UCI世界選2023 男子ロードレースはオランダのファンデルプールが初優勝!
英国北部のグラスゴー・スコットランドで初開催中のUCI自転車世界選手権は、8月6日に男子エリートのロードレースを競い、オランダのマテュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)が最後の22kmを独走し、28歳で初優勝を果たした。
オランダ出身の男子選手がロードの世界選を制したのは、1985年のヨープ・ズートメルク以来、実に38年ぶりだった。2位はベルギーのウァウト・ヴァンアールト(ユンボ・ヴィスマ)、3位はスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)だった。
初開催のスーパー世界選
UCI自転車世界選手権は、ロード、トラック、MTB、BMXなど、自転車競技の異なった13競技の世界選手権を、2週間にわたって一カ所で同時開催する4年に1度のイベントで、今年英国北部スコットランドのグラスゴーで初開催された。欧州メディアではUCIが手掛けるこの新イベントをスーパー世界選と呼んでいる。
通常男子エリートのロードレースは、UCIロード世界選手権大会の最終日に行われるが、UCI自転車世界選手権では、ロード日程2日目の8月6日に行われた。男子エリートはスコットランドの首都エディンバラからスタートし、クロウ・ロードの丘を越えてグラスゴーに入り、市街地に設けられた1周14.3kmのサーキットを10周する全長271.1kmのコースが舞台となり、58カ国の194選手が出走。日本は新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が参加した。
エディンバラからグラスゴーへと移動する途中で、地元の抗議活動のメンバーがコース上に居座り、レースは50分間中断したが、短縮する事なく続行された。序盤から逃げ続けた9選手は、集団に4分差を付け、グラスゴー市街地のサーキットへと入った。
集団はデンマークがコントロールを続け、中盤に入ると次第に遅れる選手が出始めた。ゴールまで残り90kmでファンデルプールが最初の攻撃を仕掛けた後、イタリアはメイン集団に加わっていたマッテーオ・トレンティン(UAEチーム・エミレーツ)が上りのカーブで転倒し、戦線離脱した。
ゴールまで残り73.5kmでファンデルプールが再びアタックし、ヴァンアールト、ポガチャル、デンマークのマス・ピーダスン(リドル・トレック)、イタリアのアルベルト・ベッティオール(EFエデュケーション・イージーポスト)、オーストラリアのサイモン・クラーク(イスラエル・プルミエテック)と一緒に集団から抜け出し、先頭を逃げ続けていた米国のケヴィン・ヴェルマーク(チームDSM・フィルメニッヒ)に追いついた。
7人のグループは残り70kmで後続グループに追いつかれ、先頭は26人の集団になった。そこからポガチャルやディフェンディングチャンピオンのレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)が攻撃を続けた後、残り55.6kmでベッティオールが抜け出して先行した。
レースが終盤に入った頃、グラスゴーは雨が降り始めた。追走グループでは、ファンデルプールのすぐ後方を走っていたエクアドルのジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアズ)が、下りのカーブで転倒する事故が発生した。
ファンデルプールがアタック
残り3周回に突入し、追走集団からファンデルプール、ポガチャル、ヴァンアールト、ピーダスンが抜け出し、30秒先行していたベッティオールを追いかけた。そしてゴールまで残り22.3kmの急坂でアタックしたファンデルプールはそのままベッティオールを追い抜き、ライバルたちにわずかな差を付けて坂を上り切った。永遠のライバルであるヴァンアールトは、決定打となったファンデルプールのこのアタックに付いていく事ができなかった。
ファンデルプールはポガチャル、ヴァンアールト、ピーダスンの追走グループとのタイム差をじわじわと広げ、残り17kmでその差は30秒になった。彼は残り16.6kmの右コーナーで滑って転倒してしまったが、幸いシューズが壊れただけで怪我はなく、すぐバイクに乗って走り出す事ができた。
落車の影響はなく、ファンデルプールは結局後続に1分半以上の大差を付け、ジョージ・スクエアのフィニッシュラインに両手を上げてゴールし、オランダに38年ぶりのアルカンシエルをもたらした。彼は今年2月にシクロクロスの世界選で5度目のタイトルを獲得しており、同じ年にシクロクロスとロードレースの両方の世界チャンピオンになった最初の男子選手になった。
後方ではベルギーのヴァンアールトが抜け出し、2位に入ってファンデルプールの隣の座を確保。ピーダスンとポガチャルは3位争いのゴールスプリントを競い、ポガチャルが勝って初めて世界選の表彰台に上がった。
ファンデルプールは昨年オーストラリアのウロンゴンで開催されたロード世界選でも優勝候補の1人だったが、前夜に宿泊したホテルで若者たちから迷惑行為を受けた事件で地元警察に一時逮捕され、ほとんど眠れずに参加し、たった30kmでレースを棄権していた。彼は優勝インタビューではっきりと、これは昨年のリベンジだったと語っていた。
今シーズンはミラノ〜サンレモとパリ〜ルーベでも初優勝し、シクロクロスとロードの世界タイトルを手中に収めたファンデルプールは、8月12日に開催されるMTBの世界選にも参加する予定だ。ベルギーのヘットニュースブラッド紙によれば、彼はこの世界選で今年のロードシーズンを終了する予定だったが、ロードのアルカンシエル姿を披露する為に、追加のレースに参加するかもしれないそうだ。
■ロード世界選で初優勝したファンデルプールのコメント
「これはボクに残されていた最大の目標の1つだったから、今日勝てたのは素晴らしい。ボクの意見では、これでボクのキャリアはコンプリートされた。これは自分にとってロードで最大の勝利かもしれない。1年間アルカンシエルで走るなんて想像できないよ。
自分がアタックした場所が、この世界選で最もタフな地点だと知っていた。その後下りが続き、すぐに短い上りが始まった。ボクは強いと感じ、他の選手たちは苦しんでいるのに気が付いた。アタックの後で振り返り、他の選手たちが付いて来られないと気が付いた時、ボクは翼を手に入れた。
(落車した時)その瞬間は、自分のゲームが終わったと思った。いかなるリスクも犯さなかったが、とても滑りやすかったんだ。あのクラッシュがどのように起きたのか、まだ正確に分からない。本当に自分自身に腹が立ったが、しなければならなかったのは、ただ自転車に乗り続ける事だった。もしあのクラッシュで世界タイトルを失っていたら、数日間は眠れなかっただろう」
UCIサイクリング世界選手権2023 ロードレース・男子エリート結果
[8月6日/エディンバラ〜グラスゴー・サーキット/271.1km]
1. van der POEL Mathieu (NED) 6:07:27
2. van AERT Wout (BEL) +1:37
3. POGAČAR Tadej (SLO) +1:45
4. PEDERSEN Mads (DEN) +1:45
5. KUNG Stefan (SUI) +3:48
6. STUYVEN Jasper (BEL) +3:48
7. DINHAM Matthew (AUS) +3:48
8. SKUJINS Toms (LAT) +3:48
9. BENOOT Tiesj (BEL) +3:48
10. BETTIOL Alberto (ITA) +4:03
DNF ARASHIRO Yukiya (JPN)