達人に聞く! ディスクロード輪行のコツ
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ディスクブレーキ仕様のロードバイク、いわゆるディスクロードがどんどん浸透してきている。そんななか、気になるトピックスの一つが”ディスクロードでの輪行”ではないだろうか。エンドの規格がリムブレーキ仕様と違うので、従来のエンド金具が使えない? ブレーキローターの取り扱いは? ホイールを外した状態でブレーキレバーを引き切ると大変なことに!? 分からないことだらけだ。そこで、今回はディスクロードの輪行について、そのコツを専門家に取材してみた。
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基本は同じだが、注意点が3つ
今回取材したのは、輪行袋や関連製品で国内の大きなシェアを誇るメーカー・オーストリッチを展開する、アズマ産業社長の伊美哲也(いみ てつや)さんだ。伊美さんは、自身も”輪行の達人”と呼べるほどの技術を持っており、公演やイベントの出演も多数行っている。
ディスクロードでの輪行は、リムブレーキ仕様のものとどう違うのか。また、注意点はあるのだろうか。
「ディスクロード輪行は、リムブレーキのものの輪行とやり方自体は同じです。しかし、3つ気をつけるべきポイントがあり、そこに注意をすればいいのです。
1つ目のポイントは、エンドの規格が異なるので、エンド金具が必要な輪行袋の場合、それ専用のものを使う必要があることです。
2つ目は、ブレーキローターの取り扱いに注意が必要なことです。
最後に、ホイールを外した状態ではブレーキキャリパーに専用の部品を使い、取り扱いに注意を払う必要があることです」。
では、それぞれについて、詳しく教えてもらおう。
POINT① ディスクロード用エンド金具を使おう!
まず、1つ目の専用エンド金具を使う、というポイントだ。
「ホイールを前後とも外し、エンド部分に金具(エンド金具)を使う輪行袋のタイプ、つまり縦型の輪行袋の場合に必要なことです(これは最も主流なタイプと言える ※編集部注)。
ディスクロードは、リヤエンド幅が142mmで12mmのシャフトを使ったスルーアクスルという規格が主流です。従来のリムブレーキ仕様では、リヤエンド幅が130mmでクイックリリースという規格が主流でした。ですから、従来のエンド金具が付けられないわけです」。
では、ディスクロード用エンド金具とはどのようなものなのか。
「オーストリッチのものを例に紹介しますと、地面と接する金具部分が142mm幅に合うように作られており、バイク本体に付属するスルーアクスルシャフトを芯棒とスペーサー&ワッシャーに通して使います。バイクによってエンド幅が微妙に異なることもあるので、芯棒は調整機構も備えています。
なお、オーストリッチ以外にも、ディスクロード用エンド金具を出しているメーカーはありますよ」。
なるほど。ちなみに、このオーストリッチ製のディスクロード用エンド金具のお値段は?
「こちらは2019年11月初旬の発売を予定していまして、2500円程度(税抜)を予定しています」。
お手頃な価格だ。まもなく発売ということで、発表を楽しみに待ちたい。
POINT② ブレーキローターの取り扱いに注意しよう!
続いて2つ目のポイントだ。ディスクロードの要となるブレーキローターだが、輪行袋に入れるときの注意点とは?
「大切なのは、ここを曲げてしまわないようにすること、そして汚さないようにすることです。
まず、曲げないようにすることは自分で気をつけることができるのですが、問題は汚さないようにすることです。輪行袋の中は、意外とチェーンの油などで汚れていることが多いです。おまけに、うっかり手でブレーキローターを触ってしまったりすることもあります。制動力に影響を及ぼす重要な部分ですから、安全のために注意が必要です。
対策としては、ブレーキローターにカバーをかけることをお勧めします。例えば、オーストリッチでは「フリーカバー大」(520円・税抜)という商品を出しています。スプロケット用のカバーなのですが、これですっぽりブレーキローターを覆うことができます」。
「スプロケット用カバーは各社から販売されていますが、気をつけてほしいのは、スプロケット用とブレーキローター用を混同して使わないようにすることです。スプロケットに使っていたものを間違って使ってしまうと、その汚れがついてしまいます。例えば、ペンで”ローター用”と書いておくなど、混同して使わないように注意しましょう」。
では、もう一方の曲げてしまわないようにするためのコツは?
