新型オルベア・オルカ クライミングバイクへの原点回帰

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スペインのバイクブランド・オルベアのレーシングロード・オルカは、誕生20周年を迎えた2023年、第7世代へとフルモデルチェンジを果たした。軽さと剛性、快適性を重視したクライミングバイクというキャラクターを突き詰めているのが特徴だ。

オルカオルベアorbea

新型オルカはクライミングバイクに特化。53サイズで6.7kg

2003年に初代モデルが誕生し、オルベアで長らくレーシングロードの座を担ってきた新型オルカ。オルベアが本拠を置くスペイン・バスク地方を拠点としたエウスカルテル・エウスカディとともに2010年代前半までワールドツアーを戦い、その性能を磨き上げてきた。そのオルカ誕生20周年に当たる2023年、第7世代にあたる新型オルカが発表された。

オルベアオルカ歴代モデル

歴代のオルカ

オルベアによると、第7世代のオルカは軽さ、駆動伝達性能を重視した究極のクライミングバイクを目指しているという。最上位モデルの完成車重量は53サイズで6.7kgと、ディスクブレーキ仕様のロードバイクとしてはかなり軽量だ。

もちろん軽さを追求しただけではない。新型オルカの開発にあたっては、軽さよりもまず目標の剛性を設定することから始め、その後、剛性を損なうことなく、可能な限り軽くするプロセスを踏んでいるという。

剛性の目標値達成に関しては、トップレベルのクライマーの脚力に絶えうる剛性やパワー伝達性能を追求するために「低速効率テスト」という試験を徹底して行ったという。このテストでは急な上りを一定の速度を維持するために必要なパワーを測るが、ここで重要になるのがライダーの踏力を推進力に変換するパワー伝達性能だという。ヘッドチューブとダウンチューブ、チェーンステーがねじれに抵抗しながら後輪にパワーを伝達するのに理想的な剛性バランスを整えていった。このテストを繰り返し、トップレベルのクライマーの脚力に絶える剛性を備え、敏捷性と反応性の高いフレームを作り上げた。

さらに軽さの追求のため、フレームやフォークのデザイン、素材、レイアップ、塗装にもメスを入れた。フレームやフォークの鋭利なエッジを取り除くことで、余分なエポキシが集まる場所を減らし、さらにカーボンシートのピースも減らした。これによってカーボンをフレームやフォークの形に成形する際の無駄な重複が減り、軽量化につながっているという。また、すべてのサイズで同じ乗り味を実現するために、フレームサイズごとにカーボンレイアップを変更しているそうだ。

塗装も軽量化の重要な要素と考え、塗装による重量増を15g前後に抑えるように厳しい品質管理を行っているという。

 

オルカのリヤエンド付近

フレームはエッジの少ない形にすることで、カーボンシートの点数や素材の使用量を減らし、積層の重複を最小限に抑えて軽量化を実現している

オルカのフロントフォーク

7代目オルカは剛性と軽さを強く意識したクライミングバイクだが、フロントフォークは空気抵抗を減らすことを意識して作ったという

オルカのタイヤクリアランス

タイヤクリアランスは最大32mm幅に対応。太いタイヤを組み合わせることで快適性を高めることも視野に入れている

 

完成車にアッセンブルされるパーツもオリジナルに

7代目オルカは当初は完成車のみの販売で、オルベアのカスタムシステムMyO(マイオー)対応モデルも展開される。完成車に組み込まれるステムやハンドルバー、シートポストなどのパーツは「OC」というオリジナルブランドの製品、ホイールも「オクオ」というオリジナルブランドのものが採用され、フレームとトータルで性能アップが図られている。

コックピットまわりは、190gという軽さを誇るHP11カーボンハンドルと軽量なRP10ステムを組み合わせることで、軽量化を実現。ハンドル下部からケーブル下部を通ってフレームに内装することができるので、空力性能アップにも貢献する。もちろん、プロ選手の使用にも耐える剛性も確保しており、ハンドルの送り・しゃくりといった細かい調整にも対応する。ステムやハンドルは専用品ではなく、ヴィジョン・メトロン5Dやデダ・アラネラなどの他社製品に交換することも可能だ。

 

オルカのハンドルバー

ルバーHP11は重量わずか190gと軽量。7代目オルカのクライミングバイクとしてのキャラクターを引き立てる

 

「バイクの開発時にパワー伝達性能や剛性、軽さを優先したが、エアロを無視したわけではない。OCのコンポーネントでも市販のステムでもケーブル内装に対応したし、シートクランプも空力に配慮して内装のシームレスなデザインにし、クランプボルトもシートポストの後ろ側に来るようにしている」と開発担当者。

