CYCLE SPORTS.jpが選ぶ10大ニュース2022プロダクト編
目次
- 1. シマノ105にDI2登場。より手の届きやすくなった電動変速
- 2. 次世代エアロロード続々登場
- 3. エンデュランスロードのオールロード化進む
- 4. 軽量ロードは+αの魅力追求
- 5. アーバンタイプにグラベルタイプ、ロードタイプなど、eバイクも勢力拡大
- 6. グラベルバイクやグラベルホイールの進化
- 7. シマノパワーメーター内蔵クランクがフォースベクトル計測に対応
- 8. ガーミン・エッジ1040ソーラー、フォアランナー955など太陽光充電対応モデル登場
- 9. パーツ、アパレルのエアロ化
- 10. ズイフト新ワールド「URUKAZI」登場、ルービーではバーチャルシマノ鈴鹿ロード実施などバーチャルサイクリング界も活況
日本国内もウィズコロナの気運が高まり、自転車レースやサイクルイベントも次第に例年通りに開催されるようになった2022年。スポーツバイク系の新製品も久しぶりに充実した1年でもあった。2022年にリリースされた新製品や製品に関するトレンドなど、サイクルスポーツが選ぶ10大ニュース・プロダクト編をお届けする。
シマノ105にDI2登場。より手の届きやすくなった電動変速
2022年の新製品で最も大きなニュースのひとつは、シマノのロードバイクコンポーネント105にシリーズ初の電動変速DI2を採用するR7100シリーズが登場したことだろう。2021年に登場した上位モデル、デュラエースR9200シリーズやアルテグラR8100シリーズと同様のワイヤレスDI2とリヤ12スピードを採用し、油圧ディスクブレーキのみというラインナップも話題となった。
シマノの電動変速DI2は、これまでロードバイクコンポーネントではハイエンドのデュラエースとセカンドグレードのアルテグラという上位2機種のみにしか採用されていなかった。DI2には、機械式変速では力を入れて大きくレバーを操作する必要があったフロント変速をスイッチを押すだけで確実にできるというメリットがあり、特に手が小さく力が弱い傾向にある女性サイクリストに大きなメリットがある装備だ。一方、DI2を選ぶにはアルテグラ以上のコンポーネントを選ぶ必要があったため、価格の高さから敬遠する向きも少なくなかったのが実態だ。105にDI2が登場したことは、サイクリストにとって電動変速がより身近になったことを意味する。
一方、DI2が身近になったとはいえ、フルセットで20万円オーバーと、105としては一気に高価格化が進んだことに、「ハイエンドコンポーネントに近いスペックをお値打ちに手に入れられるというこれまでの105のイメージとはややかけ離れてしまった」という声が聞かれるのも事実だ。古いコンポーネントを使い続けるにも、11スピード用スプロケットなどのパーツも品薄気味になっている。円安や世界情勢の影響を受け、スポーツバイクやパーツ類の価格が軒並み高騰する中、機械式変速やリムブレーキに対応し、価格がよりお値打ちなリヤ12スピードコンポーネントが出ることに期待する声は多い。この声にメーカーはどう応えるのだろうか?
次世代エアロロード続々登場
2022年は、ロードバイクのニューモデルも多数発表された。中でもエアロロードは各ブランドが力を入れており、トレック・マドンやスコット・フォイル、ジャイアント・プロペル、ビアンキ・オルトレなどがフルモデルチェンジを果たした。
かつてのエアロロードは、空力性能の追求を重視しすぎるあまり、フレームの横剛性不足や縦方向の剛性過剰による乗り心地の悪化、重量増などの問題があった。近年のエアロロードは、空力性能を犠牲にすることなくこれらのネガを解消し、空力性能と重量、快適性をより高い次元で兼ね備えた「次世代エアロロード」ともいうべき仕上がりになっている。
ジャイアント・プロペルは第3世代に進化し、空力性能と重量剛性比のみならずコントロール性能や快適性の向上まで果たした。重量も最高峰のアドバンスドSL0は完成車重量6.8kgと軽量で、軽量オールラウンダーのTCRを食うほどの万能さを獲得している。
第7世代のトレック・マドンは、シートチューブとトップチューブの接合部付近にISO FLOWという開口部を設け、整流効果と快適性を向上。重量も旧モデル比で300g軽くなっている。
ビアンキ・オルトレRCは、ヘッドチューブ付近に整流効果を高めるエアディフレクターを搭載。残念ながらUCIの車両規定に反するためUCI管轄のレースでは使えないが、斬新なアイデアでサイクリストの度肝を抜いた。
エアロロードというジャンルを切り開いた1台でもあるスコット・フォイルRCは、ケーブルの完全内装化に対応し、コックピットも再設計して空力性能を強化。リア三角の構造を見直すなどし、快適性を向上させるアップデートが図られた。
