今年初開催! マイナビ ツール・ド・九州2023コース徹底解説
目次
今年の10月6日(金)~9日(月・祝)の4日間で初開催されるマイナビ ツール・ド・九州2023。福岡県、熊本県、大分県の九州3県が舞台となる。そのコースの全貌はいったいどのようなものなのか。
「ツール・ド・九州」の第1回大会が今年の10月6日~9日の4日間の日程で開催される。ツール・ド・九州は、ラグビーW杯のレガシー継承や九州のサイクルツーリズムの推進、そして近年九州を襲った自然災害からの復興を象徴するイベントとして開催が決定された。
また、このレースはUCIアジアツアー2.1カテゴリーに設定され、シーズン終盤に国内でUCIポイントを獲得する貴重な機会となるはずだ。
今回の記事では、福岡県在住で自転車と地域の魅力を発信するインフルエンサーBekiさんをモデルに、コースの詳細について紹介するとともに、VC FUKUOKAの佐藤信哉監督にレースの勝負所と、どんなタイプの選手が活躍しそうかを聞いた。
第0ステージ:小倉城クリテリウム
ロードレースステージの前哨戦となる第0ステージは、福岡県北九州市での小倉城クリテリウム。小倉駅から徒歩15分ほどの場所にある小倉城を囲む1周1.79kmの平坦路を25周走る。総距離約45kmのコースで、疲れのないフレッシュな状態のスプリンターたちがしのぎを削る姿が早速見られるはず。また、ここでどのチームのスプリントトレインが最も機能するかも見ものだ。
第1ステージ:福岡ステージ
第1ステージからは、本格的なロードレースがスタート。福岡ステージは、北九州市から大牟田市までの約144kmのコースだ。
ステージレースは、全てのステージでの合計タイムで争われる総合優勝だけでなく、コース中に設定されたスプリントポイントやフィニッシュ地点で得られるポイントの合計で争われるポイント(スプリント)賞と、コース中に設定された山岳(King Of Mountain:KOM)ポイントの合計で争われる山岳賞にも注目だ。このステージから、スプリントポイントや山岳ポイントが設定される。
佐藤監督はこのステージで活躍するタイプの選手について、「やはりクライマー。3つの山岳ポイントはそれぞれ特徴がある登坂で、クライマー同士の戦いが見もの」と話す。
今大会で唯一の完全なラインレース(周回コースではなくスタート地点からフィニッシュ地点まで一方向に移動するコース)となる福岡ステージは、小倉駅から2kmほどの場所に位置する北九州メディアドームをスタートし、北九州モノレールが通る主要道路を通過したら、山の上方が大きく削られた香春岳(かわらだけ)方面へと進む。
リアルスタート地点から17.93km地点でまず最初に現れるのが香春町立香春思永館横での1回目のスプリントポイント。レースがスタートしてそこまで間もないために、ここまでに逃げが形成されていなければ、集団で通過することとなるはずだ。
その後、英彦山(ひこさん)方面へと向かう彦山川沿いに走っていく。途中に通過するJR日田彦山線BRT(ひこぼしライン)の歓遊舎ひこさん駅は、道の駅も兼ねており、地元の農産物や飲食店が並ぶ。観客は選手の通過後に、ここで地の物に舌鼓を打つのも楽しいだろう。
彦山駅へとつながる通りから国道500号を西へ進むと、最初の山岳ポイントに向かう上り区間へと突入する。舗装はきれいで、上りの勾配はそこまで厳しくはない。山岳ポイントは、43.9km地点の小石原地区へつながる箇所に設定される。
樹齢200年~600年といわれる杉の巨木群が約4.68ヘクタールにわたって広がる行者杉の近くを通過しつつ、小石原焼が生まれた場所である皿山地区を通り過ぎたら、集団は小石原川ダムへと向かう。ダムからのスピードが出るであろうダウンヒルをこなしつつ下り切ると、今度は久留米市へ向かう。
前方に耳納(みのう)連山を望みながら筑後川に架かる両筑橋を渡って久留米市内に入ったら、幅の広い国道210号で2回目のスプリントポイント。それが終わるとうきは市に入り、5km未満の短い上りを一気に駆け上がる2回目の山岳ポイントへと続く。
佐藤監督はこの、「2回目のスプリントポイント後、うきは市内を耳納連山へ向かう登坂路」を勝負所に挙げる。さらに、「1回目の小石原への登坂でも集団は淘汰されるだろうが、その後の下りは緩やかで平坦区間も距離があり、スプリントポイントも設定されているため、集団が少し勢いを取り戻すことが予想される。その後、レース半ば過ぎたところで現れるのがこの耳納連山の登坂。ステージ優勝を意識したクライマーはこの勾配の厳しい区間で勝負をかけるはず。強者が単独で抜け出すか、5名以内の少数での軽量級選手たちの集団抜け出しが見たいところ」と語る。
上りを終えると、なだらかな下り区間が続き、2.6kmの長い合瀬耳納(おうぜみのう)トンネルを抜け、石積みの棚田と茶畑が広がる八女市星野村へと辿りつく。
およそ30kmを下り切ったら筑後市へと入り、この日3つ目のスプリントポイントへ。両脇を田んぼに挟まれた道をスプリントで駆け抜けたら、フィニッシュまではあと20kmを切る。