「ブレーキローターはある程度頑丈にはできていますが、やはり気をつけていないと曲がってしまうこともあります。
曲げないようにするコツは、持ち運ぶときに自分の体側にローターが来るようにし、”点ではなく面”で当たるようにすることです。どこか一点で当たると曲がりやすいですが、ブレーキローター全体で当たるようにすれば、圧力や衝撃が分散されて曲がりにくくなります。これは、意識して探るようにすると、割と感覚で分かりますよ」。
「それから、これはディスクロード輪行に限ったことではありませんが、リムブレーキのものを輪行するときと同様に、例えば人通りの多い通路や道路に置いたりせず、きちんと壁際に立てかけるようにするなど、倒さないようにより注意を払うことも大事ですね。もちろん、通行の妨げになってはいけませんし」。
ちなみに、ブレーキローターの曲がりを防ぐアイテムはないのだろうか?
「実は、オーストリッチではディスクローターを保護する製品を開発中です。下の写真のように中心部に取り付けて、そもそもブレーキローターが当たらないようにする仕組みです」。
価格は未定とのこと。発売開始の発表を待ちたい。
POINT③ ホイールを外した状態でのブレーキキャリパーの取り扱い
最後のポイントだ。ホイールを外した状態でブレーキを引いてしまうとどうなるのか?
「ディスクブレーキは、ホイールを外してブレーキローターがブレーキキャリパーにはまっていない状態でブレーキレバーを引ききってしまうと、ブレーキキャリパーのピストンが飛び出して戻らなくなってしまうのです。マイナスドライバーなどでこじ開ければ戻せるのですが、出先だと持っていないこともあり、厄介です」。
「そこで、ホイールを外しているときは、パッドスペーサーという専用の工具を挿入する必要があります。だいたい、ディスクロードを買うと純正品等が2つ付属してくること多いです。これを入れておくことで、ブレーキローターがなくても、ブレーキを引ききってしまうことを防げます」。
「もちろん、初期で付属する純正品でもいいのですが、輪行しやすいタイプのものを使うことをお勧めします。割となくしてしまいやすい部品でもあるので、後から買い足す際にも、輪行向けのものを選ぶといいですね。
ちなみにオーストリッチでは、ダミーローターという製品を出しています。真ん中に切り込みがついており、これをちょっと曲げてから挿入することで外れづらいようになっています。またゴムもついていて、より外れ防止に効果があります。2mm厚で柔らかい素材を使っているので、どんなキャリパーにも使えます。2個セットで500円(税抜)で、もしなくしてもまた購入しやすい価格ですよ」。
これは便利だ。ほど良いサイズ感で、紛失もしにくいと感じた。とにかく、輪行でホイールを外すときは、まずパッドスペーサーを挿入し、ブレーキレバーを挿入前に引ききらないことが肝心だ。
ぶっつけ本番でやるのではなく、まずは自宅で練習を
以上、ディスクロード輪行のコツについて教えてもらった。「よし、これならすぐ輪行できるぞ」と思いがちだが……伊美さんは最後にもう1つアドバイスをくれた。
「いきなり本番に挑むのではなくて、まずは自宅で一度練習してみてほしいですね。駅前で四苦八苦している人はよく見かけますからね」。
はやる気持ちを抑えて、まずは本番前に練習をすることが肝心だ。
さて、次回の記事では、伊美さんがディスクロードを輪行袋に詰めるまでの一連の流れを動画で紹介する。こちらもぜひ参考にしてみてほしい。