このように、次世代エアロロードは空力性能の高さはそのままに、これまでの軽量オールラウンダーの要素も取り入れながら進化を続けている。エアロロードのニューモデルをまだ発表していないブランドもいくつかあり、来年以降はその動向にも注目される。
エンデュランスロードのオールロード化進む
エンデュランスロードは、パリ〜ルーベのような春のクラシックレースに焦点を当てた長距離を快適に走れるバイクとして、主にワールドツアーで戦うチームに機材を供給するブランドによって開発されてきた。ヘッドチューブが長めで比較的アップライトなポジションが取りやすく、日本ではロングライド向けのバイクとして認識されている方も多いのではないだろうか。
最近のエンデュランスロードは、ロードバイクのディスクブレーキ化が進んだことで、よりワイドなタイヤに対応するようになった。リムブレーキ時代は700C×28mmがほぼ限界だったが、ディスクブレーキになってシクロクロスバイクの規定(33mm)を超えるような幅の広いタイヤにも対応するエンデュランスロードも増えてきた。
今年はエンデュランスロードも多く発表され、トレック・ドマーネ、キャノンデール・シナプス、サーヴェロ・ソロイストなどがフルモデルチェンジを果たした。これらのバイクもよりワイドなタイヤに対応し、ドマーネSLとSLRは最大700C×38mm幅のタイヤにまで対応。新型シナプスは35mm、ソロイストは実測34mm幅に対応する。これらのバイクは、太いタイヤを履きこなすことで、通常のロードバイクでは走るのを躊躇するような荒れた道も走りやすくなっている。トレックは「ドマーネはグラベルも対応する」とうたっているし、シナプスもちょっとしたグラベルなら走れそうだ。
グラベルバイクが日本でも次第に人気になりつつあるが、昨今のエンデュランスロードはグラベルバイクとのボーダーも曖昧にしつつある。まさにエンデュランスロードのオールロード化といえそうだ。
さらにドマーネは先代モデル比700gの軽量化を達成しつつ空力性能も強化。シナプスは空力性能を強化しながら、ライトやレーダーの電源を統合してスマートフォンから操作できるようにする「スマートセンス」を搭載。エンデュランスロードはエアロロードやグラベルバイクなどさまざまなバイクのいいとこ取りをしたバイクになりつつある。レース志向ではない多くのサイクリストにちょうどいいバイクといえ、今後ますます勢力を拡大しそうだ。
軽量ロードは+αの魅力追求
「ロードバイクは軽さが正義」といわれてきたが、最近は世界最高峰のレースシーンでも主役の座をエアロロードに奪われつつある軽量レーシングロード。とはいえ、山岳ステージではその姿を目にすることもあり、ヒルクライムレースが盛んな日本のマーケットでは根強い人気を誇るカテゴリーだ。2022年は軽量レーシングロードのニューモデルも多く発表されたが、従来のような圧倒的な軽さを追求するバイクだけでなく、エアロの要素を取り入れたり快適性をアップさせるなどオールラウンダーとして進化を遂げることを目指したバイクも少なくない。
超軽量バイクの代表は、ヨネックスが先日発表したカーボネックスSLD。カーボネックスといえば軽量レーシングロードの代名詞とも言える存在だが、ディスクブレーキ仕様でフレーム重量540g(Sサイズ/未塗装)と同社史上最軽量を実現。現在のところ日本のマーケット向けにXSサイズとSサイズのみと割り切った仕様だ。
キャノンデールが夏に発表し、限定200台が販売されたスーパーシックスエボ・ライトバウは、先代モデルよりエアロを追求した3代目スーパーシックスエボがベース。オールラウンダーの要素を持つバイクを軽量化し、軽さを追求した超軽量バイクの要素も併せ持たせたエボリューションモデルと言える。フレーム素材やカーボンのレイアップ方法をアップデートし、フレーム重量750g(フレーム小物つき)と、標準仕様よりさらに軽量化を果たしている。
オールラウンダーの代表は、第5世代にモデルチェンジしたキャニオン・アルティメットシリーズだろう。軽さ、剛性、空力性能、快適性、堅牢性のパーフェクト・バランスをめざし、圧倒的な軽さを誇った先代モデルより重量は微増したものの、フレーム強度を高め、コックピットまわりをアップデートして空力性能を向上させて総合力を高めている。ラピエールのゼリウス、バッソのディアマンテ、コルナゴのV4Rsなども軽量レーシングロードにエアロの要素を加え、戦闘力をアップしており、後者に分類されるだろう。
全体的な傾向として、軽量レーシングロードはただ軽さを追求するだけでなく、エアロの要素も無視できなくなっている。オールラウンド化が進み、軽量レーシングモデルとエアロロードとの境界も次第に曖昧になりつつある。今後レーシングバイクはどのように進化していくのだろうか?