だが、最後に待ち構える140km地点を越えたところから始まる峠を侮ることはできない。南筑後広域農道を走るこの上りは、何か所にもわたるカーブに加え、勾配も厳しい箇所がある。この上りで抜け出したら、下り終えてからフィニッシュまでの平坦路も3km未満と短いため、逃げ切りも決まるステージとなり得るかもしれない。
下り切ったら右に曲がって南関大牟田北線に入ると、フィニッシュまではほぼ直線。フィニッシュ地点に設定された九州新幹線の新大牟田駅に誰が一番最初にたどり着くだろうか。コース的には、佐藤監督の言うように序盤からの逃げというよりも終盤にできた小集団が逃げ切るようなイメージが強い。第1ステージで逃げ切りとなると、タイム差次第ではその後の総合優勝の行方を占う結果となるかもしれない。
第2ステージ:熊本阿蘇ステージ
第2ステージの阿蘇熊本ステージは、南小国から南阿蘇までの約108km。ロードレースとしては短い距離ではあるものの、阿蘇の雄大な景色に圧倒されるコースだ。
休日にバイカーなどが多く集まる熊本県阿蘇郡南小国にある瀬の本レストハウスをスタートし、植物で象られた動物たちが数をなす何とも不思議な光景が広がる千羽鶴鹿公園や、阿蘇山の壮大な景色を望めるやまなみハイウェイの下り区間を過ぎたら、気持ちの良いアップダウン区間が続く。
標高900mのところから標高500mまで一度下り切って、一の宮町の町中へと入る途中でこの日唯一のスプリントポイントを通過。その後、町中を通過しつつ、箱石峠へと上り始める。箱石峠は九十九折が続き、振り返れば上ってきた道や山頂部がのこぎりの歯のように尖っている根子岳を望む絶景が見られる。サイクリングであれば、ぜひとも振り返りながら景色を堪能すべきコースだ。スプリントポイントを過ぎてからの距離およそ12km、350mを上った箱石峠の山頂が1回目の山岳ポイントとなる。
その後南下しつつ下り、周回コースへと入る。佐藤監督は勝負所となるであろう場所について、「間違いなくレース半ばから突入する周回区間」と断言。
約11kmの周回コースを5周回する。佐藤監督は、「ここまではオールラウンダーもクリアしてくる可能性があるが、その後はやはりクライマー同士の死闘が繰り広げられることが予想される」と目論む。
フィニッシュ地点に設定されている道の駅あそ望の郷くぎのを過ぎてから山岳ポイントまでのおよそ4.5kmの上り区間は、道幅も1車線ほどで非常に険しい勾配が続く。ここは5周回全てで山岳ポイントが設定されており、山岳賞の行方もここで大きく左右されるはずだ。山岳ポイントを超えると、グリーンロード南阿蘇(ケニーロード)に入って下り区間へと入る。
しかし、7月上旬の線状降水帯の影響によりこのグリーンロード南阿蘇の道路全体が非常に激しく崩れており、8月現在では通行止めの状態だが、レース当日までに復旧する見込み。この周回コースはかなりの難所となるはずだ。
第3ステージ:大分ステージ
最終日は、大分県日田市内のオートポリスから同じく日田市内の大原八幡宮横までの約129kmで行われる。多くのアップダウンがありつつも概ね下り基調で、スプリンターのためのステージとなるはずだ。「最終の大分ステージは下り基調のラインレースという、日本では珍しいコース設定。ただし、有力なスプリンターであっても、福岡、熊本で山岳を耐えきれず(特に熊本ステージ後半の山岳区間が周回コースとなるため、タイムアウトの関門設定によって)、生き残れていない可能性もある。このステージでは、スプリント力があり、かつオールラウンドに対応できる選手にチャンスがあるのでは」と佐藤監督は予想する。
このステージ中で、最も標高の高い800mの地点からオートポリスサーキットをスタートする。サーキット内で1回目のスプリントポイントを通過後、サーキットを出て天瀬阿蘇線(県道12号)を北へと進む。前半は少しアップダウンがある程度でほぼ下り基調が続く。
下る途中の24.13km地点に一つ目のKOMポイントがあるが、上りの区間も長くなく、勾配も厳しくはない。
KOMポイントから北上し、その後もアップダウンが続く。蜂の巣湖、梅林梅沿いを走ったら、約40km地点から2~3kmほど上ったら最後の山岳ポイントとなる。こちらも厳しい上りというイメージはない。
さらに北上し、日田駅周辺の1周約11.5kmの周回コースに入ったら5周する。佐藤監督は、この「日田の市街地に入ってからの周回区間」が勝負所と言う。
「ただ、レース序盤のオートポリスサーキット内も登坂があるため油断はできない。多少の差が生まれる展開も予想され、それを日田市街地へ向かう長い下り区間で、しっかりと差を詰めていけるチーム同士の集団コントロールが見所になるはず」と続けた。
周回コース中もアップダウンが続く。フィニッシュ地点と同じ大原八幡宮横の2周目、4周目に設定されたスプリントポイントを通過した後、5周目がフィニッシュとなる。
スプリントトレインを機能させ、最終日に笑うのはどのチームとなるか。また、第1回マイナビ ツール・ド・九州2023の覇者は果たして誰になるだろうか。
佐藤監督はコース全体について、「福岡ステージと熊本ステージは山岳ステージと呼べるものとなり、熊本ステージで総合の行方はおおむね絞られそう。最終日は純粋にステージ狙いのチーム同士の戦いが楽しみ」と話した。