アンカー新時代 日本の老舗、新たなる門出
目次
RACINGとACTIVE 2つのラインが登場
東京2020オリンピックに向けてトラックバイクの開発を進めるブリヂストンサイクルが、その基盤技術であるPROFORMAT(推進力最大化解析技術)を用いた2020年モデルを発表。レーシング、アクティブの両ラインにおける旗艦モデルを試乗し、その技術の効果に迫る。
去る9月24日、ブリヂストンサイクルは、東京2020オリンピックに出場する自転車競技のナショナルチームに、トラックバイクを供給することを正式に発表。これにより“日本開催の五輪で日本製機材を使用した日本人選手のメダル獲得”の夢が一気に近付いたのだ。
併せてアンカーの2020年モデルも発表された。最も大きな変革は、ラインナップ全体をアスリート向けのレーシングラインと、自由な楽しみ方にフォーカスしたアクティブラインの2つに分けたことだ。これはスポーツバイクが使われるシーンの多様化をはじめ、オリンピック以降にこのジャンルに興味を持った人への普及まで見据えたもので、カラーリングも明確に分けられた。
東京五輪を走るアンカーのトラックバイク。この開発の基盤となる技術は、2016年発売のRS9から採用されたPROFORMAT(プロフォーマット)だ。これはブリヂストンの基盤技術部門と共同で構築したテクノロジーであり、推進力最大化解析技術とも呼ばれている。剛性や空力について最新のシミュレーション解析を行い、接地状態やペダリング時の挙動まで含めて設計に盛り込めるのが特徴となっている。
そんなプロフォーマットをさらに一歩推し進めて登場したのが、レーシングラインの旗艦モデルであるRS9sだ。RS9のアップデート版という位置付けで、選手の意見を反映してリヤセクションの変形量を最適化している。主にチェーンステーを改良しているが、単に剛性を上げたりしなり量を減らしたのではなく、むしろしなりを残したほうが選手の印象が良かったとのこと。また、結果的に40gもの軽量化も達成した。
セレクトカラーのレーススタイルでは、ダウンチューブに大きくブリヂストンのロゴが入る。これはレーシングラインに共通するもので、チームブリヂストンサイクリングとのイメージ連携も狙っているのだ。
一方、アクティブラインの旗艦モデルであるRL9は、2020年モデルでまったく新しいカラーリングやグラフィックを採用した。レーシングラインとは対照的な控えめロゴは、乗る人のファッションやシーンとの調和を狙ったもの。なお、RL9のみセレクトカラーでフェードスタイルを選択すると、ステムとバーテープも同色となる。これはかなり珍しい取り組みであり、新たなカスタマイズの手段として注目されそう だ。
なお、このRL9もプロフォーマットを用いて設計されている。RS9で培ったノウハウをロングライド向けに再構成しており、コンフォートなことはもちろん、ヒルクライムもこなせるだけのパフォーマンスも秘めている。加えてフレームサイズを390mm(トップ長485mm)から用意しているのも見逃せない。
レーシングバイクのRS9からスタートしたプロフォーマットが、いよいよ世界の檜舞台へ。以下ではRS9sとRL9に試乗し、その最新テクノロジーを体感する。
これぞ熟成の極み、総合的なバランスの妙を実感
RACING LINE
レーシングライン
ANCHOR
RS9s
アンカー・RS9s
このRS9s、今年5月に30本限定で販売されたチームエディションの量産仕様であり、中身はまったく同じものだ。ただし、カラーセレクトのレーススタイル(写真)は限定モデルとはグラフィックが微妙に異なる。
ダッシュ時におけるリヤのバタつき改善や前後の剛性バランスアップなど、選手からの要望に応えるべくチェーンステーのカーボン積層を見直したRS9s。エアロやディスクブレーキがトレンドワードとなっている昨今、むしろオーソドックスなスタイリングに安心感を覚える人も多いだろう。キレのいい加速や登坂、優れた巡航性能を見せるなど、レーシングバイクとしてのパフォーマンスは一級品。その一方で、意のままに操れるコーナリングや強力なブレーキ性能などもあって、一部分の能力だけが突出していないところに熟成という言葉の意味を実感できる。
推進力の最大化というプロフォーマットの効果が最も濃密に味わえるのがRS9sであり、まさに勝つためのフラッグシップと言えるだろう。
Spec.