アーバンタイプにグラベルタイプ、ロードタイプなど、eバイクも勢力拡大
2022年には、電動アシスト付きのスポーツバイク、eバイクの注目モデルも次々と登場した。中でもビッグニュースといえるのが、ビアンキがeバイク専門ブランドBianchi Lif-e(ビアンキ・ライフイー)を立ち上げたことだろう。
ビアンキは現存する最古の自転車メーカーだが、今後既存のスポーツバイクに加えてeバイクも重要になるとし、eバイク専門ブランドを立ち上げた。E-Omniaというモデルを展開し、町乗りなどの移動手段をメインにしたCタイプ、移動に加えてフィットネスも楽しみたいアクティブなライダーをターゲットにしたTタイプ、トレイルライドを楽しめるMTB型のXタイプがあり、このうちCタイプとTタイプが先行販売される。新型コロナウイルスのパンデミック以降、密になりにくい移動手段として自転車が注目されているが、ロードバイクより気軽に乗れるスポーティーな自転車を求める向きは少なくない。軽快車(ママチャリ)タイプの電動アシスト自転車ではない、クロスバイクに近いeバイクは、スポーツバイクに初めて乗る人、既存のペダルバイク(電動アシストのない通常のスポーツバイク)では体力面で不安という方にジャストフィットするため、今後注目を集めることは間違いない。後はどれだけ価格がこなれるかに注目だ。
ロードバイクでの注目は、トレックが発表したドマーネをベースとしたeバイク。日本ではアルミフレーム採用のドマーネ+AL5が発売されるが、リヤハブモーターでeバイクらしくないスマートなルックスを実現し、通常のクロスバイクと変わらない14kgという軽さも達成した。一方、海外ではカーボンフレームに新開発したTQ社製HPR50 E-バイクシステムを搭載したドマーネ+SLRが発表され、話題となった。ドライブユニットはBBに、バッテリーはダウンチューブに完全に内装され、一見普通のロードバイクと見分けが付かないレベルに仕上がっている。このモデルが日本で展開されることを願おう。
グラベルバイクの人気の高まりを反映するように、eグラベルバイクをラインナップするブランドも増えた。ヤマハからはeグラベルバイク・ワバッシュRTが発表された。このモデルは、従来ユニットより100gも軽く、オンロードでもオフロードでも適切なアシストが行われるオートマチックアシストモードを搭載した新型アシストユニットを採用。シマノのグラベルバイクコンポ・GRXやドロッパーシートポストを採用し、オンロードもオフロードも楽しめるeバイクだ。キャノンデールはトップストーンシリーズのeバイク版・トップストーンネオ、ベスビーはJG1をラインナップしている。電動アシストは上りだけでなくオフロードでも真価を発揮するが、ツーリングバイクとして使われることも多いグラベルバイクの場合、荷物を満載し車両の総重量が増えたときにもアシストは有効だ。今後eグラベルバイクはさらにバリエーションを増やしそうだ。
グラベルバイクやグラベルホイールの進化
ここ数年、グラベルバイクを取り巻く環境がますます盛り上がっている。特にレースシーンの盛り上がりが顕著で、UCIグラベル世界選手権やグラベルワールドシリーズが初開催されたほか、国内でも野辺山グラベルチャレンジや王滝のグラベルバイク部門など、グラベルレースが開催された。グラベルレースが本格的に行われるようになったことで、レースを強く意識したモデルも登場した。
スペシャライズドのディバージュSTRは、独自の衝撃吸収機構・フューチャーショックを前後に備える。フロントはヘッドチューブ付近にありトラベル量20mm、リヤはトップチューブとシートチューブをつなぐように設置されトラベル量は30mm。衝撃吸収機構を備えるものの、いわゆるMTBのサスペンションとは違うため基本はリジッドフレームといえるが、路面の衝撃を感知して作動し、ペダリングパワーを逃すことなく荒れた路面での操作性や走破性を向上させている。
ホイールではシマノがGRXグレードのカーボンホイール・WH-RX870を発表。最大50mm幅のタイヤに対応する内幅25mmのカーボンリムを採用し、前後ペア重量1400g台半ばという軽さを実現。前後ペアで10万円台という手の届きやすい価格も魅力で、グラベルレースシーンだけでなく、上りの多い日本のグラベルではアップグレードの定番となりそうだ。
