パールイズミ×日本大学自転車部 伝統と新たな挑戦
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およそ60年もの期間、関係が続く日本大学とパールイズミ。
その関係や日本大学を代表するジャージの重み、そして新たな試みを続ける日本大学自転車部について、我妻敏コーチ、三神遼矢選手、岡本勝哉選手、さらにパールイズミの清水秀和さんに話を聞いた。
伝統ジャージの重み
日本大学の鮮やかなピンク色のジャージは、見た者の記憶から決して離れることはない。日本大学自転車部は、創部1951年の強豪校だ。現監督である井上由大の下、インカレ30連覇という驚異的な記録を含め合計53度もの総合優勝をもたらし、これまでに国内プロ選手やナショナルチームで活躍する選手も多く輩出している。
だが、この伝統校のジャージは、自転車部に所属しているからといって全員が着られるわけではない。監督の並々ならぬ思いが詰まっており、大学対抗などの大きいレースで選ばれし選手しか着られないものなのだ。コーチを務める我妻敏はこう話す。
「レースの直前に監督から選手に渡して、レースが終わったらすぐ回収されます。選手に洗わせないです。監督が手洗いして、干して。一番いいクオリティのユニフォームは、そういう形で管理されています。監督が認めた選手しか着させないです」
直近の国体スプリントで優勝するなど、トラック短距離で活躍を見せ、トラック短距離ナショナルチーム入りを目指す三神遼矢は、そのジャージを着る一人だ。
「全国大会や学校対抗など大きい大会でしか着る機会が与えられなくて、それも監督から渡されて、より一層気持ちが入ります。これを着てるんだから、自分がしっかり点を取るぞという気持ちが強くなります」
トラック中距離のメンバーとして躍進を見せ、在学中ながら今年からチームブリヂストンサイクリングに加入した岡本勝哉もまた、普段のジャージとは異なると話す。
「最先端の技術が詰まっているジャージだから、タイムが上がるなどのプラスの面が増えるので、監督からの期待も詰まっていてプレッシャーも感じます。でも、普段着ているウェアとはフィット感も全然違って、着心地も良いし、やっぱりそれを着て走れることにはうれしさとか、パワーがみなぎってくる感じがします」
一方で、大事なレースで限られたメンバーしか着られないジャージに対して大きい重圧もあると我妻は語る。
「一部のメンバーが大切なレースでしか着用できない分、プレッシャーが大きく、普段以上のパフォーマンスを出せないのがピンクジャージ。その中で勝ち続けるっていうのは相当大変なんですが、その分得られる経験は後から見るとすごく大きいと思います」
さらに発展した関係性へ
そんな象徴的なピンクのジャージを提供し続けるパールイズミとの関係は、およそ60年前からと長い。パールイズミの元会長、清水弘裕も日大の自転車部出身であり、そこから関係は続いているという。パールイズミでは、2023年に初めて日大自転車部からインターンシップの受け入れをすべく両者で進めている。清水は我妻の発案からだと話し、今後のお互いのさらなる発展を望む。
「趣味で乗っているサイクリストにも、自転車競技を観て面白いと感じてもらうためには、選手が一般の方と触れ合う場があっても良いのかなと。そういう場にインターンの学生が関わったりするのも面白いと思っています」
また、それだけではなく、愛校心につながるような日大卒業生向けのグッズ展開なども考えているそうだ。これも我妻の発案とのこと。我妻はこう話す。
「日大の自転車部のジャージは毎年着ますが、大会のときしか着ません。でもジャージを着ているとき以外に日常でも着られるものがあるといいなと思っていて。常に身につけていると愛着が湧くじゃないですか。そういった物への愛着が愛校心に繋がればいいなと思っています。チームに愛着を持ってもらいたいんですよね。帰属意識を高めて欲しいというか。社会に出て苦しくなったときに戻れる場所だったり、相談できる人がいたりするのは安心できると思うんです。そういう場所があるからこそ、もっと社会でチャレンジできる。そういうチームでありたいなって思ってるので。アイテムを切り口にしてそういう意識醸成を図れればなと思っています」
チャレンジ精神の種
今や日大自転車部の強みは、伝統だけではない。日大の自転車部といえば、寮での生活で厳しい上下関係というイメージが強いそうだが、今ではそういった関係性も緩和してきているそうだ。岡本はこう話す。
「やっぱりその時代に合った教育の仕方であったり、先輩後輩の関係を持っていくべきだと思っています。段々過ごしやすく、自由になってきてはいるんですけど、外部から見るとまだ日大のイメージは、寮がきついから入りたくないとか、上下関係が厳しいからとか……。そういったイメージを払拭するためにも、時代が変わってきて、内部の環境も変わってきているということを外部にもどんどん発信していって、イメージをまず変えていくことが必要なんじゃないかなと僕は思います」
この上下関係の改善についても我妻の考えだけでなく学生の意見から生まれた一つのチャレンジだそうだ。我妻はこう考える。
「年齢が上だから従えとか、年齢が下だから物を言わないとか、そういうのって違うんじゃないかなと思っていて。若い子には若い子なりの視点もあるし、上級生には上級生なりの視点もあって、それぞれの視点や考え方をミックスして、チームとしてプラスになればいいかなと思っています。大学は教育機関なので、在学中に社会に即した環境で成長していってくれる方がいいのかなと。社会情勢に応じて部内のルールやマネジメントの仕方は変えています」
そういった学生それぞれの思いを実行に移すなかで、インカレは部内全員の共通の目標となる。だが、勝敗よりもチャレンジの大切さや、自らの考えで動く主体性に我妻は重きを置く。
「新しい学年が幹部になったときに、極端な話、インカレで負けてもいいよって絶対言ってるんですよ。もっと大事にして欲しいのは、自分たちはこう思うということを体現して、チャレンジしてもらいたいんです。チャレンジをした結果、インカレで負けたとしても、その失敗の経験はすごく自分の成長につながる。大学生の結果よりも、そこで得られる経験の方を大事にして欲しいので。チャレンジしたいと思うんだったらチャレンジしてほしい」
新たな挑戦を続け、今後どう変化を遂げるだろうか。ここで挑戦のマインドを持ってピンクのジャージを争ったメンバーが、日本大学やパールイズミだけでなく、今後の自転車業界全体にとって重要な人物となり得るかもしれない。
POSとは?
2022年末からオーダージャージのサービスをPOS(パールイズミオーダーサービス)として刷新。HPにはイメージしやすいよう着用画像が多く掲載されており、選ぶ楽しみも。製品群としても、気軽に7000円台から作れるファーストシリーズが加わり、オプションメニューもさらに変更を予定している。