シマノ・デュラエースDi2完成車価格:99万4000円(オプション込み、ベースモデルは80万円)、
フレームセット価格:37万円 ※価格は全て税抜
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・デュラエースDi2
ホイール:シマノ・デュラエースWH-R9100-C40-CL
タイヤ:ブリヂストン・エクステンザR1X 700×23C
ハンドルバー:デダ・ゼロ100ブラック
ステム:デダ・ゼロ100ブラック
サドル:フィジーク・アンタレスR7ブラック
シートポスト:デダ・ゼロ100
フレームセット重量:1390g(490mm)
サイズ:430、460、490、520、550mm
カラー:レーススタイル
快適性と推進力はそのままに、グラフィックを刷新
ACTIVE LINE
アクティブライン
ANCHOR
RL9
アンカー・RL9
2017年に発売されたロングライド向けの旗艦であるRL9。試乗車のカラーリングはステムやバーテープも同色となるフェードスタイルで、控えめになったロゴと合わせて実にモダンな印象であり、好感が持てる。
当然ながら走りはRS9sとは対照 的であり、非常にコンフォートだ。とはいえ、路面からの振動について は不快なノイズのみ除去し、接地感 が薄れない範囲で体に伝えてくる。そのサジ加減が絶妙で、これ以上快適性に振るとロードバイクならではの爽快な走りが味わえないだろう。
向かい風の中、ふとメーターを見ると普段の感覚よりも明らかに速度が高い。試乗中、それが何度もあって自分でも驚いた。ただ剛性が高いだけだと踏み負けるなどの感覚があるのだが、RL9はクランクが何時の位置でも気持ち良く推進するフィーリングがあり、その点ではRS9sよりもプロフォーマットの効果が体感しやすいと言えるかもしれない。
エンデューロやヒルクラも余裕でカバー。欲張りな人にオススメだ。
Spec.
シマノ・デュラエース完成車価格:60万円(オプション込み、ベースモデルは62万5000円)、
フレームセット価格:22万5000円
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・デュラエース
ホイール:DTスイス・PR1400ダイカットオクシック32
タイヤ:ブリヂストン・エクステンザ R1X 700×25C
ハンドルバー:アンカー日東・M101S
ステム:アンカー日東・UI-21
サドル:フィジーク・アンタレスR7ブラック
シートポスト:オリジナル
フレームセット重量:1390g(490mm)
サイズ:390、420、450、480、510、540mm
カラー:フェードスタイル オーシャンネイビー
初のディスクロードが普及グレードから登場
RL9の乗り味をアルミで再現することをコンセプトに、2017年シーズンに登場したRL6。そのディスクブレーキ仕様が発売されることに。併売されるリムブレーキ仕様が25Cタイヤを標準装着するのに対して、RL6Dは28C(105完成車)または32C(ティアグラ完成車)を採用。ダウンチューブの下面にもボトルケージ台座を設置する。
ANCHOR
RL6D
シマノ・105完成車価格:21万5000円(税抜)
シマノ・ティアグラ完成車価格:17万円(税抜)
フレームセット価格:10万5000円(税抜)
サイズ:420、450、480、510、540mm
※12月末発売予定
エントリー層に朗報 クラリス仕様を追加
素材や加工を吟味することで、RL6と同じコンセプトを購入しやすい価格で実現したのがRL3だ。2020年はエントリーモデルとして8Sのクラリス仕様と、10Sのティアグラ仕様が追加され、ドロップハンドルモデルは全3タイプに。なお、フラットバーモデルは従来のソラから8Sのクラリスへと変更し、税抜価格を1万7000円もダウン。