オクオのホイールは35mm、45mm、57mmの3つのハイトが用意される。最軽量のRP35-LTDホイールセットは、内幅21mmのチューブレスレディモデルながらペア重量1380gと軽量だ。

フレームだけでなく、アッセンブルされるパーツやホイールも含め、バイク全体として高性能を追求していることも今までのオルベアのバイクから進化したポイントと言えそうだ。カラーがカスタムできるMyOを利用すれば、フレームの色はもちろん、このオルカからホイールのカラーオーダーまで可能になった。アップチャージがないというのもユーザーにとっては嬉しいポイント。自分だけの1台を作り上げるプロセスを楽しむことができる。

 

オルカのコックピットまわり正面

オリジナルブランドのOC製のハンドルバーやステムを使うことで、コックピットまわりのケーブルをほぼ内装することができる。サードパーティー製のハンドルやステムを使うこともできる。コンポーネントは電動と機械式の両方に対応する

OCステム

OCのRP10ステム。ステム下側にケーブルを通すルートがあり、ここからヘッドチューブを経てフレームにケーブルを内装する

オルカのハンドルまわりのエアロ

OCのコックピットまわりのパーツは、ケーブル内装を実現し、空力性能アップにも寄与する

オルカのシートクランプとアクアホイール

オクオのホイール。リムハイトは35mm、45mm、57mmの3種類がそろう

オルベアオルカのシートクランプ

オリジナルブランドOCのカーボンシートポストを採用。シートクランプはフレームに内装され、クランプボルトがシートチューブ後ろ側に内装されている。ここもエアロを意識したという

 

今あえてクライミングバイクを出す意味は「勝利のため」

クライミングバイクの新型オルカが登場したことで、オルベアはエアロロードのオルカエアロとのツートップ態勢で臨むことを意味する。この手法はかつて多くのブランドが採用していた商品ラインナップだ。最近では他社が軽量レーシングロードにエアロの要素を加えたオールラウンダーを開発しているというのに、なぜ今あえてクライミングバイクを発表したのだろうか? オルベアの開発担当者は次のように回答した。

2023年のジロ・デ・イタリア第20ステージの山岳個人TTは、前半がフラットで後半が急峻な上りというコースで行われました。優勝したのはフラットな区間はTTバイクで、上りが始まる前にクライミングバイクに乗り換えた選手でした。このことは、空力性能と登坂性能を高い次元で両立するのは難しいという示唆だったと考えます。最高の空力性能を誇るバイクは最高の軽さを実現できず、最も軽いバイクが最高に空力性能に優れることも決してない。エアロと軽さを両方追い求めると、結果的にいずれも最高ではなくなるのです」

勝つためにはオールラウンドロードですべてのステージを乗り切るのではなく、ステージによってバイクを使い分けた方がよい。オルベアには空力性能に優れたオルカエアロがあり、登坂性能を磨き上げたクライミングバイク・新型オルカが必要だった、ということだ。

クライミングバイクというジャンルは、ヒルクライムが盛んな日本では一定の支持が期待できる。新型オルカはその火付け役となるか——。

オルカの初戦は7月23日から開幕するツール・ド・フランス・ファム・アヴェック・ズイフト(女子版ツール)。このレースに出場するセラティジット・WNTプロサイクリングチームが使用する。また、7月29日に開催されるUCIワールドツアー「クラシカ・サンセバスティアン」では、エウスカディチームが使用を開始するので、その走りに注目だ。

 

ジオメトリ

オルカのジオメトリ図

オルカのジオメトリ表

オルベア・オルカのジオメトリ

ラインナップ

オルカにはOMXとOMRという2つのグレードが存在する。今回のフルモデルチェンジにより、OMXとOMRは同じフレーム形状で、カーボンの積層を変更して差を出している。OMXはもちろん、OMRも前モデルと比較して軽量化されており、上位モデルの特性を生かし、コストパフォーマンスに優れたモデルとなる。また、オルベアは「それぞれの価格帯において、ライバルよりも軽い」とも説明している。

オルベアオルカラインナップ

オルカOMX M10i LTD PWR (シマノ・デュラエースDi2完成車)価格:168万9600円
オルカOMX M20i LTD (シマノ・アルテグラDi2完成車)価格:107万5800円
オルカOMX M30i LTD (シマノ・105Di2完成車)価格:89万1000円

オルカOMR M35i (シマノ・105 Di2完成車)価格:67万5400円
オルカOMR M30i (シマノ・105 Di2完成車)価格:50万6000円