レースを強く意識したモデルでないが、100%リサイクル可能なマグネシウムフレームを採用したヴァーストの主力モデル・A/1も注目を集めた。オールロードフレームとうたっているが、搭載されるコンポーネントがグラベル用で、650Bホイール完成車もラインナップするなどグラベルに重きが置かれている。ちなみに同ブランドは、100%リサイクル可能なマグネシウムフレームだけでなく、梱包資材もリサイクル可能な素材を使用するなど、環境に配慮したブランドとして注目されている。
グラベルバイクの人気を支える非レース派のサイクリストを中心に、未舗装路を交えたロングツーリングを楽しむ人も増えている。ハンドルバーバッグやフレームバッグ、大きめのサドルバッグなど、ベルクロであらゆるバイクに簡単に取り付けられるバッグも充実している。もっとシンプルに荷物を運ぶため、チューブやCO2ボンベなどをストラップでフレームなどに直接固定するという方法も市民権を得始めている。
グラベルシーンはレースからツーリングまで広がりを見せ、その影響で周辺アイテムの多様化も進んでいる。来年以降もこの傾向が続くのは間違いなさそうだ。
シマノパワーメーター内蔵クランクがフォースベクトル計測に対応
シマノのデュラエースR9200シリーズとアルテグラR8100シリーズにはパワーメーター内蔵のクランクセットが用意されているが、両モデルがフォースベクトル計測に対応したのも大きなニュースだ。
フォースベクトルとは、ペダリング時に発生する踏力(トルク)の向きと大きさをベクトルで表示する機能で、ガーミンやワフーのフォースベクトル表示に対応するサイクルコンピューターを使うことでリアルタイムに自分がどのようなペダリングをしているかが分かる。また、サイクリング中のデータをシマノのデータ解析サービス・コネクトラボにアップロードすることで、ライド全体のペダリングを振り返ることができる。
これはかつてパイオニア・ペダリングモニターシステムと解析サービス・シクロスフィアでしか利用できなかった機能だが、パイオニアが自転車事業をシマノに譲渡したことで実現した。ペダリングモニターシステムの最大の売りだったフォースベクトルが最新のコンポーネントでしかもメーカーの純正品として用意されることになった。これはシマノのメーカー保証が受けられるということで、ユーザーにとってもメリットが大きい。また、コネクトラボにはパイオニアのペダリングモニターで記録されたデータもアップロードできるため、ペダリングモニターユーザーにとってもうれしい話だ。
今後GRXなどのグラベルコンポーネントやXTRなどのMTBコンポーネントでもフォースベクトル計測に対応するパワーメーターがラインナップされるのか、注目しよう。
ガーミン・エッジ1040ソーラー、フォアランナー955など太陽光充電対応モデル登場
サイクルコンピューターやサイクルコンピューター代わりに使える腕時計タイプのスポーツウォッチでは、バッテリーの持ち時間は重要な性能のひとつ。特に長時間走り続けるロングライドや超長距離ライドのブルベなどでは重視される項目だ。長時間バッテリーが持てばそれだけ充電の回数も減らせる。サイクルコンピューターを稼働しながらモバイルバッテリーで給電するという方法に対応する機種も増えているが、装備が増えることや悪天候時に給電ポートが露出することでトラブルの原因となる恐れもある。
そんな悩みを解決したのが、ガーミンのサイクルコンピューターのフラッグシップモデル・エッジ1040ソーラーとフォアランナー955デュアルパワーなど、ソーラー充電に対応したモデルだ。いずれも液晶画面にソーラー充電パネルを搭載し、屋外で使うとバッテリーの消費を抑えることができる。もちろんデバイス単体でソーラー充電ができるので、モバイルバッテリーを接続する必要もない。
エッジ1040ソーラーは、ソーラー充電併用で約45時間稼働。実に丸2日近く稼働する計算だ。一方、フォアランナー955デュアルパワーも、ソーラー充電に対応し、GPSモードでソーラー充電を併用した場合、約49時間稼働するという。
サイクルコンピューターの進化により、画面の大型化やカラー化、バッテリーの大容量化が進み、操作がスマホのようにタッチパネルになったり、性能アップで動作スピードが向上したり、より多くの衛星に対応するようになって常に正確な位置情報を得られるようにもなった。サイクルコンピューターにソーラーパネルを搭載し、屋外で走りながら充電することでバッテリーの消費を抑えるというアイデアは、バッテリーの大型化による本体の大型化も抑制できるはずで、今後さまざまなモデルにソーラー充電機能が搭載されることだろう。
