適なグリップや走行性能が得られるもので、それが得られないことには本末転倒となります。
タイヤ推奨空気圧の範囲とは、基本的にはタイヤがリムから外れない空気圧の範囲であり、その範囲を下回ったり上回ったりすると、タイヤがリムから外れる可能性がありますよ、とメーカーが設定しているものです。ただ、総重量が軽い人が下限値を少し下回ったからといって、タイヤがリムから外れるとは考えにくいです。
ですので、基本的には下限値を下回らないようにしないといけないのですが、人によってはそれよりも下げた方が良い場合もある、ということは覚えておいていいでしょう」。