中野慎詞が初参加の世界選で男子ケイリン・銅メダル
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パリ2024オリンピック種目である男子ケイリンで、中野慎詞が銅メダルを獲得した。中野にとっては初出場の世界選手権でのメダル獲得となった。
ケイリンは、6選手が6周の距離で先着を競う。3周までは先導車の後ろを走り、先導が外れた残り3周が本格的な勝負となる。準々決勝から決勝までの中野の走りを振り返る。
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準々決勝*先導が外れた後、最後尾に下がり機会を伺う。最終周回に加速して先行選手たちを抜き去り2位通過。
準決勝*積極的な攻めの走り。残り2周で一気に先頭に出て加速。ラスト1周の途中までを先行で粘り続け、コーナー最中に1選手に先行されるが力強く走り続け2位通過。
決勝*先導が外れたのち最後尾まで下がることに。最終周回まではその位置、第2コーナーから第3コーナーまでをかけて先行する選手たちを抜き去り、最終ストレートで2位選手に迫るもわずかに届かず3位に。
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――決勝では後方からの追い上げに
「もう少し積極的に行ければ、また違う色のメダルだったのかなとは思いますし、そこが自分のミスでもあったと思います。
残り1周の時点で、脚はすごく貯まっていたので、最後まですっかり出し切ろうと思って走った結果でした。そこはしっかり素直に喜びたいです」
――後方からの追い上げは作戦?
「それはないですね。得意なのは先行で逃げ、そういうふうに自分でも言っていたんですが、そうもなかなか行かないのがこの世界の戦いです」
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――初参戦の世界選手権、ネーションズカップとはまた違ったものが?
「選手の仕上がりも違いますし、やっぱりアルカンシエルがかかっているというのがありますので、気合も違っていたかと思います。
これからもまたネーションズカップもありますし、オリンピックもあると思うので。そこではしっかり優勝できるように力をつけ、もっともっと走りに磨きをかけていきたいです」
内野艶和が女子ポイントレース、最終周回の大逆転で銅メダル
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女子ポイントレースで、内野艶和が3位銅メダルを獲得した。最終周回を1着フィニッシュしてダブルポイントを獲得、このポイントで最後に順位を上げての表彰台だった。
総距離25km=100周回のポイントレース。10周に1度にポイント周回で先着4位までが最高5ポイントを獲得し、その合計ポイントを競う。ラップ(周回追抜き)を成功させると20ポイント得られる。
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高いレーススピードの序盤、自身の居場所を見極めるのに時間を要した内野。それでも第1、第2のポイント周回で4位ポイントを獲得。
「強い選手が取りにいかない早めの時点でポイントを取らないと、後半に脚がなくなるのはわかっていました。最初の方でポイントを取って、そのあとは脚をためながら行ける時に行こうと思っていました」
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巧みなレース運びで展開していく内野。レースの流れを読み、抜けられるラインを見つけて、そのタイミングを逃さない感覚で周回を重ねる。
レースが中盤に入り、ラップ(周回追抜き)を狙う選手たちが動き出しペースが上がる。しかし内野は、後方に落ちず先頭で脚を使わず周回をこなしていく。あとで聞くと、それには理由があった。
「ラップ(周回追い抜き)合戦が始まると、ごちゃごちゃになっていくと思いました。その時にいかに冷静に立ち回る事ができるかっていうのが大事だと思い、落ち着いて全体を見るのを意識して走っていました」
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その走りで3位ポイントを獲得した内野は、いよいよ終盤に向けての作戦を練っていく。フィニッシュともなる最終周回でのポイントは倍の点数となる。通常5点の1位ポイントが10点になるので、これを獲得するのが最終成績に大きく影響する。
「走りの中で、『これは最後に行くしかない』と思いました。周りでも逃げができなかったので意識して脚を貯めて。少しでも順位が上がればいいって思って、最後にもがきました」
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最終段階での内野の走りは目覚ましく、ラスト2周から先行して走りきり、最終周回で1着10ポイントを獲得。そこまでは10位以下だった内野はそのポイントで一気に3位に。周りの驚きはもちろん、本人も突如獲得できた表彰台に、驚きを隠せなかったようだった。
「フィニッシュした後、掲示板を見て驚きました。 本気で『えっ!』って感じで、同時に『やった!』と感じましたね」
︎選手と共にトラックを回る声援の地響き
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トラックレースのスケジュールは、午前の部と午後の部に分かれていた。午前の部が10時前後〜14時30分、午後の部が17時〜21時過ぎのレース終了まで。その多くが午前は予選、午後が決勝という配分になっており、共に観客席は満席。選手が走ると、それが特に自国イギリスの選手であると、それはもう大きな声援が起こった。
トラック世界選の会場となったのは、ロンドン2012オリンピックのレガシー施設である、『サー・クリス・ホイ・ベロドローム』。さらに、そのレガシーイベントとも言えるこのスーパー世界選に来た観客たちは、チーム単位ではなく国単位で応援する。もちろん選手も国を背負って走る。しかも英国は今、特にトラックでは強豪国であり、英国選手たちはいい走りをよく見せる。
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その時観客が選手に送る声援は、ゴオオオオという地響きのように空気を揺るがすバイブレーションとなる。しかもその地響きが、トラックを周回する選手と共に、観客席をうねらすように回っていく。
この地響きは、自国選手にだけではない。見る人を熱くする走りに惜しみない地響きが響く。ベロドロームという室内空間では、その地響きが選手観客問わずに体に響き、心は無性に熱くなる。選手たちのペダルを踏む力も強くなる。
この地響きは、写真やテレビ、ネットなどでは感じられないものだ。しかし一度でもこの地響きを何かの形でも感じたものは、再び、このバイブレーションの中に身を置きたいと感じるだろう。そのために競技を続ける選手もいるだろうし、スタッフとして観客として、この場に脚を運ぶことになるはずだ。
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この地響きが存在すること、そしてそのバイブレーションが人の心を熱くすること。これが実はこの記事タイトルである『ぜひ伝えたいこと』の一番の内容なのだ。いつか日本でもこの地響きが起こり、あなたも味わえる日が来ることを、心から願う。
世界選ならではのアルカンシエルお土産
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世界選手権に参戦する選手たちが狙うのは、虹色のアルカンシエル・ジャージである。これは世界選手権以外では手に入れられない。
そしてそこに観戦に来た我々も、ここでしか手に入れられないものを持ち帰りたい。もちろんUCIお墨付きの、公式なアルカンシエル・デザインの何かである。
もちろんUCIも、そんな我々の気持ちを汲んでいくれている。ベロドロームでは、公式にアルカンシエル・グッズを販売できる《SANTINI》製の、こんなものたちが販売されていた。
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価格は写真の通り、通貨はイギリスポンド。あなたが欲しくなるのは何だろう。アルカンシエルデザインの折りたたみ傘まであった。買わなかったけど。
なお、SANTINIによるアルカンシエル・シリーズは日本でも扱いがあるようだが、これら傘やマグカップなどのグッズが手に入るかどうかは、現地で筆者には確認できなかった。気になった方は、日本でのSANTINI代理店のサイト Santini | ブランド | 株式会社ポディウム (podium.co.jp) に問い合わせてみて欲しい。
2023UCI自転車世界選手権大会
開催期間:2023年8月3日〜13日
開催地:イギリス・グラスゴー
https://www.cyclingworldchamps.com/