パーツ、アパレルのエアロ化
ロードバイクでは空力性能の追求がひとつのキーワードになっているが、それを受けてパーツやアパレルなども空力性能の高さをうたうものが増えた。
ヘルメットではエアロヘルメットというカテゴリーがすでに定着しているが、日本のヘルメットブランド・カブトはエアロR2を発表。ヘルメットの帽体付近の空気の流れを整えるウェイクスタビライザーや、ヘルメット内を通過する空気の通り道を作るエアトンネルなど独自のテクノロジーによってショートテールながらロングテールなみのエアロ効果を実現。ヘルメット単体での空力性能の高さもさることながら、アイウェア代わりになるシールド(風防)を付けることでさらに空力性能をアップすることができる。
足まわりではジャイアントのエアロロード・プロペルと同時期に発表されたカデックス50ウルトラエアロホイールとエアロタイヤにも注目が集まった。カデックス50は、従来のモデルと違い、中央部が前後に幅広く前方から見る薄い新型のカーボンエアロスポークを採用し、50mmハイトで内幅も22.4mmとなった新型のエアロリム、エアロ形状のハブなどを組み合わせ、同社の実験では他社の同クラスのホイールと比べて高い空力性能を実現した。さらにエアロタイヤを組み合わせることでその空力性能は盤石なものになる。ホイールとタイヤをトータルで開発した例はマヴィックなどの例があるが、空力性能にフォーカスを当てて開発された例は初めてのケースだろう。
ビッグプーリーでおなじみのセラミックスピードは、OSPW(オーバーサイズプーリーウィール)のエアロモデルを発表した。プーリーケージをエアロカバーで覆ったもので、空力性能への寄与は他のパーツに比べると大きくはないはずだが、空力性能を重視する時代を反映した昨今らしいパーツとして挙げたい。
最近のエアロロードはハンドルやステムを専用品とするケースも少なくないが、デダエレメンティやFSAなどはケーブル内装に対応する汎用のハンドルバーやステムを展開。デダエレメンティはケーブル内装を可能にするDCRシステムを採用するスーパーゼロハンドルやスーパーボックスステムをラインナップし、FSAも電動/機械式変速、あるいは油圧式/機械式ブレーキに柔軟に対応するSMRシステムに対応するステムやハンドルを用意している。
エアロを重視する風潮が続く限り、こういったパーツは今後も充実しそうだ。
ズイフト新ワールド「URUKAZI」登場、ルービーではバーチャルシマノ鈴鹿ロード実施などバーチャルサイクリング界も活況
コロナ禍をきっかけにバーチャルサイクリングもすっかり市民権を得た。バーチャルのコースの地形に合わせてサイクルトレーナーの負荷が自動で変化するスマートトレーナーを併用することで、より自然な、没入感の高いライドが楽しめるようになったことも人気を拡大したひとつの要因だ。国内で人気のバーチャルサイクリングサービスは、2022年現在ズイフトとルービーの2強と言っていい。
ズイフトはこの分野の先駆者といえるサービスだけにユーザーが多く、このところは積極的に新しいワールドや新コースを発表している。2022年はすでに発表されていたマクリ島の日本の田舎風景を再現したYUMEZIやサイバーパンク風の夜の東京をイメージしたNEOKYOといったコースに加え、沖縄をモチーフにした「URUKAZI」という新ワールドが追加された。URUKAZIとは琉球語で海岸を表す「URU」と風を表す「KAZI」を組み合わせた造語。URUKAZIはYUMEZIやNEOKYOとつながっており、これらの世界を一度のライドで自由に行き来できる。日本人ユーザーにとってはどことなくなじみ深い世界を走れる(自転車もちゃんと日本スタンダードの左側走行!)のはうれしい。
一方のルービーは、ツール・ド・フランスをはじめとするバーチャルレースが行われた実績があり、世界のサイクルコースを忠実に再現したコースが楽しめるなど、リアルさをウリとしたサービスだ。2022年はシマノ鈴鹿ロードがルービーのプラットフォームを使ってバーチャルシマノ鈴鹿ロードを開催し、話題を集めた。バーチャルレースは、リアルレースと並行して行われたが、これは今までにはなかった形だ。ウィズコロナ、アフターコロナ時代のイベントのあり方を象徴する出来事として、今後このような形でイベント・レースを行う主催者が増えるかもしれない。