スペシャライズドのeMTB「ターボ リーボ SL」が新型となって登場

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スペシャライズドから新型e-MTB「ターボリーボSL」(第二世代)が登場

撮影場所:フォレストバイク

アメリカのスポーツ自転車ブランドSPECIALIZED(スペシャライズド)から、第2世代となるeMTB(電動アシスト機能付きのマウンテンバイク)の「Turbo Levo SL(ターボ リーボ SL)」が新登場。新型モーターを搭載し、“下り系トレイルバイク”に生まれ変わった。特徴を紹介するとともに、インプレッションをお届けしよう。

 

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新型Turbo Levo SLの特徴

スペシャライズドが展開するeMTBシリーズの中で、トレイルのカテゴリーに位置づけられるのがターボ リーボ SLシリーズだ。前作の第1世代は、上り性能と下り性能のバランスが取れた、オーソドックスなトレイルバイクだった。

今作は、写真を見てピンとくる人もいると思うが、ぱっと見てスペシャライズドの人気“下り系トレイルバイク”「STUMPJUMPER EVO(スタンプジャンパー エボ)」のシルエットに非常に似ている。そう、スタンプジャンパー エボをベースとした下り系トレイルバイクとして生まれ変わったのだ。

新型ターボ リーボ SLフロントサスペンション

新型ターボ リーボ SLの160mmトラベルのフロントサスペンション

新型ターボ リーボ SLのリヤショック

新型ターボ リーボ SLの150mmトラベルのリヤショック。この車体専用にチューニングされている。ショックユニットの交換で後輪のサイズ変更も可能だ(後述)

 

まず、スタンプジャンパー エボと同じく、フロントサスペンションのトラベル量は160mmで、リヤショックのトラベル量は150mmとなり、より下り性能に振った設計となった。なお、前輪は29インチ、後輪が27.5インチのマレット仕様となっている。

次に、スタンプジャンパーエボと同じく、ジオメトリの調整機能が加わっている。ライダーの好みや走るフィールドに合わせて乗り味を調整できるのだ。

ヘッドアングル調整機能のついたヘッドパーツ

ヘッドアングル調整機能のついたヘッドパーツ

 

ヘッドアングルはヘッドパーツの交換(または前後位置の入れ替え)によって3段階に変更できる。また、リヤサスペンションのショックユニット部分のパーツを付け替えるだけで、BBハイトを2段階で調整が可能だ。

新型ターボ リーボ SLの調整可能なホルストリンク

新型ターボ リーボ SLの調整可能なホルストリンク

 

さらに、リヤエンド付近にあるホルストリンクと呼ばれる部分の部品を付け替えると、後輪を29インチに変更できる。

新型ターボ リーボ SLのドライブユニット部分

新型ターボ リーボ SLのドライブユニット部分。最大出力は320Wで、最大トルクは50N・mだ。バッテリー容量は320Whである。給電口もドライブユニット付近に設けられている

ターボSL1.2モーター

ターボSL1.2モーター

新型ターボ リーボ SLの電源スイッチ&ディスプレー部分と手元スイッチ部分

新型ターボ リーボ SLの電源スイッチ&ディスプレー部分と手元スイッチ部分

 

続いて、ドライブユニットが刷新されている。スペシャライズド独自のターボSL1.1モーターがターボSL1.2モーターに変わり、以前よりもトルクが40%向上し、パワーが30%向上している。さらに、モーター音がより静かになっている。なお、アシストモードは従来どおりの3段階で、専用アプリを使えば好みのアシスト力に調節も可能となっている。

最後に、サイジングが変更されている。これまではS、M、Lというサイジングだったが、スタンプジャンパー、スタンプジャンパー エボ、エンデューロなどのMTBに採用される、S1、S2、S3、S4、S5の5段階のサイジングに変更された。例えば体格的にS3の人なら、より短めのホイールベースが好みなのでS2を選ぶ、といったことが可能な設計となっている。

ちなみに重量は公表していないが、トラベル量が増え下り性能に振った設計になったにもかかわらず、前作よりも重量は増えていない。ベースグレード「Turbo Levo SL COMP(ターボ リーボ SL コンプ)」を手に持ってみると、ハイスペックなダウンヒルバイクと同等レベルだと感じた。eバイク全体の中では比較的軽量と言え、またeMTBの中では超軽量な部類に入るのは間違いない。

 

新型Turbo Levo SLのラインナップ

現状では、Sワークスグレードの完成車が1モデル、ベースグレードとなる完成車が1モデル、そしてSワークスグレードの限定モデルが1モデルと、3モデル展開となっている。全てフレームはカーボンだ。

 

S-WORKS TURBO LEVO SL

●価格:193万5000円
●フレーム:カーボン
●メインコンポ:スラム・XXイーグルAXSトランスミッション
●フォーク:フォックス・ファクトリー36 160mmトラベル
●リヤショック:フォックス・ファクトリー フロートX 150mmトラベル
●ブレーキ:スラム・コード アルティメット ステルス
●ホイール:ロヴァール・トラバースSL ※マレット
●タイヤ:フロント/スペシャライズド・ブッチャー グリッド トレイル 2ブリスレディ T9 29×2.3、リヤ/スペシャライズド・イリミネーター グリッド トレイル 2ブリスレディ T7/T9 27.5×2.3
●バッテリー容量:320Wh(レンジエックステンダーで最大480Whになる)
●ドライブユニット:ターボSL1.2モーター(最大出力320W、最大トルク50N・m)
●付属品:レンジエクステンダー
●サイズ:S1、S2、S3、S4、S5

 

TURBO LEVO SL COMP

●価格:99万円
●フレーム:カーボン
●メインコンポ:スラム・GXイーグル
●フォーク:フォックス・リズム36 160mmトラベル
●リヤショック:フォックス・パフォーマンス フロートX 150mmトラベル
●ブレーキ:スラム・コードRS
●ホイール:完成車用ベースグレードホイール ※マレット
●タイヤ:フロント/スペシャライズド・ブッチャー グリッド トレイル 2ブリスレディ T9 29×2.3、リヤ/スペシャライズド・イリミネーター グリッド トレイル 2ブリスレディ T7/T9 27.5×2.3
●バッテリー容量:320Wh(レンジエックステンダーで最大480Whになる)
●ドライブユニット:ターボSL1.2モーター(最大出力320W、最大トルク50N・m)
●サイズ:S1、S2、S3、S4、S5

 

S-WORKS TURBO LEVO SL LTD(限定モデル)

●価格:196万円
●フレーム:カーボン
●メインコンポ:スラム・XXイーグルAXSトランスミッション
●フォーク:ロックショックス・フライトアテンダント 160mmトラベル
●リヤショック:ロックショックス・フライトアテンダント 150mmトラベル
●ブレーキ:スラム・コード アルティメット ステルス
●ホイール:ロヴァール・トラバースSL ※マレット
●タイヤ:フロント/スペシャライズド・ブッチャー グリッド トレイル 2ブリスレディ T9 29×2.3、リヤ/スペシャライズド・イリミネーター グリッド トレイル 2ブリスレディ T7/T9 27.5×2.3
●バッテリー容量:320Wh(レンジエックステンダーで最大480Whになる)
●ドライブユニット:ターボSL1.2モーター(最大出力320W、最大トルク50N・m)
●付属品:レンジエクステンダー
●サイズ:S1、S2、S3、S4、S5

 

新型Turbo Levo SLインプレッション

新型ターボリーボSLインプレッション

インプレッションライダー/サイクルスポーツ編集部・大宅。もともとはロードバイク乗りだが、近年はMTBグラビティライドに取り組む

 

今回はベースグレードとなるターボ リーボ SL コンプに試乗した。平凡な言葉であるが、真っ先に脳裏に思い浮かんだのは「これは驚きの性能だ!」ということだ。

まず、eバイクとして以前に下り系MTBとして走行性能が非常に高い。筆者は個人的にこの自転車のベースとなっているスタンプジャンパーエボを所有して乗っているが、それとまったく遜色がない。それどころか、むしろこちらの方が優れているのではないかと思えるほどだ。

安定性が高く、初期でマレット仕様となっていることと相まって旋回性能も非常に高い。車体を浮かせたり、ジャンプをしたりする動作が軽々と行え、まったく自分がeMTBに乗っている感覚がない。木の根などのセクションにおける衝撃吸収性も良い。車体自体がeMTBとしては超軽量なので、それもこれらの性能に寄与しているだろう。

スペシャライズド・新型ターボリーボSLインプレッション

そして肝心のアシスト性能について。確かに、前作に比較してよりパワフルになっていると感じた。前作でも十分パワフルだと感じていたが、さらに、という印象だ。舗装路を淡々と上るときにはぐんぐんと進んでいき、トレイルのきつい上りもスイスイと上る。

それでいてアシスト感が非常に自然で滑らかだ。この点も前作より向上していると感じた。急勾配のトレイルでも、後輪のトラクションが抜けてスリップしにくい。ペダルを踏む力に応じてスムーズにアシストが働いてくれる。

もはや他のeMTBの存在がかすんでしまうほどの一台だ。グリーンシーズン中にゴンドラ・リフトを利用した下り系MTBパークでの遊びも満喫できるし、ウィンターシーズン中のトレイルライドや自走で上る方式のMTBパークでのライドも楽しめる。おおよそのMTBグラビティライド(下りをメインで楽しむスタイル)がこれ一台で網羅できてしまう。

がしかし、ネックなのは価格だ。ベースグレードで約100万円と、簡単には手が出ない金額である。スタンプジャンパー エボのベースグレード、スタンプジャンパー エボ コンプが約75万円なので、プラスアルファでアシスト機能がついてさらに自転車としての性能が抜群なことを考えると、変な表現だがむしろ安い方だとは言える。しかし、100万円を自転車に投資するのはなかなか難しい人がほとんどだろう。

ただ、これは買う価値のある自転車なのは間違いない。うーん、悩ましいところだ。

 

マット・ハンター氏も来日

新型ターボ リーボ SLでビッグジャンプを飛ぶマット・ハンター氏

新型ターボ リーボ SLでビッグジャンプを飛ぶマット・ハンター氏

マット・ハンター氏

マット・ハンター氏

 

本作の日本における発売を記念して、世界的に著名なカナダのプロMTBライダー、マット・ハンター氏も来日した。

「eMTBとは思えない、自然なライドフィーリングです」とコメントしたハンター氏。彼がこの新型ターボ リーボ SLでライディングする姿を見学する機会を得たが、ビッグジャンプでぶっ飛んでエアトリックをきめ、コーナーでズバンとカッティーズしていた。彼のようなプロライダーが乗ってもこのように通常のMTBと遜色のない走りができることは、その姿からも証明された。